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番外編1.

「えぇっ?キミちゃんが取りに来てくれるの?」


まさかの、ウサギゴリラに扮してのプロポーズのあと、キミちゃんが着ぐるみを回収しに来てくれるという。


そしてよくよく聞いてみると、なんとあのプロポーズのヒントをくれたのは、キミちゃんだったという…!



「事件の時、心配かけちゃって…謝罪も兼ねて店に行ったんだよ。その時俺…ちょっと悩んでてさ」


私が入院した時のことだという。


…何か気にするようなことを言ったかと思い返すも…悩みとウサギゴリラが結びつかなくて、早々に降参した。



「モネに言われたことじゃなくて、俺が。ちゃんとプロポーズしてないって気づいた」


…それであんな壮大なプロポーズを敢行したなんて…なんと勇気のある人なんだろう…!



「チラっとそんな話をしたら、これ使ったらいいんじゃないですか?って、ウサギゴリラのぬいぐるみを渡されたんだよ」


そこで着ぐるみを思いつき、キミちゃんに相談して…それからは早かったという。



「あっという間に出来たのがコレだよ。…すごいよな?キミちゃん。絶対ウサギゴリラで世界に羽ばたくよ!」


「ほぇ〜…それは嬉しい…!」


「モネがあんまりウサギゴリラに甘い顔をするのはちょっと気に入らなかったけどな?」



チョン…っと私の鼻先を指先で突ついてから、吉良は腕組みをして盛大に発表した。



「これから、綾瀬家の贈答品はウサギゴリラ商品、一択だ」


「かしこまりました。ご主人さま…」


「…ん?」


言い方が可愛いと褒められるのは嬉しいけど、髪がからまるから、あんまり頭をゴシャゴシャ撫でないでほしい…





その夜、憂さんから「私の快気祝いをしよう!」という、嬉しい連絡をもらった。



「モネちゃんの大学の時の友達…錦之助と、霧子ちゃん?あと聖也も誘ってさ!」


「いいね!それじゃ…添島さんと万里奈さんも誘ったら?」


吉良に言われ、私は喜んでうなずいた。



場所はなんと、都内のクラブを貸し切るらしい。


「4人でよく行ってたとこ!吉良がめちゃくちゃ尖ってた頃な!」


「クラブ…私は初かもです…」


リズミカルな音楽が、結構な音量で、ドンチャンかかってるイメージ。


「あと、ヘッドホンした人が片耳だけで音を聞いて、手元で何かやってるの!」


「それ、今回は俺らでやろうかなぁ」


「ええっ…っ!」


吉良がやったらどれほどカッコいいでしょう…


私はつい、キラキラした目を向けてしまったらしい。



「なに…やってほしいの?」


ちょっと得意そうに言う吉良。

もしかして相当経験ある…?



「うん…やってくれるなら、動画撮っていいですか?」


言い方がおかしかったのか、吹き出した吉良。



「やるやる。やりますよ?」


グリグリ頭を撫でてくれて、私は飼い主に可愛がられて喜ぶ犬のようになった。



声をかけた皆は喜んで来てくれると連絡があり、当日を楽しみにしていた私だったが、1つだけ…



「美羽さん、天音美羽さんは、来ないのかなぁ…」


「あぁ…超絶お嬢様の、憂の彼女か」


吉良から憂さんに話をしてくれることになり、私は当日会えるのを密かな楽しみとする。



やがて当日、私は生まれて初めて「クラブ」というところに足を踏み入れた。


中は少し薄暗くて、重低音の音楽が流れてる。

ズンっズン…と、結構お腹に来るけど、思ったより音は小さい。



「今日は貸し切りだからな。普通はこの10倍は音がデカい」



吉良がDJブースにいる憂さんに声をかけた。


「もう少し明るくしない?…せっかく治ったのに、またモネが転んだら大変だ」


憂さんは笑って照明を増やしてくれた。


…階段や段差は無さそうだから大丈夫なのに、あの一件以来、吉良は予想通り過保護…!



「モネ…!ちょっとあんたっ!大丈夫なの?」


やがて続々と集まってくれる面々。

後ろから声をかけてきた霧子は、今日は全身黒でカッコいい感じ。


「うん。大げさにアザが残っちゃったから見た目だけ可哀想な感じだったんだけど、もうどこも痛くないよ!」


涙目になって抱きしめてくれる。



「…とりあえず、無事で良かったよぉ…モモちゃん…」


…すでに泣いているのは聖也。

よよ…っと近づいてくるので受け止めようとしたところで…



「…それ以上近づくなよ?」


聖也の後ろで腕を組む錦之助が言う。



「ちゃんと見てなかったって、後で吉良先輩にボコられるのは俺だ…」


遠い目をする錦之助の視線をとらえ、吉良がその頭をガシガシ撫でた。




添島先輩と万里奈も到着し、DJブースにいる憂さんを見て驚く。



「イケメンには…イケメンの友達…」


「憂さんは吉良の幼なじみで、まだあと2人いるんですよ!」


私はまだ来ていない2人を見て、さらに驚くのを想像して笑ってしまう。



「お待ち…!」


私の肩にポンっと両手をかけた鬼龍さんが到着を知らせる。


「手。…いらんだろ」


私の肩に置かれた手を、パシっと払いのける吉良。



「固いこと言うなって…今日は快気祝いだろ?」


鬼龍さんは、呆然と見つめる添島先輩と万里奈に、会釈しながら自己紹介した。


「吉良の友人k。鬼龍です!…歯が痛くなったら、ご相談ください!」


呆気に取られる2人とブンブン握手をしている間に、最後の1人がやって来た。



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