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第27【お嬢様の質問】

「それじゃあ改めて初めまして、藍沢さん。そしてこれからよろしくね」

「こ、こちらこそよろしくお願いします!」


 そう言って藍沢さんは深々と頭を下げた。


「それにしても藍沢さんすっごく可愛いよね~」


 そう言って結唯さんは藍沢さんに近づいた。


「まるでアニメのキャラクタ―見たい。髪も肌も凄く綺麗」

「そ、そんな! 皆さんの方が可愛くて綺麗です……」

「利香ちゃんもしかして照れてるの? 可愛い~!」

「だ、だって私皆さんの大ファン……なので」


 それを聞いて結唯さんは嬉しそうに藍沢さんの頭を撫でた。

 大ファンと目の前で言われて嬉しくない人なんて居ない。


「そうだ、利香ちゃんのVTuberのモデルとか見てみたいな」

「はい! 是非見てください!」


 そう言って藍沢さんは俺達を配信スペースへと案内してくれた。

 そして藍沢さんは慣れた手つきでパソコンを弄り、モニターにVTuberモデルを表示させた。


「わー! 可愛い!」

「めっちゃ好みの子なんだけど」

「利香ちゃんとなんか似てるね」


 藍沢さんのVTuberは銀髪のセミロングの美少女。髪には雪の結晶の飾りをしている。


「白雪乃愛って名前で活動しようと思います!」

「名前も可愛いね~」


 そんな会話を聞いていると秋奈が俺の腕を掴んできた。


「どうかしたのか?」

「ふん。なんでもなーい」


 そう言って頬を膨らませてきた。


「そういえば利香ちゃん私達に敬語だけど、これから同期として活動していくんだもん、敬語は無しで話そうよ。それに透夜くんも敬語だよね? 今日を機に皆敬語は禁止って事にしない?」

「良いねそれ」

「これでもっと皆仲良くなれそうだね」

「それじゃあ早速お二人さん、敬語は外そうね」

「わ、分かった」


 俺はそこまで外すことに抵抗はないけれど、今日初めて顔を合わせた藍沢さんは中々声が出ない。


「ま、まぁ利香ちゃんは今日が初めてだしゆっくりで大丈夫だからね」

「わ、わかりました。すみません」

「そんな、謝らなくても良いんだよ。私が突然提案しちゃっただけだから」


 するとドアをノックする音が響いた。


「皆さま、本日の昼食を準備いたしました。是非お屋敷へ」


 そう言って胡桃さんは車で俺達を藍沢さんの家へと連れて行ってくれた。


 事務所から来るまで十五分程走ると、一つ凄く目立つ家……と言って良いのかも躊躇う程大きな家が見えてきた。


「こちらが利香お嬢様のご自宅になります」


 俺の身長の二倍ほどの大きさの門が開くと、目の前には小さな池、に噴水。美しい庭園があった。

 こんなのテレビでしか見たことがない……。


「すっごい……」

「これがお家って……」


 凄すぎて皆言葉に詰まっている。


「どうぞ皆さん、こちらへ」


 そうして胡桃さんに案内された部屋には高級感漂う長机が晩餐会スタイルにされており、大きなシャンデリアまである。


「ご自由に席についてください」


 そう言われ各々席に着くと、料理人と思われる格好の人が二人やってきて俺達の前に料理を置いた。


「美味しそう!」

「凄いお洒落!」


 まるで高級フレンチに来ているみたいだ。


「どうぞお召し上がりください」

「「「「「いただきます」」」」」


 全員手を合わせそう口にして料理を口に運んだ。


 すると皆口を合わせて美味しいと頬に手を添えていた。


「ところで私たちはいつからブイプロとして活動するんですか?」

「予定では五日後の土曜日の二十時に皆さんでブイプロとしてのデビュー配信をできたらと思っているのですが、ご予定などはございますか?」


 俺達は全員予定はないと答えた。


「利香ちゃんもそこで初配信をするんですか?」

「はい、お嬢様もその日にVTuberとしてデビューするそうです」

「利香ちゃん声も可愛いしイラストも可愛いから凄く人気になりそうだよね」

「そ、そうですか? 結唯さんにそう言われて凄く嬉しいです!」


 藍沢さんが笑顔でそう言うと、隣に座る結唯さんも満面の笑みを浮かべた。


「もう食べちゃいたいくらい可愛い!」


 結唯さん相当嬉しいんだろうな……。


「あの、一つ秋奈さんと透夜さんに聞きたいことがあって……」

「なになに~。何でも聞いてね!」

「お二人はその……お付き合いしているんですか?」

「へ⁉」

「うっ……!」


 いきなりの発言に俺は喉が詰まりそうになった。


「り、利香ちゃん⁉ わ、私たちは別に付き合ってるとかじゃ……」

「よく聞かれるけど幼馴染だよ」

「そ、そうそう! まだ付き合ってないよ!」

「ふ~ん。まだ、ね~」


 秋奈の隣に座る円華さんは意地悪っぽい笑みを浮かべて秋奈の事を見つめた。


「こ、これは言葉の綾ってやつだから!」

「そうだったのですね。てっきりお付き合いなさってるのかと思いました。お似合いなので」

「お、お似合いだなんてそんな……」


 すると突然俺のスマホに一件のメッセージが来た。

 相手は目の前の結唯さんからだった。


『早く告白して付き合いなさいよ』


 それに俺は「そんな勇気あったらとっくに告白してる」と返した。


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