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第81話

 さて、レイン様からの修練を朝から晩まで受けて……そして約束の日が来たのです……宿にはルクティアさんから迎えの馬車が来ました……私とレイン様は馬車に乗り込むと、早速、私達は聖騎士隊の詰所に移動しました。


「どうぞ」


「あ、ありがとうございます」


 馬車の御者さんによって扉を開けられ、私とレイン様を馬車から降ります……詰所の奥へ通されると、そこには円形のリングがありました……


「ここが……」


「えぇ、聖騎士隊の修練場ですわ」


「る、ルクティア様……」


「ふふ、よかった、もしかしたら逃げるんじゃないかと心配していたんですよ?」


「そ、そんなことしませんっ!」


「えぇ、こうして来てくれて嬉しい限りです」


「よ、余裕そうですね……」


「ふふふ、自信があるのは当然ですわ」


「わ、私だって頑張ったんですっ!負けませんっ!」


「ルクティア、それ以上アンナを挑発しないでくれ」


「ふふ、そうですわね……さて、レイン様はあちらで御覧になっていてください……もちろんですが、手出しは無用ですよ?」


「わかっている、ただ、命に関わりそうならすぐに介入するからな」


「わかりました」


「アンナ、落ち着いてしっかりやれば大丈夫だ」


「は、はいっ!」


 私はレイン様と別れて、円形のリングの上にあがります……なんでリングなんでしょう?こういう修練場のイメージって普通に下は土なイメージなんですが……?


「ふふ、驚きました?」


「え?」


「私とあなたの決闘です……変に汚れても嫌でしょ?だから専用のリングを用意させたんですよ」


「な、なるほど……」


 土の上で戦いたくないと言う理由だけでリングを用意するなんて……なんてわがままな……


「さて、審判は彼女に任せますわ」


「失礼いたします、私は聖王様直属の聖騎士隊のモノです……この戦いは正式なものとして、聖王様の名の元に行われます……互いに不正のなきよう、その武勇を示してください」


「えっと……」


「安心してください、彼女も言ったとおり彼女は聖王様の直属の騎士、真面目な人物ですので不正を行うことはありません。しっかりとどちらが勝ったが勝敗を決めてくださいますわ」


「わかりました……」


「では、両者離れて」


 指示に従い、それぞれ距離を取ります……大丈夫、がんばったもん……勝てるはず……


「では……はじめっ!」


 審判の声をともに私は魔法を発動だせます……まずは付与魔法……これが私にとって重要……


「《|身体強化《ブースト》》 《|体力増加《スタミナアップ》》 《|速度増加《ヘイスト》》」


 私がやるのはなるべく短期決着……魔力だけなら全然問題ない、今の3重がさねをしても魔力は問題ないけど、私の身体がついていかない……結局は2日間の修練による付け焼刃……だから、私が制御をできる間に決着をつけるっ!


「《|水球《ウォーターボール》》、放て」


 ルルティアさんが放ってくる魔法……水の塊を私は付与魔法で無理やり身体を動かして避けます……どうにか近づいて一撃、どうにか近づいて一撃……


「っ!速い……ですがっ、《|風刃《エアスラッシュ》》」


「きゃっ!」


 ルルティアさんの放った不可視の刃に身体を薄く切られる……とんでもなく痛いです……泣きそう……


「くぅぅ……《障壁:魔法》」


 近づけ無くなっちゃうけど、障壁で相手の攻撃を防ぎます……


「驚きました……なるほど、固いですね……」


「ふぅー……えっと、近づけない場合は……プランB」


 まぁ、プランBとか言ったって私にある作戦は2つだけ、プランAは相手が魔法使いなのを利用して近距離で付与魔法の力を借りて攻撃してダウンさせる……ただの、力任せの方法です……


 プランBは近づけなかった場合の方法……障壁に困ってタイミングを待つ……


「なるほど……この程度の魔法ではびくともしませんか……あなたへの評価を上方修正するしかないですね……」


「そ、それはありがとうございます……」


「でも、そこに籠っていたら動けないですよね?」


「それは、そうですが……」


 ルルティアさんは、さっきまでと違って長い詠唱を始めます……これはかなりの威力の魔法が来るのは間違いがありません……でも、でも、これがチャンス……ここで決めるしかありませんっ


「参ります……《|水流放射《ウォーターレーザー》》」


 凝縮された、水による砲撃……前世にあったウォーターカッターの強化版みたいなやつ……あんなの当たったら真っ二つになって死んじゃいます……


「くぅうう……障壁が歪む……」


 ビキビキ……音をたてて障壁が砕ける……


「いまッ!《|反射《リフレクション》》」


 私の障壁を貫いた水の魔法は私の魔法にあたり、彼女へと弾きかえる……


「なっ!きゃぁああああああああ!!」


「やぁあああああああ!!!」


 爆音……それと共にリングの一部が砕けたのが見えます……まって、威力がやばいです……本気で殺す気できてますよ、あれっ!


「あっ、る、ルルティアさんはっ?」


「大丈夫だ」


「え?」


 声がした方向に視線を向けると、魔法を反射した着弾点と少し離れた位置にレイン様と彼に抱きかかえられたルルティアさんn姿ありました……ぐぬぬ……怪我がなくて良かったですけど、彼に抱かれてるのは悔しいっ!


「あっ、れ、レイン、様……///」


「審判、判定をっ!」


「は、はいっ!ルルティア・シュレーゼっ!戦闘続行不能と判断し、勝者、アンナっ!」


「勝った?勝ったぁ……」


 私は勝利したことに安心してその場に座り込んでしまいました……使っていた魔法も霧散してしまうのを感じます……上手くいってよかった……障壁のへの魔力供給を止めてわざと割らせる……障壁によって減速した魔法にタイミングを会わせて反射を使う……やったことは簡単なようなものだけど、失敗すると私が致命傷を受けるというぎりぎりのプランB……


「アンナ、おつかれ」


「レイン様……わ、私っ、勝ちましたっ!」


「あぁ、見事だった」


「はいっ///」


「アンネレーゼ様」


「ルルティア様……」


「お見事でした……あなたの勝ちですわ……約束通り、私は一旦身を引くことにしますわ」


「はい……ん?一旦?」


「えぇ、確かに結婚を取りやめますが……ふふ♪先ほど助けられたことで、私、本気になりました……だから、これからは正式にライバルですね♪」


「ちょっ!それおかしくないですかっ!?」


「あら?約束通り結婚は取りやめるのですからいいではないですか」


「むーむー!!!」


「何を唸ってんだ……」


「れ、レイン様っ!だってっ!」


「はぁ、とりあえず、話しはお前らだけでけりをつけろ……ただ、ルルティア……どちらにしろ結婚はまだするつもりはない、いいな?」


「えぇ、かまいませんわ……まぁ、最悪は側室でもかまいませんし」


「むーーー!!!」


 やっぱりこの人嫌いですっ!!!


 さて、その後はどうにか勝利して彼女とレイン様の結婚を取りやめにはできましたが……彼女は諦めるどころか、本気になるとかいう意味のわからなさ……私は納得できませんしっ!全力で彼を護るだけですっ!


「さて、こうして負けてしまいましたし、今日のところはこれで引き上げますわ」


「そうか」


「えぇ、ではアンネレーゼ様、レイン様……またお会いしましょう♪」


「ふー!」


「ふふふ♪」


 そうして彼女は去っていきました……勝ったはずなのに、彼を護ったはずなのにっ!なんか思ってたのと違うっ!!!


「俺らも帰るか」


「え?あっ、は、はいっ」


 それからは、聖騎士の人たちに挨拶をして私達も宿へ戻ることになりました……詰所を出ると、ここに来るのにつかった馬車が待っていてくれました……御者の人が声をかけてくれて、私達はせっかくなのでと、馬車を再び利用させてもらって、宿へと戻ったのでした……



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