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第19話 謎の女性が現れたんだけど、どうすればいいと思う?


 俺は、ふと気づく。

 以前のランキングの話について、その順位によって相手するヴィランが変わると。ということは……


 :カイザーって、ランキング何位が相手してるの? 


『ん? ふっふっふ、聞いて驚け。“なんと1位〜10位”までは戦った事があるぞ。返り討ちか、悪くても痛み分け程度にはしたな』


 :極悪ヴィランじゃねーか!? 


 クッソヤベー戦績で、俺は戦慄していた。

 これ完全に放置したらダメな最強最悪じゃねーか!? なんでこんなノンビリ配信出来るくらい放置されてんだコイツ!? 


『まあ、とは言っても……ランキング一桁台って、入れ替わりが激しいから今誰がトップかよく分からんのだ。先週トップだったやつが、今週は8位になってたりと。上位一桁は大体団子状態だぞ?』


 :あー、分かる。ある意味トップの戦力は充実してると言えるけど。


『ヒーロー戦隊ランキングって、実績とか人気で順位付けされているが、直接ランキング入れ替わりバトルがあるらしいから、それ利用して上位陣入れ替わりが激しいのよな……』


 :結局は現場ありきの仕事だから、物理的な実力あるに越したことはないからな


『実はヴィラン達の中で、このヒーロー戦隊上位10位以内常連の奴らを、“テンペスト”と呼んでいる事がある。嵐の“テン”ペストと上位10位を掛けた感じだな。ダサいシャレだが、彼らの戦闘は文字通り天災の痕になってる事が多いから、ある意味的外れではない評価だが……』


 :そんな名前で呼ばれてるの? 上位陣。


『……話がそれたな。ま。それはともかく。そんなやつらと戦っていたせいで一時期我は一瞬目立ってはいたが、逆にそのせいで目をつけられてしまってな。情報の規制と、“ランキング外の特殊戦隊”により、討伐を組まれる事が最近多くなってしまった』


 :特殊部隊? 


『おそらく、ヒーロー連盟の“隠し札”的なやつであろう。表立って排除出来ない、非公式で処理する影の人員。ヒーローが表に立って人気、称賛を受ける側面があるならば、こちらはただただ敵を排除する戦闘、暗殺特化のスペシャリスト、と言ったところか。戦闘力だけならばランキングのヒーローの大半より上だろう。おかげで、我の戦闘など大半がこやつらとの時間のせいで、すっかり我も表舞台に出る暇が無くなってしまった』


 はー、やれやれ、とカイザーは口を溢す。

 なるほど、やっぱりちゃんと放置はされないように対策は打ってたんだな、ヒーロー側。


『もしかしたら、その内貴様も会うかもな。この特殊戦隊に』


 :いやー、そうそうその機会は無いでしょー


 カイザーレベルでようやく相手に出されるような部隊だ。

 テンペストですらない、83位の戦隊の人員が出会う機会なんてそうそう……



 ☆★☆



「……あったよ、その機会」


 思いっきり、ヒーロー戦隊の“隠し組織”と名乗った女性が目の前に現れてしまった……


「【ジャッジメント】の“トール”!! なんでこの程度の騒動に、あなたが来ているの!?」

「愚問ですね。そもそもヴィランは全て私の敵、ならば私が来た事もそれほどおかしくは無いでしょう」

「あんたより凶悪な上位ヴィランを倒すための組織でしょーが!?」

「ティアー、知り合いか?」

「私を含め、ウチのカイちゃんによくちょっかいかけて来る人達よ!! 何度煮湯を飲まされたことか……!」


 ティアーが苦々しく西洋の鎧の女性を睨みつけている。

 どうやら、何度か殺り合った仲らしい。


「まあ、この場であなたに出会ったのは予想外ですが。【ガリオ・リベンジャー】の騒動を聞きつけてやってきたはいいのですが、既に収束している様子」

「そうよ。あなたの出番なんかとっくにないわ、遅刻ヒーロー。さっさと帰りなさい。しっし」

「そういうわけにも行きませんよね? 【カオスワールド】の幹部、ティアー。あなたの言う、凶悪な上位ヴィランが目の前にいるのですから」

「あれ!? 目標私に切り替わった!?」


「……なあ。先に質問いいか?」


 俺は二人が話しているところに割り込んだ。

 一触即発な空気になる前に、ある程度質問して置きたかった。


「なんでしょう? 【ジャスティス戦隊】のレッド。質問を許します」

「あんたは、一応ヒーロー側なんだよな? この騒動を聞きつけて、ヒーロー連合から出動要請された、で合ってるか?」

「ヒーロー側ではありますが、後半は違いますね。これは私自身の独断です。レッド、あなたが何故かこの場にいるように」

「ちょっと耳が痛いところを……じゃあ、一応聞くけど、ヒーロー戦隊の“隠し組織”っていうのは? あんたにランキングは存在するのか?」

「私達にランキングは存在しません。表舞台に立つヒーローでは対処出来ない凶悪なヴィラン、それらを倒す戦闘専門家が私達です。一般には公開されない存在が私達です」

「……“隠し組織”が堂々と俺たちの前で名乗って良かったのか?」

「安心しなさい、配信ドローンは一時的に封じさせてもらいました。この周囲一帯の監視カメラも一時的に無効化しています。この場に直接いない限り、私の存在は公にはならないでしょう」

「俺にはバレても良いってことか?」

「ええ。あなたには別件で用がありますので」

「別件?」


 それを聞こうとした瞬間、ティアーに肩を掴まれて後ろに引かれる。


「ちょっとレッド!! 忘れないで、あいつさっき私達両方雷で狙ってきてたわよ!!」

「……ああ。分かってる」

「あんたどういう事よ! 私はともかく、レッドは一応あなた達側じゃないの!?」

「その点に関してですが、私から彼に話があります」

「話? 何?」

「私達は、凶悪ヴィラン討伐の専門家。しかし、もう一つの側面があります。……“それは、ヒーロー側の裏切り者を、人知れず対処する事”」

「っ!!」


 「──【ジャスティス戦隊】のレッド。あなたに、“上位ヴィランとの繋がりの疑いが掛かっています”」


「なあっ!?」


 その言葉に、俺は予想外で一瞬固まる。

 上位ヴィランとの繋がりだって!? そんなの……


 ・ティアー(ブルー)の配信の閲覧

 ・さっきのティアー(ブルー)との会話

 ・最近毎晩カイザーとの配信中の会話


 ……ヤッベ、否定出来る要素が何一つねえや

 あれ、これ俺終わったか? 


「特に【カオスワールド】の幹部との繋がり。その疑念がされている所ですが……」

「っ!!」


 それを聞いて、横でティアーがピーンッ! と何か思いついたような表情を。

 おい、何するつもりだ、おい。


「……そうなの!! レッドと私はちょーマブダチ!! めっちゃ仲良くて、“私の組織に情報流してくれる裏切り者なの!! ” ふふん、バレちゃあしょうがないわよね! ええ!!」

「おまっ……!!?」


 こいつ、ここぞとばかりに嘘言って俺をヒーロー側にいられなくしようとしてやがる!? 

 あれか、ヒーロー連合から追い出して【カオスワールド】に入れようとしてるのか!? 

 なんつーことを!? こんな根も葉もある状態だと、全然言い訳出来ねえ!? 

 ガチで俺、終わっ……



「なるほど。そこの馬鹿な女の虚言に巻き込まれてしまっていたのが真相だと。災難ですね、レッド」


「なんでよッ!!?」



 ティアーの嘘八百を、一瞬で見抜き切り捨てたトール。

 お、おお……あれ、なんやかんや俺も攻撃対象にされるのかと思ってたけど……


「そもそも、この場でのそちらの言い訳に意味がありません。今のように、彼女に虚言をされるか、あなた自身が嘘を付いている可能性がある以上、証言にはなりません。つまり、先ほどの事は問いかけではなく……」

「……なるほど、“警告”か」

「ええ、頭の回転が早くて助かります。その通り、警告です。あなたに疑いが掛かっているという事実のみを、お伝えに来ました……先ほどの一撃は、その一環です。これ以上疑いを深めるような事をしたら、今度こそその身に先ほどの雷が直撃するという事を、理解するように」

「……忠告、感謝しよう」

「ええ。分かったのなら、そこの馬鹿な女との関わりは一切断つように。これ以上その女のせいで疑いを深めたくないでしょう?」

「ちょっと、さっきから馬鹿馬鹿ってうっさいわね!! というか、そもそもなんでわざわざ警告に来たの!? そんな親切な事するような組織じゃないでしょう!? そんな疑いかけてる相手に逃げ道用意させる準備になっちゃうんじゃないの!?」

「別に。馬鹿の女の浅い策略でヒーローを無駄に追い出すこともないでしょう?」

「あー! また馬鹿って言った!!」


 ……そのトールの言葉に、俺はだんだん違和感を覚えてきた。

 なんかこの人、俺自身をヒーロー側から追い出したいというより……


「……あんたは、ヴィランとの繋がりの疑いがある俺を片付けたいんじゃないのか?」

「何故? わざわざあなたを処罰する必要はありませんでしょう?」

「うん?」

「……【ジャスティス戦隊】のレッド。あなたのご活躍は聞いております。この程度の疑念で、失うには惜しい」

「うん??」

「ええ、正直に言いましょう。──私は、あなたのファンです。この馬鹿な女のせいでヒーローを追い出されるなど、ヒーロー連合の大喪失です」

「お、おう……」


 予想外の告白に、俺は一瞬戸惑う。

 ファン、ファンって……? 

 しかもヒーロー連合の大喪失です、とか思った以上に大きくこられて、少しくすぐったい……


「ちょっとあなた!? 疑いがあるからって忠告に来たんじゃないの!? なんでレッドのファンとか言っちゃってるの!?」

「彼に疑いが掛かっている事と、私自身が彼に好意を感じていることは別の話ですので」


 しれっとトールはそういう事をいう。

 彼女自身、俺をヒーロー連合から追い出すのは惜しい、と感じていると。


「ですので、彼には是非早く疑いを晴らしてもらいたいですね。このような根も葉も無い噂であなたを失うなど、馬鹿らしいですから」


 そう先ほどより明るい調子で声を掛けられた。

 ……割と根も葉もある噂なのは、黙っておこう。申し訳ないけど、うん。


「まあ、その一環として……」


 そう言って、トールは手に持ったレイピアを構え出した。

 その切っ先は……“ティアー”だ。


「彼に疑いの向けられる原因となった、【カオスワールド】のティアー。やはり放置は出来ませんね。この場で討伐させて頂きます」

「何その理由!? あなた、まさかレッドの事が好きなの!? 好きなんでしょ!?」

「ええ、それが何か?」

「照れもせず、こともなげに!? ええい、ぽっと出の女なんかに負けてたまるかー!!」

「来なさい、愚かな女!!」


 そう言って、屋上でバトろうとし始める二人の女。

 おい、ここ一応街中なんだけど……? 多分上位ヒーローとヴィランで最終決戦始めないで下さいます? 


 ……まあ良いや。

 俺は一旦二人から目を離して……



 ☆★☆



 ──くそ!! なんなんだあいつらは!! 


【ガリオ・リベンジャー】のボス、プルガトリオは意識を取り戻していた。

 まだ体中痛くて簡単には動けそうになかったため、気絶したフリをしてあたりの様子を伺っていたのだ。


 そうしたら、レッドとティアーが喧嘩し始めるわ、トールとか名乗る新たなヒーローが現れるわと、状況が混乱し始めていた。

 しかし、これはプルガトリオにとってもチャンスと言える。


 今、あいつらは倒れている俺たちに一切注目していない。

 何かをするなら今がチャンスだ。

 ……このまま文字通り不意打ちでリベンジしても良い。

 が、流石にヒーローが一人増えた状態でそれは悪手だろう。

 業腹だが、ここは逃走一択だ。我は頭の悪いボスなどでは無い。クックック。


 と、そこらの三流悪党とは違うのだと、プルガトリオは自認している。

 一矢を報いることすらせずに、ただ無為に逃走を選ぶその思考こそが、その他の悪党と大したことないということに気づかずに。


 このまま大人しく捕まって、武器類を取り上げられて、そのまま裁かれるなどしてたまるものか。

 最後に笑うのは我々だ。


 そうプルガトリオは思考し、ズリズリと、こっそり、誰にもバレないように移動し始めて……




「レッド・フレイム/逃すわけ、ねえだろうが」



 より強い巨悪ヒーローには、その思考はお見通しだった。



 ☆★☆



 「ぎゃああああああああああアアアアアアアアアアア──ッッッ??!!!」


「っ?! 何何!?」

「あれは……敵のボス、ですか!!」


 突如発生した叫び声に、ティアーとトールは一斉にこっちに振り返っていた。

 まあ驚くよな。


「こいつ、逃げ出そうとしてやがった。もしかしたら反撃喰らうかもしれなかったから今延焼中」

「あいつ、本当にゴキブリ並みの生命力ね!!?」

「なるほど、私たちが互いに夢中になってる間、あなたは一切油断せずに……流石ですね」


 ティアーは敵のしぶとさに驚き、トールはレッドに対して感心をしていた。

 そんなレッドに対して、トールは前に出る。


「はい。それではレッド、そのまま燃やし続けてもらえますか?」

「良いけど、何するつもりだ?」


「──無論、とどめを差します」


 そう言って、スラリとレイピアを炎に向けて構えるトール。

 そのレイピアにバチバチと帯電し始めていき……


「……一応聞くけど、トドメって動けなくさせるって意味だよな?」

「ええ、その通りですが」

「悪い、聞き方間違った」



「──命を奪うって意味じゃないだろうな?」


「──ええ、そのつもりですが」


「「────」」


「……空気悪ーい」


 ……その言葉を皮切りに、ピリッとした空気が張り詰める。

 レッドとトールは、互いに視線を交わしている。

 横でティアーが右往左往に両方を見つめていた。


「……分かっているとは思いますが、そいつはヴィランですよ。それも極悪な。2度と悪さを出来ないよう、この場で命を持って償わせるのが正しいでしょう」

「ああ、それは理解している。……けどな、こいつも一応人間だろ? だったら、“人の法”で裁くべきだ。そのためにここで捕まえたまま、あとで処置をした後警察に突き出す」

「正気ですか? 言って置きますが、既にそいつは何人も手を掛けております。はっきり言って、そのまま生かしておくべき人間ではありません。このまま見逃せば、また何人、何百人もの犠牲が出るでしょう」

「なるほど、確かに見逃せないな。なら、ますます警察に突き出さねえとな」

「いいえ、その必要すらありません。このままこの場で殺します」


「──その権利は、あんたにはねえよ。無論、俺にもな」

「──っ」

「人の命を奪う権利は、この国には存在しない。……昔の戦国時代ならあったかもしれないが、今は現代だ。現代の国の法で裁こうぜ」

「……言っておりませんでしたね。私には神に許された権利があります。悪を裁く断罪者、それが私達です。だから私がいま、その男達を裁くことに何の問題もありません」


「“国には? ” その国の法が、あんたを許したのか?」

「──必要ないでしょう? その上の神様に許しを得ているのですから」

「いいや、いるさ。あんたが裁いたとしても、それはあんた個人が裁いた結果だ……そこに暮らしている奴に迷惑をかけたなら、そこに暮らしてる奴の総意法で裁くべきだ。……その権利は、神様にだって口出しさせねえよ」

「……大きく出ましたね」

「ヒーローなんで。これでもな」


 ……なら、とトールがある問い掛けをしてくる。


「……仮に、そいつらを警察に突き出したとして。“法の結果、そいつらが生き残った場合はどうするのですか? ” 可能性は限りなく低い例ではありますが、無いわけではありません。……人の法は、完璧ではありません。もしそいつらが、裁かれた上で生きて出てきたらどうするのですか? そいつらが、また暴れ始めたらどうするのですか!」

「その場合だったら、“法が不完全なのが悪いな”」

「──っ!! 他人事のように言いますね!!」

「事実だ。そこにいるみんなの総意が不完全だったからこそ、そういう結果を招き入れた。だったらそこにいるみんなが責任とって、反省し、新たに法を修正するべき議題になるな」


 「それでは遅いのですッ!!!」


 トールが、叫ぶようにそう言った。

 レッドの言葉を否定するように。


「あなたは……っ、あなたは、被害を受けた方達にもそう言うのですか!? 人の法で裁いた上で、生き残られたから新たに被害が出そうです。ごめんなさい、と!! そんな……そんな事を言うつもりですか!? ヒーローが……よりにもよってレッドのあなたが!!!」

「ああ。言うな」

「────ッ!!?」

「その上で」

「……?」


「──その上で、俺はこう行動するだろうな。“法の結果に従えない、ヒーローですらない何かとして、行動を”」

「……っ!!」

「……俺が法を絶対視してるのは、たまたまそこで俺が暮らしていて、そこに法ルールがあって、それが今の俺にとっても否定するものじゃないからだ。だから俺はヒーローをやってる。……それで救えない奴が出るっていうんなら、その時ヒーローなんか辞めて行動してやるよ」

「…………レッド」

「別にこいつらの事を許すつもりなんて、俺にもサラサラ無い。俺が人として生きる以上、ルールを守るケジメとして、こいつらも“人の法”に突き出すってだけだ。悪人を放って置けないのは、あんたも一緒だろう? けど、この場であんたがその手を血塗れにする必要もねえ。俺が、させない」

「…………私のことも、気遣っているのですか」

「ああ、そうだけど」

「……ふふ、私の方が遥かに強いのですけどね」


 そう言って、トールは構えを解いた。

 ふう、と肩を竦めている。


「……いいでしょう。そもそも私は今回遅れてきた身。口出しする権利など殆ど無い。今回はあなたの判断に委ねます」

「そっか、感謝する」

「……レッド」

「ん?」

「……あなたのことを、気に入ってるのは変わりません。先ほどの問いを経た上でも。あなたの存在は、ヒーロー連合に大きく必要です。だから辞めさせるような事にはさせません……しかし、だからこそ忠告です」


「──ヴィランは、どこまで行ってもヴィランです。許してはいけない存在。更生など、期待出来ない存在です」


 そこにいる彼女も含めてね。と、トールはティアーの方を振り向いていた。


「……へえ。黙って聞いていれば、言うじゃない。自称神様の言う通りの奴らのくせに。あ、レッド。お話ありがとうね。すっごく感心出来る内容だったわよ」


 そうティアーはお礼を言った。話自体はしっかり聞いていたらしい。

 何かが琴線に触れたのか、いつも以上にルンルン気分だった。


「ところで……許せないならどうする。この場で戦う?」

「お望みなら、今からでも……」

「さっきから思ってたんだけどさ。“戦うなら別の場所でやってくんない? ” ぜってえ街中の被害酷くなるだろ。戦うなとは言わないから、どっか別の場所移ってからやってくれ」


「……あれ? レッド、私は? 私の戦いは止めてくれないの?」

「止める理由無いからな」

「酷いっ!?」


 エッグエッグ、と泣き出すティアー。

 いやだって、お前に関してはマジでここで庇う理由ねーもん。

 ……まあ、ティアーならなんとか切り抜けるんだろうな、という打算もあるけど。


「グス、グス。……まあ、いいわ。レッドの言う通り、ここで戦うとせっかくショッピングセンター守ったのに、意味なくなっちゃうしね」

「……ええ、そうですね。私も異論はありません。その方が好都合」


「──来なさい。相手してやるわ」

「──ええ。お覚悟を」


 ……そう言って、ティアーとトールはその場から両方離れていった。

 あいつら、マジで戦う気なのか……今日のところは撤退するとか、そういうの無いの? 


「まあいいや。あー疲れた。一応、他の幹部どもも起きてないか確認を……」


 プルガトリオは、いつの間にか再度気絶していたらしい。

 とりあえず、一旦必殺技を切ってその場を離れる。


 さて、他の幹部どもは……



 カツンッ



「ん?」


 何か蹴ったな。なんだ、瓦礫の破片……げっ?! 


「……ティアー。あいつ、とんでもねえもん忘れてってんだけど……」


 そう言った、俺の視界に入ってきたものとは……



 ティアーの使っていた【ダークガジェット】・【ツイン・ティアーズ】だった



「そういえば、戦闘中落としていったっけ……どうしよ、これ」


 俺はしばらくうーん、と悩んだ末……とりあえず回収しておこうとしゃがんで拾い上げようとすると……


 タッチした瞬間、一瞬の光が! 


「っ!?」


 ビクッと後ろに離れると、一瞬光った【ツイン・ティアーズ】は……両方形態変化して、待機状態に変わっていた。


「……マジでどうしよ、これ」


 今のビビリで、俺は本気でどうしたらいいか完全に迷っていた……




 ★佐藤聖夜さとうせいや


 23歳

 175cm

 黒髪

 中立・善

 男


 主人公

【ジャスティス戦隊】のレッド。


 過激そうなファンが増えて、嬉しいやら悲しいやら。

 今回やばそうなアイテム見つけてしまい、どうしたらいいか本気で迷い中。




 ★天野涙あまのるい


 22歳

 168cm

 青髪

 混沌・善

 女


【ジャスティス戦隊】のブルー。

 兼、【カオス・ワールド】の幹部、“コバルト・ティアー”。


 レッドのヒーロー観を聞けて、悪堕ちの目が思ったよりありそうね、と思っている。

 この後のトール戦、無事に撤退出来たらしい。

 その後、忘れ物したことに気づくが、急いで戻ってもすでに無くなっててちょっと焦ってる。

 あれ特別製で作るの高かったのにー!! 




 ★トール


 ──歳

 ──cm

 ──髪

 秩序・善

 女


【ジャッジメント】の一人。電気使い

 ヒーロー戦隊の“隠し組織”を名乗っている。


 レッドのファンと言うことが判明。

 危うく解釈違いになりかけたが、レッドがそれ以上の答えを掲げてくれたのでひとまず納得。

 この後のティアー戦、いいところまで追い詰めたが結局逃げ切られる。



 ★カイザー


 22歳

 172cm

 紫髪

 混沌・悪


【カオス・ワールド】のボス。

 ティアーの幼馴染み。


 ランキング上位の“テンペスト”と大体の戦闘経験あり。

 まだまだ自分は未熟だと痛感中。

 逆にいえば、成長途中とも言い換えれる。

【ジャッジメント】に狙われている。

 しつこいと思いながらも、戦闘経験に丁度いいと前向き。




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