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3章…第12話

玄関に入ると、リビングは真っ暗。

自動で感知して点灯するはずの廊下のライトもつかない。

…そういう設定に変えたのか…?


とりあえずモネが寝ているはずの部屋に近づくと、うっすらドアが開いていて、明かりがもれている…


枕元のライトがついてるのか。

モネが消し忘れたと思ったが…ふと向かいの部屋を見てハッとした。


聖也に貸している部屋…ドアが開いてる。

人の気配は…しない。


すごく嫌な予感がして、俺はモネがいる部屋を勢いよく開けた。


男が1人、ベッドで眠るモネの足元に腰掛け、身をかがめて寝顔をのぞき込んでいる。



「なにやってるんだお前…」


「…吉良さん…!」




…聖也だ。

恐れていたことが起きてしまった。

クソガキ…具合が悪いモネに何をした…?



「お前…ちょっと来い」


「…ヒィ…っ」


相当恐ろしい顔をしていたんだろう。首根っこをつかまれ、力任せにリビングまで引きずられながらも、聖也は文句を言わなかった。


いきなり引っ張られたことでバランスが取れなかったらしく、ちゃんと立たないから文字通り引きずってやった。


そのままソファにぶん投げ、逃さないよう目の前に立つ。


「お前、憂の撮影はどうした?」



「終わり…ました」


「終わった…?で、帰っていいって言われたのか?」


「そ、そうです…」


…そんなわけない。

聖也には憂の仕事を手伝わせ、重労働させた後、俺に直接引き渡すことになっている。

今朝憂とそう話したばかりだ。


あいつは女好きのチャランポランだが、約束は絶対に守る。


「嘘を言ってもすぐにバレるんだぞ?」


ポケットから携帯を取り出し、憂に繋いだ。

そのまま音声を開放して、聖也にも聞かせてやる。



「聖也の奴…撮影の途中でちょっと目を離した隙に、逃げ出しやがった…!」


案の定だ。


「聞いたか?憂も撮影が終わり次第、こっちに向かうってよ?」


「す、すいません!」


バレたとたん、正座して頭を下げ、呆気なく逃げたことを認める…。

…ったく、しょうがないガキだ。



「その謝罪は、憂が来てからの話だな。…ところで」


俺が次に何を言うかわかったんだろう。ソファの上で小さくなりながらも、俺に詰め寄られ、さらに身を縮こませる。


「す、すいません…すいませぇぇん…」


まだ何も言ってないのに謝るということは、それ相応のことをしたと認めたようなもんだが?…



「…なんでお前がモネの寝顔を見てんだ?」


「そ、それは…従兄弟として、心配でして…!」


「…あんなに顔を近づける必要はあったのか?」


「あ…ないです」


「じゃあなんで近づいた?」


聖也の胸ぐらをつかむと、怒る俺が

怖いのか、身を縮ませたままの細い聖也が持ち上がる。


「く…苦しい…ですっ」


「…足を伸ばせよ?!」





「…吉良…?」


突然、後ろからふんわりした声が聞こえて、俺は掴んでいた胸ぐらをパッと離した。



「…ヒィィ」


聖也は次に何をされるのかと身構えたが…お前に構ってる暇はもうない。


振り向くと、裸足のモネが毛布を引きずって見上げてきた。



「聖也の苦しそうな声が聞こえたから…」


「あぁっ!?なんでもないよ?…なぁ聖也?」


目を見開いて振り返れば、コクコクと首を縦に振る聖也。



「それより、熱を出したんだろ?」


俺は毛布ごとモネを横抱きにした。


「わぁっ…!ちょっと!歩けるからいいよ…」


「ダメ。足冷たいだろ?」


「なんか、スリッパどこかに置いてきちゃったみたいで…」


「…ン?」


見ると、聖也がモネのスリッパを履いている…?


抱き上げたモネをベッドにそっと下ろして、聖也の足に履かれているスリッパを奪い、ついでにパシっと一発殴ってやった。


「…やんっ!」


変な声を上げるな…と言う代わりに、ギロっと睨んでやる。





改めてモネの顔を見ると、やっぱり頬が紅くなっている。


「…なんか食べたのか?」


布団をかけ直してやって、枕元に座った。


「ううん。お水だけ飲んで生きてた」


しばらく測っていないというので、熱を測ろうと声をかけ、俺は自分の手を温めた。


「どしたの?寒い?」


「いや、体温計を挟むのに、手が冷たいと嫌だろ?」


「いいよ…!自分で測れるから…」


紅い顔で微笑むモネから体温計を奪い、俺がやる…と駄々をこねてみる。


「…もぅ…じゃ、お願いします」


少し脇の下を上げる仕草をしてみせるモネ。

俺は口角を上げて返事をしながら、着ている長袖Tシャツをまくりあげ、袖から腕を抜く。


脇の下より先に見えるのは当然ふっくらとした魅惑的な女性の象徴。


寒くないように毛布をかけ直し、しっかりガードしながら…視線は覗く双丘から離さない。


肌馴染みのいいピンクのブラ。レースがふんだんにあしらわれていて、モネによく似合う…


ようやく体温計を脇に挟み、そのままにしていると、紅い顔のモネが口を開いた。


「…手、どかしていいよ…」


ちゃんと挟んでるから、と言いながら、モネが笑う。


「いや、ズレると測り直さなきゃならないから」


もっともらしいことを言いながら、体温計から手を離さない理由は…さりげなく胸に触れたいからだって、バレてるんだろうなぁ…


ホント俺はスケベだと…自分で認める。




「…あ、あのぉ…」


その状態でドアの外から声をかけてくる聖也に、俺の返事が尖る。


「なんだっ?!今ドアを開けたらまたお仕置きするぞ?」


「ヒィィ…!」



「お仕置きって…?」


ほらぁ、モネにバレちまった。

しかもピピピッ…って、体温計の計測タイムが終わってしまった。


「なんかこの体温計、測る時間早すぎない?」


文句を言いながら見ると、37.5度。

思ったより高熱ではなかったので安心したが…モネがクスクス笑っている。


…なんで?



服を元に戻してからドアを開ければ、エントランスに憂たちが集まっているという。


「すいません…開け方が、わからなくて…」


…さぁ全員揃った。

最後に、聖也に深く反省してもらう会を開くことにしよう。


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