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番外編.第18話

「女の子か男の子かは、肉食か野菜食かで変わるらしいぞ」


吉良がスマホを見ながら言う。



「じゃ、うちの子は女の子かね?…おーい!君は、どっちなんだい?」


まだ全然大きくないお腹に向かって話しかけてみる。



「まだわからないんじゃないの?」


吉良が声をかけられた私のお腹を撫でた。



「ううん。…受精の瞬間に決まるらしい。…わかる頃になったら、性別聞いてみる?」


「うん。…待ちきれないから、絶対聞きたい…!」




閉店する凛々子さんの店に集まった時に感じた体調の変化は、やはり妊娠によるものだった。


まずは妊娠検査薬を使って調べ、陽性反応が出た時の吉良の喜びようは大変なもので…


その後すぐに産婦人科を訪ねた時も、お医者さんに妊娠中の注意事項を聞きまくって苦笑いされていた。


「ご主人がこんなに出産を楽しみにされて、奥さまを大切にしておられるなら、心配なことは何もありませんよ」


なんて…!


本当に私は幸せだ。



出会いから、早くも7年目。

私たちの間には、いろんな出来事が通り過ぎていった。


それは後になれば笑い話になるような…吉備須川さんや弟のタケ、そして美麗ちゃんとのこと。


意外な吉良の過去に直面して、2人でたくさん悩んで苦しんだ事もあった。


でも今私は、愛してやまない人の子供をお腹に宿し、優しくて強い愛に包まれている。


それは幸せで、幸せ過ぎて…本当に夢みたいな毎日なのだ。




Side.吉良…………


「…ただい…ま」


玄関を開けて、パタパタと走ってくる小さな足音がしない時は…


俺も足音を忍ばせてリビングへと入るようにしている。


さっと視線をかわし、口元に人指し指を当てる愛しい人。

…優しい視線は、横で眠る娘に注がれる。


俺の天使は…遊び疲れて寝てしまったらしい。

少しガッカリしながら、ソファに横たわる娘、恵茉の寝顔を覗く。


モネに似て、まつ毛が長い。

柔らかそうな頬はバラ色で、そんなところもそっくりだ。


一緒に覗き込む愛しい人と、ゆっくりキスをかわしながら…自分でも思う。


俺はいつまでもモネに甘くて、信じられないくらい惚れていると。


娘は可愛くて仕方ないが、モネは食べてしまいたいくらい可愛い。


つまり、どちらも愛しさが半端ないということだ。



モネと同棲する時に借りたこの部屋、今はあちこちに段ボールが積み上がり、今週末の引っ越しに向けて準備中だ。


もうすぐ1歳になる娘。


妊娠中から考えていた引っ越し先は、治安が良く、幼稚園や小学校が近い地域に決まった。


最寄り駅から近いわりに、緑豊かな公園がある場所は、我が家にぴったりだ。



「引っ越し準備、大変じゃない?」


「全然!恵茉はよく寝る子だから、その間にスイスイ進んじゃう!」


笑う笑顔が大人っぽくなった、と思う。



「…ご飯、準備するね」


ありがとう…と言いながら、今日はどんな具が入ったおにぎりを出してくるだろうと、頬が緩む。


変わらないところと、さらに魅力を増していくところ。

モネはバランスよく、進化していると思う。



そんな彼女は、穏やかな幸せをまとって…疲れて帰る俺を、今日も癒してくれる。


幸せとは、こういう日々のことを言うんだと、俺は毎日実感している。


I love you…forever






2025.5.12執筆完了


不機嫌な彼氏の秘密に涙する

番外編…完



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