『──ティアーのこれまでの行動は“悪”と言えるか? それとも、“正義”と言えるか?』
……その問いかけに対して。俺は──
:──その問いかけに応えるのは、俺じゃ無い。
『……ほう?』
俺の答えに対し、画面の奥のカイザーは明らかに目を細めて、鋭さを増した。
まるで答えを逃げた事を、咎めるように。
『……では、誰が決めるというのだ? ヒーローか? ヒーロー連合か? 国か? ……私か? ティアーの行って来た罪に対して、誰が応えるというのだ。──答えろ、画面の奥の君よ』
……苛立ちの混ざったようなその問いかけに、俺ははっきり応える。
:──“法”。法律だ。
『……法だと?』
俺の答えに、予想外だと表情に出すカイザー。
その顔は困惑が混ざっていた。
『……なるほど、確かに平等ではあるな。しかし、分かっているのか? 今のヒーロー、ヴィラン社会では法は力を持っていない。ヴィランには、“結局法を無視できるほどの物理的な力”を持っているからだ。強制する力無き法など、意味が無い──』
:──その法で裁ける所まで連れていくのが、ヒーローだ。
『っ!?』
……ああ、カイザー。今日お前と話せて良かった。
おかげで俺の中でヒーロー、ヴィラン像が改めて固った。
:ヴィランを法で強制出来ないのなら、法で裁ける所まで弱らせて、警察に渡すのがヒーローだ。人外の力を持ってしまったとしても、同じ人間ならば、人の法で裁くべきだ。──人の世を乱したならば、人の決めた
ああ、そうだ。ヒーローは私刑制度じゃ無い。
人の手で抑えきれなくなったヴィランを、人の手で届かせる範囲まで落とし込み、人の手で裁かせるようにするのがヒーローだ。
:悪人を裁くのは、法人であるべきだ。──この役目は、神様にだって渡せない。
……これが、俺の考えだ。
人の世を乱したならば、個人で裁くんじゃない、
これが嘘偽りない、俺自身の考えだ。
『────、────っく、くく、くーっはっはっはっはッ!!!』
俺の答えがツボにハマったのか、カイザーが分かりやすいくらいテンションが上がって大笑いし始めた。
予想以上の回答を得られたといったように。
『──くう、はあ、っはあ……はは、最高の答えだよ。ある意味ヒーローよりヒーローらしい答えだ。そうか、法か……ヒーローは、ヴィランを法で裁けるようにするためにいるものか……ああ、納得出来る話だ』
多少こぼれたティーカップに、改めて追加のポカリを注ぎ始めるカイザー。
とても愉快な話を聞いたような笑顔で。
『君の答え、しかと聞かせてもらったぞ。……しかし、神様にだって渡せない、か。大きく出たな。君の信念と言えるもの、よく分かった』
ティーカップを、ズズっと啜る。
『しかし、それならそうだな。ティアーの罪は、確かに法で照らし合わせるものだな。それによって功罪を決め、それで裁かれるべきか。君もそれに従うのだろう?』
:──いや、そうとは限らない
『──は?』
啜っていたティーカップを、思わず口元から離すカイザー。
まあ、それはそうだろう。俺が言ってる事とすぐ矛盾したのだから。
けれど、矛盾はしないんだよ。
:人の世を乱したならば、法みんなで裁くべき。この理念は変わらない。──けれど、その結果に、個人俺が納得出来るかは、また別の話だと思う。
……そう、仮にブルー/ティアーが裁かれたとして、その裁判の結果が俺が納得出来るかどうかは、その時まで分からない。
:……ヒーローが、法で裁ける所まで持っていく存在だとしたら、ヴィランは──
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
──私にとって、ヴィランってね。“夢を叶えたい人達”だと思うのよ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
──ああ、悪いなブルー。やっぱり、俺のヴィラン観は違うや。
:……俺にとってのヴィランは、“法に従えず自分の意思を貫きたい者だ”
『──っ!』
:もし裁いた結果、俺個人が納得出来ないような結果だったとしたら──
その時は──
:──俺自身が、ヴィランとなる
『────ッ!!! ハーっはははははハーっはっはっはっはっはッ!!!!!』
さっき以上の大笑いで、カイザーは大声を出す。
あまりに笑いすぎて、持っているティーカップからポカリがバシャバシャ溢れていた。
しかしそれを気にする余裕もないほど、カイザーはお腹を抑えて笑っていた。
『ひーっひひ……なんなんだ、なんなんだ君は! 精神性だけで言えば、最高のヒーローになれる素質を持っているかと思えば、同じくらい最高のヴィランになれる素質を持っている!! ああおかしい、最高におかしいよ君は!! 最高に狂ってる!! ああ、この部屋にこれるだけはあるなあ!!』
過去最高のハイテンションで、カイザーはそう捲し立てる。
これ以上ないくらい、最高の存在を見つけたようなキラキラした目で。
『ああ、ああ! 納得する、納得出来る! ヒーローは、ヴィランを法で裁けるようにするためにいるもの! そしてヴィランは、法に従えず自分の意思を貫きたい者!! その上で、“人の世を乱したならば、法みんなで裁くべき!!” ああ、どれも納得出来る話だ!!』
──しかし、だから! だからこそ!! っと、カイザーは捲し立てる。
『そうか、法か……“法”なんだ!! 今ようやく分かった、私が、我が最も立ち向かうべき存在。それは“法”そのものだったんだな!! ああ、これ以上なくしっくりくる……!!』
カイザーは握り拳を作り、カメラ越しにいるだろう俺に対して振り向いてくる。
『ああ、決めたぞ。我は、世界を支配する。そして──世界の法を、書き換える』
:っ!?
『法とは、みんなで決めるものであろう? しかし──トップの意志が反映されないとは限らない筈だ。支配者トップの裁量で、ある程度変更することは出来るだろう?』
『そうだ……これこそ、本当の世界支配!! 人の結晶たる法を自由に決められる権利こそ、最も世界を支配した証と言えよう!!』
ティーカップを持ったまま、両拳を握り締めてカイザーはたった今理解した事を実感している。
もはやコップの中身が全てこぼれ落ちたことなど、一切気にしていない。
『名も知れぬ君よ。……君は今この瞬間、最も偉大な功績を残した。最も偉大な罪を犯した。ヴィランに……“世界を支配するかも知れない悪のボスに、新たな夢を授けるなど!!” ハーっはっはっは!! 我のやる気がさらに上がったぞ!!』
:……もしかして、やっちゃった?
『ああ、やっちゃったなあ!! これで本当に世界を支配出来た暁には、ティアー並の大戦犯だな君は!!』
……俺は、無意識にやらかしてしまったことに冷や汗を掻く。
いや、ちょ。だって俺が普段から考えてる程度のことが、こんなに悪のボスに引っかかるなんて思ってもいなかったし……
『名も知れぬ君よ……いや』
そう呼びかけようとしたカイザーは、敢えてそこで区切り。
『──名前を、教えてくれないか』
すがるような声で、そう言って来た。
『最早、君が私と同程度の位置に辿り着ける事など、些細な違いだ。その精神性だけで、君は私の宿敵ライバルと言えよう。……だから、呼び名が欲しい』
カイザーは、こっちを認めて来た。
だからこそ、名も知らなかった相手のことを、知ろうとして来たのだろう。
『偽名でも、なんでもいい。私個人から君に対してどう呼べばいいか、それを教えてくれ』
そう言って、落ち着くようにティーカップに再度ポカリを注いで、飲み始めたカイザーだった。
……対して、俺はどう名乗るか迷っていた。
レッドはダメだ。まだバレていないヒーロー名を言うべき所じゃない。
聖夜は論外。本名名乗ってどうする。
と言っても、俺自身あんまりゲームとかのアカウント名とかもレッドで統一しちゃってるし、どうしよう……
うーん、と悩んで……じゃあ本名にちなんで……
聖夜……クリスマス……
:じゃあ、“サンタクロース”で
『ぶはあッ?!!!』
思いっきりカイザーが吹き出した。口に含んだポカリが一滴残らず噴出している。
あはは、あああああああああっははっははっははっははっはは!!! っと、再度今日最高の笑い声を更新していた。
畜生、悪かったな! とっさに思いついたのがこれしかなくて!!
『はは、はっははっははっははっ!!? お、お前! 私を笑い殺す気か!? 前代未聞だぞ、悪の組織のボスをこのような方法で倒そうとするなど!! いや、けどサンタクロースか!! あはは、私に新たな夢をプレゼントしに来たと言う意味では、確かにぴったりだなあ!!』
一頻り笑った後、はー……と、落ち着いたカイザーは、改めてカメラの方を向いた。
『……ああ、考えれば考えるほどピッタリだ、サンタクロース。うん、君の事はこれからそう呼ぼう。嫌とは言わせんぞ、君がそう言ったのだからな』
あ、本気でサンタクロースで決定しちゃったよ。
なんか思った以上にカイザー気に入っちゃったぽいし、これは予想外だった……
『──じゃあ、今日のところはこれで。サンタクロース、素敵なプレゼント夢を、ありがとう!』
そう言って、カイザーは今日の配信を切っていった。
……恐らく、また明日も会話するんだろうなあと、俺は漠然とそう思っていた……
☆★☆
「おらあ!!」
「くっ!!」
狼の獣人が手の爪を使って、俺の剣と鍔迫り合いの状態になってしまった。
一対一なら、この状況もそこまで悪くは無かった。しかし……
「ぬうううううんッ!!!」
俺の横から、巨体の幹部が襲いかかってくる!!
このままじゃ、やられる……!!
「このお!! “レッド・エッジ!!”」
「ぬあッ!?」
「ぬおおっ?!」
鍔迫り合いの状態から、両手で剣を握って力任せに必殺技を振りかぶる。
狼の獣人を剣ごとぶん回し、巨体の幹部にぶつけて両方吹っ飛ばす。
「ロケット、パァアアアンチッ!!」
しかし、無理やり二人を飛ばして体勢が崩れた俺に対して、すかさず追撃がやってくる。
回避は、間に合わない!
俺は咄嗟に、剣でガードをした。
「ぐ、うううう────ッ!!」
屋上の地面をズザーっと擦るように押し込まれるが、なんとかダメージにはならない程度に抑え込めた。
そのままゆっくり停止するかと思えば……
「キキ、ヒ〜ひひ!! これでも、喰らえ!!」
いまだガード中の俺に対して、爆弾が複数投げつけられる。
くそ、次から次へと!!
「舐め、るなああッ!!」
バシッバシッバシン!!
「キヒィ!?」
「ビガアっ!?」
俺はあえて上体を大きくのけぞって、ロケットパンチを後ろに逸らす。
その後、投げられた爆弾達を剣の腹を使って慎重に、しかし大胆にテニスのスマッシュみたいに撃ち返す。
そして、そのまま打ち返された爆弾は幹部たちにヒットしてドカーンッ! と爆発する。
しかし……
「キ、ヒヒ……危なかった……」
「ビガー、ガードが間に合って良かったですビガー」
「くっそ、全然倒れてくれねえ!」
元々投げられた爆弾の威力が低かったのか、全然効いた様子が無かった。
せっかくカウンターが決まったと思ったのに、これでは流石に精神的に堪える……
「……存外、思った以上に粘るではないか。ランキング83位」
「へえ、ボスさんは知っててくれたんだ。光栄だね……」
遠くから見てるだけだったボス、プルガトリオがそう声を掛けてくる。
ッチ、ランキングナンバーもバレちゃってるか……適当に上位ヒーローの誰かだと勘違いしてくれたなら良かったのに。
「なんだよ、83位かよ! 大したことねえなあ!?」
「ビガー。しかし、この粘り強さは称賛に値する」
「ぬうん、調子に乗ってると足元救われるぞ」
「キ、ヒヒ……全部爆発しちゃえば、問題無いさ」
「……ついでに、教えてくれねえかなあ。なんでワザワザ街中のショッピングセンターで、ボスと幹部が勢揃いでやって来たのか。あまりにも戦力過多すぎねえか?」
俺は素直に、疑問に思っていた事を目の前の奴らに問いかける。
たかがショッピングセンター、それを占領するのにワザワザ陽動、通信遮断も含めた上で、ボスと幹部勢揃いなどただ事じゃないと思ったからだ。
しかし……
「……時間稼ぎには付き合わんぞ。それに、もう目的の設置は完了した」
「は?」
「おい、ドクター」
「ヒヒッ! はい、この通り、この建物に設置した爆弾の爆破スイッチが──」
この瞬間、俺は様子見と手加減をかなぐり捨てる。
相手の会話が終わる前に、剣を屋上に突き刺して両手をフリーに。
そして、両手にそれぞれ“レッド・ギフト”をチャージして“レッド・ツインギフト”を発動。
その状態で剣を握り、“レッド・ウルトラエッジ”の発動準備を完了。
この間、過去最速の約1秒にも満たない。
この間の【カオス・ワールド】戦の時ですら使わなかった二つの技を切る決意をする。
最早周囲の建物の被害なんて気にしていられない。手加減抜きで止めないとヤバいー!!
技名を宣言する暇も惜しいとばかりに俺は大剣を振り上げて、あのスイッチを──
パアンッ
「ヒヒ、ヒ……ひ?」
「……ッ?!」
──直後、“スイッチが破壊された”。
俺が叩っ斬る前に、まるで自然と破裂したかのように……いや、あれは“狙撃”されたのだ。
屋上にいる全員が、何が起こったのかと認識する前に……
「──ちょっと待ったあああああああぁぁぁぁぁッ!!!」
ショッピングモールの外。ビルの建物外から、“ティアーが文字通り飛び上がってやって来た”。
その両手には、特殊な形の“二丁拳銃”を携えて、片方はドクターと呼ばれた幹部の手元を指していた。
……つまり、先程の狙撃はティアーによるものだったのだ。
驚いている自分たちを他所に、ティアーは急に“空中を弾け飛ぶように移動”して、屋上にやって来た。
「ティアー!? 何で、というかどこから来た!? ここ5階建ビルの屋上だぞ!?」
「ふふん♪ この程度の高さ、私にとっては散歩道程度みたいなものよ。……ちょっと怖かったけど」
「貴様……【カオス・ワールド】の幹部か!!」
「あら? 私のことを知ってくれているなんて光栄ね? ファンかしら、サインいる?」
「ふざけた態度を……!!」
プルガトリオが、ググッと握り拳を作って怒りを表していた。
どう見ても、ティアーのファンという態度では無かった。
「スイッチ一個壊したくらいで、いい気になるなよ……! ドクター!!」
「き、ヒヒ! はい、こちら、予備のスイッチとなります!!」
「あいつら、まだ持ってたのか!!」
「あー。それなんだけど、さっきは咄嗟に1個目のスイッチ破壊しちゃったけど……」
「──もしかしなくても、そのスイッチの先って“コレ”のことよね」
そう言って、ティアーはドサドサっと、懐から何かを投げ捨てていった。
それは、明らかにドクターの幹部が使っていた爆弾と同一の物達だった。
「キヒィ!? き、貴様!?」
その言葉を気にせず、ティアーは何らかの通信端末を取り出す。
「あー、あー。そういえばみんな、そっちの調子はどう?」
『A班、爆弾5個解体完了で〜す!』『B班、7個解除!』『D班、4つ処理完了です!』『C班、6個もありましたー! 全部解体済みでーす!』
「よしよーし。みんな優秀ねー♪ ……と言うわけで、私が持って来た分と合わせると、計25個の爆弾があったんだけど……これで全部かしら?」
「き、ひ、ヒヒ……!?」
パアンッ
「まあ、それはそれとして予備のスイッチも破壊させてもらうわね。壊しとくに越したことないでしょ」
「容赦ねえー」
「え、それレッドに言われたくない……」
サラッと二つ目のスイッチすら壊したティアーに向かって正直な感想を零したら、なんかこっちに飛び火した。
まあ、確かに俺でも壊しとくな、うん。
「き、貴様あ……!!」
「で、なんでこんなただのショッピングセンターで悪の組織勢揃いしてるのかしら? まあ、大体理由は分かるけど」
「あ? 理由分かるのか?」
ええ、っとティアはーはビルの下を指差した。
「ここの地下、“とあるヒーロー組織の拠点らしいのよ”。上位ヒーローの、隠れ本部って所ね」
「っ!? そうか、それを破壊するために……!」
「それでビル毎破壊しようとしてたんだろうけど……スマートなやり方じゃないわねー。中に取り残された人とか沢山いたんだけど? 巻き添え食ったらどうするつもり?」
あ、ちなみに地下駐車場にいた人たちは全員脱出済みだから。私の通り道だったし、とティアーは続けた。
それを聞いて俺は一安心した。ティアーという形だったが、涙るいは頼んだ通りに一般人を逃してくれたのだ。
「……はっ。知るわけないだろう。ヒーローに大打撃を与えるチャンスだったんだ、その辺の無関係な奴らが幾ら死んだところで知ったことか」
「はあ? ふっざけんな! あんた達ヴィランなんでしょ!? 支配箇所のインフラ壊して生活水準下げさせてどうするつもり! 支配領域の搾取品少なくなっちゃ損よ損!! ヒーロー本部壊しても、お店のビル壊してちゃ意味ないでしょ!?」
「(いや、それはどうなんだろうか……?)」
ティアーの指摘が微妙に的外れのように思えて、俺は内心ツッコミを入れていた。
そのティアーの言葉に対して、プルガトリオはッハとあざ笑う。
「そんなことはどうでもいい。どうせ我らは支配など興味は無いしな。我らの目標は復讐!! にっくきヒーロー共を、一人でも多く葬り去るのが我らの崇高な使命!! それを邪魔するのならば、相応の代償を払ってもらうぞ!!」
「え? ヒーローのいない空っぽの本部破壊するようなコソコソとした臆病な作戦しか立てられないような組織が? 言ってる事と行動矛盾してるよ?」
「貴様らあの女をぶっ殺せエエエエエッ!!!」
『おおおおおおおおおッ!!!』
「あらら……なんか地雷踏んじゃったみたい?」
「いや、思いっきり踏み抜いてたよお前?」
いかにも、私やっちゃいました? 感を出しているティアーに対して、俺は呆れながら指摘する。
まあ丁度いいわ、とティアーは言った。
「レッド。ちょっとあいつらの相手、私に任せてくれない?」
「あ? 一応聞くけど、なんでだよ」
「実は、元々あいつらにはちょーっと因縁があってね。……【カオス・ワールド】の支配都市で、あいつら爆弾爆発させやがったのよ。その時は逃げられちゃったけど」
「絶許案件じゃねーか」
なるほど、ティアーが地雷を踏む前に、既にあいつらもティアーの地雷を踏んでいたと。
……悪の組織同士は連携を取れない、カイザーのその言葉を俺は思い出していた。
「おかげで、ウチの“アイリスちゃんのコンサートが台無しだったのよ!!” 今回のパフェの件除いても、絶対許さないわあいつら……というわけで、あの獲物達は私に寄越しなさい」
「誰だよアイリスちゃん……分かったよ。そっちに任せた」
「……あら? こう言っちゃなんだけど、素直にうけるのね? ヴィランの言う事なんて聞く耳持たないー、って感じじゃ無いんだ? ヒーローともあろうものが?」
「あいにく、俺は利用できるものは利用するタイプなんでな。……ヴィラン同士で潰しあってくれるなら、それはそれで好都合だ」
「うーわ、卑怯ー。漁夫の利狙う気ねー。……まあいいわ。そこで大人しくしてなさい」
はいよー、と言いながら俺は後ろに数歩下がる。
対して、逆にティアーは前に歩き始める。
「ああ、そうそうレッド」
「ん?」
「あなた、結局私の戦い見た事ないじゃ無い? ……丁度いいわ、そこでしかと見て置きなさい」
「──そして、絶望なさい!! 【カオス・ワールド】の幹部、コバルト・ティアーの実力の前に、自分との力の差を!! この戦いで見せてあげる!!」
そう言って、ティアーは例の特殊な形の“二丁拳銃”を構え出す。
……ブルーの時と同じ二丁拳銃、だが銃そのものが、違う。恐らく、【ダーク・ガジェット】製。
「──さあ、いくわよ。覚悟なさい!!」
その掛け声とともに、ティアーは敵幹部4人とボスに向かって走っていった──
★佐藤聖夜さとうせいや
23歳
175cm
黒髪
中立・善
男
主人公
【ジャスティス戦隊】のレッド。
「サンタクロース、そんなにおかしい名称だったかな……」
自分のネーミングセンスが、もしかしたら長官と大差ないんじゃ無いかと内心ビクビク中。
ティアーの戦いを割と楽しみに見学しようとしている。
この信念こそ、聖夜の正義と悪へのスタンスである。
……仮に自分が裁かれる立場に回ったとしても。この理念は、変わらない。
★天野涙あまのるい
22歳
168cm
青髪
混沌・善
女
【ジャスティス戦隊】のブルー。
兼、【カオス・ワールド】の幹部、“コバルト・ティアー”。
「さあレッド、絶望しなさい! ここからが私のオンステージよ!!」
前回戦わなかった分、今回暴れようと準備万端。
レッドも見ているため、やる気マックス。
最早目の前の他の悪の組織はただのサンドバッグぐらいにしか思っていない。
★カイザー
22歳
172cm
紫髪
混沌・悪
【カオス・ワールド】のボス。
ティアーの幼馴染み。
「ふふ、もう私との関係が切れると思うなよ。私のサンタクロース……♪」
レッドの中のヒーロー、ヴィラン観を整理して、悪堕ちするラインをハッキリと浮かび上がらせてしまった、ティアー以上にティアーの計画進めた女。
最早自身にとって、ティアーと並ぶほどの存在になったカメラの奥の君。
ある意味世界征服に並ぶ夢として、サンタクロースの正体を求める事が目標となってしまった。
サンタクロースのプレゼントは、独占したいタイプ。
男でも女でも気にしない、どっちも行けるとの事。