VTuber事務所のスカウトを受けた数日。
俺達は約束した場所にやってきた。
「なんかドキドキするね」
「恥ずかしいけど昨日は寝れなかったなぁ~」
立派なビルの八階に行くと、ブイプロというロゴが大きくあった。
「あの、今日お話の約束をした百瀬秋奈です」
「百瀬秋奈様ですね……こちらへ」
そう言って案内された部屋に入ると、一人の女性ともう一人俺達と同い年くらいの女子が座っていた。
「皆さまお待ちしておりました。ブイプロ事務所代表の胡桃有栖と申します」
「初めまして、雨音雫月の百瀬秋奈です」
秋奈に続いて皆同じように自己紹介をした。
「ところでそちらの方は?」
「ああ、お嬢様の紹介がまだでしたね」
「お嬢様?」
すると胡桃さんの後ろに隠れていた女子が前に出てきた。
綺麗な銀色の髪に真っ白な肌。整った顔立ちはまるでアニメから出てきたようだ。
「は、初めまして! 藍沢利香です!」
「お嬢様は皆さまの大ファンでして」
「あ、あの……お嬢様って……」
「実は私は利香お嬢様のメイドでして、ご主人様に変わってこの事務所の代表を任せていただいたのです」
「わ、私皆さんの大ファンで、楽しそうに活動する皆さんを見ていたら私もVTuberをやってみたいって思って色々勉強して準備をしていたらお父さんがVTuberの事務所を作ってくれまして、それで皆さんをスカウトしました」
軽く凄い事を言ってきて俺達は固まってしまった。
「なのでもし皆さまがブイプロに所属してくれることになりましたら、利香お嬢様と同期として活動していただくことになります」
「そうだったんですね。私達のファンなんて凄く嬉しいです!」
「それでは本題に入りましょう」
そう言って胡桃さんは俺達を椅子に座らせた。
そして目の前の硝子テーブルに人数分の資料を置いた。
「ブイプロ事務所で行うことは他のVTuber事務所と差ほど変わりません。今後大きな事務所にしていき、二期生、三期生と増やしていく予定です。ブイプロはこのビルの八階と九階を所有しております。八階はこのように会議をしたりするのに使い、九階では配信スタジオやご自宅での配信でトラブルが起き配信ができなくなった場合にご自由に使っていただける配信機材およびスペースを設けております」
資料には実際の写真が添付されている。
スタジオもこの前行った企画の時に借りたスタジオと同じくらいの大きさで凄く綺麗だ。
「それとこちら運営はライブをしたり大がかりな企画等を除く配信での収益は一切受け取りません」
「え? でもそれじゃあ」
「心配ございません。ご主人様からそうしろと指示を受けていますので」
それから一度事務所を案内してもらい、もう少し詳しい事や質問を返してもらったりした。
「こちらからの説明は以上になります。ご返事は今でなくても大丈夫ですので」
「その事なんですけど、実はここに来る前に皆で話し合って、是非事務所に入らせてもらおうって事になりまして」
「ありがとうございます。ではこちらの書類にサインをお願いします」
こうして俺達は今日から事務所所属のVTuberとなった。