「────ええー……」
問い:レッドがピンチかと思ったら、急にツーキルしてました。どう反応すればいいでしょうか?
答え:気にせず残りの幹部を倒しましょう。
「それもそうね。SET、【インパクト・バレット】、
「キキぃ!?」
レッドの事は今は置いておいて、残りの幹部を倒すことに集中する。
伊達に悪の組織の幹部をやってないのだ、これくらいの切り替えは当然だ。
相手は【ブラッド・フォース】でドーピングしてると言っても、体重そのものが変わったわけではない。
衝撃波の弾を1発だけ撃って、ドクターの幹部を真上に吹き飛ばす。
「SET、【ノーマル・バレッ……」
さっきのコンボのように、空中で動けない相手に連打を叩き込もうとする……
ビリッ!!
「──ッ!?」
──突如、私の体に痺れが発生する。
……いつの間にか、“改造スタンガン”が私の体に当たっていたのだ。
変身しているとはいえ、一瞬の痺れのせいで“手元の武器”を両方落としてしまった!!
「くく……これ以上は好きにさせんよ」
「アイツ……!? 大人しく見てるんじゃなかったのかしら!!」
「誰もそんな事は言っていない、油断したほうが悪い」
見ると、プルガトリオが投げたらしい。
アイツ、今まで参戦する気配がなかったのに、ボスなら最後までドシンと構えていなさいよ!!
とにかく、落とした武器を拾わなきゃ。
そう思って、手を下に伸ばして──
爆弾が近くに投げ込まれ、爆発した。
「っ!? きゃあ!?」
「キキぃ!! ありがとうございます、ボス!!」
ドクターの幹部が復活したらしい、それですぐ爆発する爆弾を投げ込まれた。
私自身にダメージは殆どないけど、【ツイン・ティアーズ】が何処かに吹っ飛んでしまっていた。
「さあ、ドクターよ!! 今のうちだ、その丸腰の小娘にとどめをさせ!!」
「キキぃ!! ようやくだ、覚悟ぉ──!!」
今度はバズーカを構えられた状態で、私は──
☆★☆
「やられる──!?」
俺が二人の幹部に切れている間、状況が大きく変わっていた。
ティアーの武器が何処かに飛ばされ、丸腰の状態でバズーカに狙われている。
助けに入るか、一瞬そう周巡するが──
勘で、必要無いと判断する
「──なんちゃって♪」
そう言ったティアーの手元には、既に【ツイン・ティアーズ】が握られていた。
「キキぃ……?」
「んなッ?!」
「SET、【インパクト・バレット】、
いつの間にか手元に戻っていた二丁拳銃で、いつものように衝撃波の弾を放つ。
ドクターの幹部にヒットしたそれは、今度は真上に吹っ飛ばすのではなく、ティアーの方に向かって吹っ飛ばした。
そしてティアーは、二丁拳銃を真上に掲げている。
「SET、【ガンソード・バレット】、
二丁の銃剣になったそれで、吹っ飛んできたドクターの幹部に対して構える。そして……
「“クロス・スラッシュ!!”」
「キキぃぃぃぃぃぃぃいぃぃッ??!!!」
X状に斬られたドクターの幹部は、それだけで倒れる。
流石に巨体の幹部とは違って、そこまで耐久力があったわけではないらしい。
「貴様、どうやって……!? 確かに武器は吹っ飛ばした筈!?」
「あら、知らないの? “最近のヴィランは、武器複数持ちがトレンド”よ?」
その言葉に、俺は納得した。
話は簡単、ティアーはシンプルに【ダーク・ガジェット】を複数持ちしていたのだ。
吹っ飛ばされた武器とは違う、新しいものを懐から出しただけ。
「一点ものじゃない、“量産品だからこそ出来る強み”……!!」
【ライト・ガジェット】はその性質上、5000個近くあるとはいえ、それぞれの固有の武器は世界で一つずつしか存在しない。(一応、破損の修理程度は出来るが)
対して、【ダーク・ガジェット】は結局の所人の手で作られたものだから、いくらでも量産が可能。
だからこそ、一人が同じ武器を複数持っていてもおかしくないのだ。
ここにも、ヒーローとヴィランの装備の性質の違いが大きく出ていた。
「さて、と。あとは貴方だけね。今度こそ降参したら? 私、大分イラついているんだけど」
「くっ……クックック、とうとう我の出番が来たか。いいだろう、思い知らせてやる」
そう言って、プルガトリオは前に出る。
そして懐から、ある物を取り出した。
「…………貴方」
あれは……【ダーク・ガジェット】!?
「クックック、どうだ。自分の大きな助けになった武器が、敵のボスの手にも握られている気分は」
「正直さっきから思ってたんだけど……貴方たち雑多に武器と装備集めすぎてない? 旧世代技術縛りかと思ったら、【ダーク・ガジェット】も使うなんて……正直、プライドとかあるの? って気分」
「なんとでも言え!! 勝てばいいのだ勝てば!! 利用出来るものはなんでも利用すれば良いのだ!!」
そう言って、プルガトリオは【ダーク・ガジェット】を起動する。
まがまがしいオーラに、包まれていく!!
「おお、おお……!! 力が湧いてくる!! クックック、はーっはっはっは!! このような力をわざわざ配ってくれるとは、にわか世代も馬鹿な奴らだ!! 」
「…………」
「さあ、思い知れ!! これこそが、【ガリオ・リベンジャー】のボス、プルガトリオの真なる力!! 貴様らにわか世代も、ヒーロー共も、一人残らず滅ぼす──」
「SET、【ジャミング・バレット】、
ボソッと呟いたその言葉が聞こえたのは、俺だけだった。
長ったらしい口上を無視してティアーが放った弾丸はプルガトリオにヒットする。
──そしてその直後、プルガトリオにあったまがまがしい“オーラが消えた”。
「──最強の、ちか、ら…………あ?」
「SET、【カオスレーザー・バレット】、
その言葉とともに、プルガトリオは極太レーザーに包まれて。
ドサっと、悲鳴すら上げずに倒れていた。
「──ふう。プルガトリオは強敵だったわね!」
「おい」
俺は思わずそう声を掛けてしまっていた。
いやおい、最後。おい。
「なあに、レッド? いやー、プルガトリオ戦白熱したわー、さっすが悪の組織のボス。一瞬の油断が命取りだったわね……」
「そうだな。俺には、相手のボス側がめっちゃ油断してたように思うんだけど。それはそうと、さっきの弾……」
「まさか、旧世代ヴィラン組織が【ダーク・ガジェット】を使ってくるとは。プライド無いとは言ったけど、実際利を取って躊躇なく使ってくるやつって結構厄介なのよね」
「そうだな。あの組織思った以上に雑多に戦力集めてたしな。それはそうと、さっきの弾……」
「ん? “【カオスレーザー・バレット】”の事? いやー、流石に目立っちゃうか。見ての通り私の最強火力の弾よ。主にとどめを刺すときに信頼出来るレーザーで、範囲攻撃としても超優秀で」
「そっちじゃなくて、ボソッと呟いた方なんだけど」
「えー、知らなーい。ティアーちゃんなんのことか分かんなーい」
ものっすごい棒読みな誤魔化しで話を逸らし続けるティアー。
──コイツ、やりやがった
「……一応、一瞬しか意味は無い弾だから」
ボソッと言い訳のように付け足していたが、ぶっちゃけそこはどうでもいい。
思いっきり“敵に【ダーク・ガジェット】使われた時の対策してやがる”。
考えてみれば、開発にティアーが関わっているんだったら、使われた時の対処法も分かっていてもおかしい話では無かった。
最後のボスがあっさり倒されたのも、【ダーク・ガジェット】に完全に頼り切ろうとしたからその隙を突かれたのだろう。まさか開発者が相手とは露も知らず。
前から思っていたが、ティアーは割とおっちょこちょいのように見えて、その実敵の弱点などに対しては抜け目の無い女だった。
今回その容赦の無さが思う存分発揮された形なのだろう。
……あれ、これガチでやばくね?
俺はふと気づいた。
ティアーが【ダーク・ガジェット】を敵に使われた時の対策をしているという事は、当然【カオス・ワールド】全体にその対策法は授けているだろう事は予想出来るわけで。
という事は、【カオス・ワールド】に敵対した組織が【ダーク・ガジェット】を使って戦おうとしても、すぐに無効化されるわけで。
そうなると、【ダーク・ガジェット】という便利な武器に依存していた敵組織は完膚なきまでに負けるわけで。
──つまり、“新世代悪の組織に【カオス・ワールド】に勝てる組織はほぼいない”ということでは?
「(──大真面目に世界征服、現実味が増してきたな。おい)」
旧世代の技術を手放して、美味しい便利な道具に頼り切ろうとしたら、そのガンメタをされるという容赦の無さ。
しかも分かっていても、それでも【ダーク・ガジェット】は強力だから簡単に手放すわけにもいかず。他の組織に対しては普通に使えるから尚更。
勝負自体成り立たなくさせるようなこの状況に、俺は【カオス・ワールド】に対して本気で戦慄していた。
「さて、と。とりあえず、これで全員片付いたわね。どうよ、レッド」
「……ん?」
「──私の戦い、どうだった? 絶望したかしら?」
「──ああ、したよ。めっちゃ強いなって、そう思った」
これは、心からの本心だった。
一応俺も幹部二人を倒していたが、あれは無我夢中だったし。さらに敵から向かってきてくれていた状況だった。
もしティアーと戦うことになったとしても、現状ほぼ全ての攻撃を対処される可能性の方が高い。
今の俺だと、まだ勝てないだろうと、素直にそう思った。
「っ!! ふふん♪ そうでしょそうでしょ! 恐れなさい、敬いなさい! 今の貴方なんかより、遥かに私の方が強いんだから!」
「ああ、そうだ。お前の方が強い」
「ふふん、素直ね! 素直すぎて不気味なくらいだわ! もっと褒めなさい♪」
「──ここまで強いと、“もう【ジャスティス戦隊】が対処する機会はない”だろうな」
「そうでしょそうでしょ────え?」
俺の言葉に、呆けたような顔になるティアー。
いや、だってそうだろ。
「明らかにヒーロー戦隊ランキング83位に対処出来るような相手じゃねーよ、お前は。明らかに上位50位……いや、それ以上の順位の案件になるだろうな。コバルト・ティアーは」
「…………は?」
「今回の件で、お前個人に対する脅威度は修正されるだろう。今後、もうお前が現れたとしても、【ジャスティス戦隊】案件になる事はないだろうな」
「…………」
「というわけで、お前との付き合いも多分ここまで。お疲れ様、今後は上位ヒーローにお前のことは任せて──」
「ぐはあッ!!」
「っ?!!」
すると、急にティアーはそう悲鳴を上げて膝をつき始めた。
え、何!?
「っく、やるわねレッド……!! プルガトリオを倒した直後の私に対して、一瞬で見えない攻撃を繰り出すなんて……!! まさに今、モロにくらってしまったわ!」
「いや、俺何もやってねえ」
「っふ、謙遜はよしなさい。いや、なるほど。何もしてないように見せかけた、と言った所かしら。流石レッド、我こそが上位ヒーローに並べるもの、と言いたいわけね」
「いや、言ってねえ」
「さすがは私の宿敵ライバル……!! 今後も凌ぎ合いがありそうね、覚悟なさい!」
「もしもーし? おーい?」
「──いや、というか貴方もドーピング敵幹部二人瞬殺してるでしょうがッ!? 普通にあんたもランキング上がってくるべきでしょうがアアアアアッ!!!!!」
「アウアウアウアウ……」
下手な演技をかなぐり捨て、普通にキレ出したティアー。
俺のスーツの胸元を掴んでガックンガックン揺らしてくる。
お前、これ、逆ギレ……
「これじゃあ私戦い見せたの損じゃない!? いい!! ちゃんとあんたの組織もランキング上げて私の対処になるようにしなさいよー!!」
「いや、俺、今回もランキング上昇の話あったら断ろうかと……今回独断行動だし……」
「ふっざけんな!! 過剰な謙遜は人を傷つけるって知らないの!? 今まさに私が傷ついているんですけどー!?」
ワイワイ、ギャーギャー。屋上でそんなやりとりが開始されていた。
その様子すら配信ドローンに撮られていて……
──突如、そのドローンがバチバチと音を出して、墜落した。
「……ん?」
「何?」
ガシャンッと音を立てて落ちたそれに、ティアーと俺は意識を向ける。
なんだ、故障?
そう思って視線を向けていると……
──突如、空に高エネルギー帯が
「「────ッ!??」」
俺とティアーはとっさにその場から離れる。
そして、俺たちのいた場所に“巨大な雷”が落とされた。
ピシャアアアアアンッ!!!
「何何何!? 雷!?」
「なんで!? さっきまで雨雲なんて無かった筈! 今も晴れて……!!」
「──躱されましたか」
ふと、その声にバッと顔を上げると……“一人の人間が別のビルの屋上に立っていた”。
それは真っ白い西洋の全身鎧で、フルフェイスで顔が見えない。
体系的に女性だろうか? レイピアを空に向かって掲げていた。
そのレイピアには、バチバチと電気が帯電しているように見えた。
「誰だ、あいつは……!? ヒーローか!? イエローと同じ、電気使い……!!」
「ちょ、ちょっと!? まさかアイツ……!!」
ん? ティアーは知ってる? 心当たりがあるのか?
そう思っている俺たちの前に、ビルの屋上から俺たちの所まで降りてくる謎の女性。
ふわりと体重を感じさせない着地をして、俺たちに向き直る。
「──なるほど、既に【ガリオ・リベンジャー】の騒動は終わっていたのですね。残ったのは、あなたたち二人……」
「お前は誰だ? ヒーローか? それともヴィランか?」
「……ヴィランと間違われるのは心外ですね。次から気をつけて下さい、【ジャスティス戦隊】のレッド」
俺のことを知ってるのか……
一応映像配信されているから、知られていてもおかしくは無いが……何か違和感がある。
「申し遅れました」
そう言って、恭しく頭を下げる謎のヒーロー。
「────私は、ヒーロー戦隊の“隠し組織”。【ジャッジメント】の一人、“トール”と申します。以後お見知り置きを」
脈路もなく現れたそいつは、そう自己紹介して俺たちに話しかけてきた────。
★
23歳
175cm
黒髪
中立・善
男
主人公
【ジャスティス戦隊】のレッド。
自己評価が著しく低い男。
行きすぎた謙遜はキレられる。キレられた。
★
22歳
168cm
青髪
混沌・善
女
【ジャスティス戦隊】のブルー。
兼、【カオス・ワールド】の幹部、“コバルト・ティアー”。
敵の弱点把握に抜け目の無い女。
何がなんでもレッドの戦隊のランキング上げてやろうと画策し始めている。
★トール
──歳
──cm
──髪
秩序・善
女
【ジャッジメント】の一人。電気使い
ヒーロー戦隊の“隠し組織”を名乗っている。
急に現れた訳は……?