目次
ブックマーク
応援する
13
コメント
シェア
通報

俺の未来⑲

翌日、未来はぐっすり眠って起きないので…仕事だとは思ったが、休ませる事にした。



「…はぁ?お前と未来が?」


「そう。向こうの実家には行った事あるから、話はスムーズに進むと思う」


俺の両親も反対どころか泣いて喜ぶはずだ。


社長はあんぐり口を開けたまま、何か言いたそうだが、何も言わせない迫力を醸し出してる自覚は…ある。


堅木さんや是枝さんも話を聞いていて、お祝いの言葉をもらった。



「…だから、未来は俺のマネージャーに戻して。あと、結婚するんだから、今後ラブロマンスのドラマとか映画は受けないよ。…未来に嫌な思いをさせたくない」


「…はぁ」


返事をしつつ、力が抜けたように椅子に座る社長。



これで万事OKだ。

俺は、そう思っていたのに。





「し、し、椎名さん…どこに行ってたんですかぁ…?」


「あ…仕事を早めに切り上げて…モネちゃんの快気祝いに行ってた」


「か、鍵が置いてないので、帰れなくて…し、仕事も無断欠勤で…」


「大丈夫。俺が有休扱いにしてくれって言ってきたから」


「そ…それにしても、です!」


半泣きで一生懸命抗議する未来が可愛い。



「…昨日あんなに乱れた姿を見せといて、まだ帰るとか言ってんの?」


「…ヒィィ…」


ヒィィじゃねぇだろ…



「社長には、未来と結婚することを話してきた。それと…今後はラブロマンス系のドラマとか映画はNGって…」


「…それは、ダメです!」


一瞬、結婚することがダメと言われたのかと萎えかけたが…


「椎名さんのビジュアルなら…ラブロマンスは絶対ハマると思うのです。これは…才能です!椎名瑠偉だからこそできる仕事というのは、きっとまだたくさんありまして、そのひとつは…ラブロマンスなのであります!」


「…未来、お前成長したな」


いろんな意味で規格外で、予想もつかないことを言ったりやったりしてきたけど。


未来の言葉に、俺はマネージャーとしての成長を一番に感じた。



「わ…私は、椎名さんのこと、ほ…本当は、初めて会った時から…ずっと、ずっと…好きだったんです。そ、それで…お仕事をする椎名さんがカッコよ過ぎて、もっと好きになって…そんな椎名さんはもっともっと、羽ばたくべきだと思いました!だ、だから、毛利社長のおかしな言いがかりなんてやっつけたかったし…わ…私がいない方が、仕事に集中できるならと思って…マネージャーもおりて…」



全部、俺のためだったというわけか。



…まぁ、そうじゃないかと思ってたけど、未来は知らないんだ。


もう未来がいないと、俺は生きることさえ…できなくなっているということを。


「もう無理しなくていいんだよ。俺たちは2人でひとつだ」



抱きしめる俺に、未来はまだ言葉を続ける。



「ら、ラブロマンスは…?椎名さん、もうやらないのですか?」


「…ん?俺が他の人と、たとえ仕事とはいえ、キスしたりハグして何とも思わないわけ?」


抱きしめる腕をちょっと緩めて聞いてみる。


「そ…それは…その、ずっと見ないようにして耐え忍んでいたので…」


「…っ!」


そんなことを言われたらぐっと詰まるしかないわけで。


「…し、椎名さんのメロメロドラマを見て、キュンキュンしたいです…」


「…リアルに抱かれるより、二次元の世界がいいってか?…この変態め!」


頬をムギュっと両手でつぶしてやる。


ブサイクな顔になって、突き出た唇にキスをした。


未来が笑い、俺も笑う…


時には怒った顔をされることもあるだろう。

でも、俺は誓う。


未来に、決して泣き顔はさせないということを。


屈託なく笑い…独自の感性で生きる未来は…俺の未来。

笑い合う…俺の未来なんだ。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?