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第52話 強制的な意味でデート

 洋服は結局10着になった。私の要望どおり、そのうち3着は動きやすい服になった。そして、こっそりと姉妹の姉の方に頼んで下着も追加で入れてもらい、それを宿舎の方に届けてもらうことになった。


 私はというと、ロリータファションの格好のまま着替えさせてもらえず、そのまま冒険者ギルドに向かうことになってしまった。


 確かに姿鏡で見た私は可愛かった。白い生地とレースであしらわれた膝上のドレスだ。ところどころにピンクのリボンがアクセントしてつけられていた。それがピンクの瞳とも合っていた。髪をおろされた頭に付けられたヘッドドレスも同様のものだった。


 可愛い。私では無かったら。可愛いとべた褒めをするところだ。私の姿を見たルディのように。

 しかし、しかしだ。膝上のドレスというところで気がついて欲しい。この洋服は子供用なのだ。今の私は16歳。身長は150セルメルcm無いが、16歳なのだ。


 恥ずかしすぎて、羞恥心に耐えきれない。そして、ルディが壊れたレコードのように『可愛いね。可愛いね』と繰り返してる。

 それも、ドレスで馬に乗っているので、横向きに乗っている。安定性が悪すぎるぞ。


「ここですね」


 王都の冒険者ギルドについたようだ。冒険者ギルドには必ず剣と盾の看板が掲げられている。

 馬に乗ったまま着いた建物をみると、確かに剣と盾の看板があるが、私が知っているキルクスの冒険者ギルドとは違い4階建てのとても大きな建物だった。


 ルディは私を抱えられながら馬をおり、入り口の騎獣を繋ぐところに馬を繋いで、中に入ろうとする。いや、おろせよ。


 中に入ると、流石に王都なだけあって、昼前の時間だが、多くの人が建物の中にいた。


「ここは出金用の受付があるのですよ」


 ああ、ここまで大きいと用途ごとに受付が分かれるのか。

 その時、ルディが受付けに行こうとしているところを遮る者たちが現れた。これはもしやテンプレ!!


「もしかして、アンジュちゃん?」


 ん?この声はもしかして?

 そう思い、声をかけてきた人物をみるとブラックブラウンの髪と目のほっそりとした女性とその隣には金髪碧眼の大柄な男性が立っていた。


「カーラさん。レイさん。お久しぶりです。今は王都に?」


 カーラとレイはキルクスの冒険者ギルドで知り合った人たちだ。


「だから、俺はレイチェディルだ!っとことはやっぱりアンジュか?攫われ中か?」


「可愛いわ。アンジュちゃん。いつ王都に?今日はデート?」


 攫われ中かデートかと問われれば。


「強制的な意味でデートです」


 私には買い物に行きたければ、デートという選択肢しか無かったという事実。


「まぁ。攫われ中じゃなければいい。ここを破壊されると俺の食い扶持がなくなるからな」

「ディルったら、未だに幼女誘拐事件の報酬を全部アンジュちゃんに持って行かれたのを根に持っているのね」


「幼女誘拐事件?」


 はっ!ルディが反応してしまった。


「それはいいから、私は出金したい」


「幼女誘拐事件という話を聞かせてもらえませんか?」


 私を抱えながら胡散臭い笑顔のルディが私の黒歴史を聞き出そうとしている。それは聞かなくていい。


「私は出金がしたい」


 もう一度言ってみる。するとルディはニコリと笑って言う。


「先に出金をしに行きましょうか」


 は?先にということは話は聞くということか。そして、二人に少し待つように言ってルディは窓口の一つに向かっていった。


「こちらは出金窓口になっております」


 受け付けの女性がルディと私を不審げな表情をしながら見ている。そうだよね。ロリータファションでくるところじゃないよね。きっとお前らは来るところを間違っていると指摘をしたいのだろう。


 私は不審げな視線を向けている女性に首から下げているギルドのタグを見せる。 


「私が預けているお金をすべて引き出してください」


「え?Bランク?」


 Bランクですが何か?私がBランクだと問題が?


「聖金貨でいいのですべて引き出してください」


「せ、聖金貨!!」


 受け付けの女性は慌てて私のタグから情報を引き出している。そして、段々と顔色を悪くしていっている。


「も、申し訳ございません。す、すべての出金はいたしかねます」


「なぜ?」


「100万Rリーン以上の出金は一度にできないように条件が決められておりますので」


 条件?契約時の規定ってこと?そんなものに出金の規定ってあった?……·いや、契約時にすべての契約事項に目を通したけど、出金の規定は基本的には無かったはず。依頼失敗時の受領違約金に関することと、チーム内での金銭トラブルにキルドは関わらないというぐらいだったはず。


「本当にそんな条件があるのですか?どこに書いてありますか?契約規定には一度目を通しましたが、そのような事が書かれていた記憶はありませんが?」


 ますます、女性の顔色が悪くなってくる。『あの、それは』とオロオロと言い出した。

 なんだろう。言えない事でもあるのだろうか。ん?もしかして。


「キルクスのギルド支部から何か出てたりします?キルクス以外のギルドからの出金制限とか」


「……はい」


 これはあれか!神父様の手が回っていたのか。私が勝手にキルクス以外から出金しようものなら、出金制限がかかり引き出せないようになっていたとか?そして、細かく出金しようものなら私の居場所を追跡できると。

 恐ろしい。こんなところまで神父様の手が回っていたのか!


「ちなみにその解除条件は?」


「別の方の名義の口座に振込です」


「クソ神父!!絶対に許さん!こんなところまで手を回すなんて!」


 私は心の底から叫んだ。私が貯めに貯めた5千万が引き出せないなんて許せない!!



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