「あさいくんあさいくーん」
「ん? 何だい未央ちゃん」
えへへー、よんでみただけー。
きょうはみおとあさいくんとおねえちゃんのさんにんで、どうぶつえんにきてるの。
みお、どうぶつもだーいすき。
みおはみぎてはあさいくんとつないでて、ひだりてはおねえちゃんとつないでるの。
「ふふ、何だかこうして歩いてると、周りからは親子みたいに見えるかもね」
「そっ!? それはいくら何でも言いすぎじゃないかいまーちゃん!? 未央ちゃん、僕らが何歳の時の子だよってなっちゃうよ!?」
おやおや、きょうもおふたりはおあついですなあ。
まったく、みおがゆだんすると、すぐいちゃいちゃするんだからこのふたりは。
「あさいくんあさいくーん」
「んん? さっきからどうしたんだい未央ちゃん?」
よんでみただけだよ。
みおのこともわすれないでねあさいくん。
あ、そうだ。
「あさいくんかたぐるましてー」
「えっ!? ぼ、僕が未央ちゃんを!?」
ふふふ、おろおろしてるあさいくんもかわいい~。
みおだっておねえちゃんにまけないもん。
いっぱいあさいくんをゆうわくしちゃうんだから。
「ダメだよ未央、ともくんが疲れちゃうでしょ。肩車ならおねえちゃんがやってあげるから」
「やだやだあさいくんがいいー」
おねえちゃんじゃ、あさいくんをゆうわくできないじゃん。
「ま、まあまあまーちゃん、僕なら大丈夫だよ。立派に肩車の大役、務めてみせるよ!」
「……そんなに幼女を肩車したいの?」
「語弊がある言い方はやめてもらえるかなッ!?」
ごへいがあるってことは、よんへいとかさんへいもあるのかなー?
「……まあ、未央だから許すけど、くれぐれも幼女に目覚めないでねともくん」
「め、目覚めないよッ!!」
めざめちゃってもいいんだよ、あさいくん?
「わあい、たかいたかいーい」
「ちょっ!? 未央ちゃん、あんま暴れないでね!?」
きゃははははは、あさいくんのかたのうえたのしー。
あさいくんのつむじもおしちゃえー、ぽちー。
「未央ちゃん!? つむじを押すと下痢になっちゃうんだよ!? 押さないでね!?」
「ともくん意外とそういうの信じてるんだね」
みおしってるよ。
その「おすなよ、おすなよ」っていうのは、『おやくそく』ってやつだよね。
だからおしまーす、ぽちー。
「未央ちゃんッ!!」
きゃははははは、やっぱりあさいくんはおもしろいなー。
あっ。
「ぞうさんぞうさーん」
「えっ? あ、ああ、もう象のコーナーまで来たんだ。そうだね、象さん大きいね」
「ふふ、未央は象さん大好きだもんね」
きりんさんがすきです、でもぞうさんのほうがもっとすきです。
「ようこそ当最先端の動物園『雑食』へ」
「っ!? あ、あなたは!?」
ふえ?
だれだろうこのおねえさん?
「これは申し遅れました。わたくしは当園のガイドを務めております、
「は、はあ……」
「変な名前ですね」
「まーちゃん!? 失礼でしょ!? 初対面の方に!」
「いえいえ、お気になさらないでください。今適当に考えた名前ですから」
「ははーん、あなたさては変な人ですね!?」
きゃはは、きょうもあさいくんのつっこみはさえてるね。
「それでは当園のどこが最先端なのかをご説明いたします」
「この人も人の話を聞かないタイプだ! 僕の周りはこんな人ばっかりだッ!」
どんまいあさいくん。
あさいくんはそういうほしのもとにうまれたんだよ。
「何と言っても当園の一番の特徴は動物の捕獲方法です」
「捕獲方法?」
「――はい、実はここだけの話、当園の動物は全て、園長が素手で捕獲したものばかりなのです」
「「はあ!?」」
わーお。
すごいえんちょうさんなんだね。
「このアフリカ象も、遠路はるばるアフリカまで行き、園長がその屈強な腕で自ら取り押さえたのです」
「ちょっ、ちょっと待ってください! そんな話、にわかには信じられないんですけど!?」
「ええ、それもそのはずです」
「「は?」」
「今の話は嘘ですから」
「僕の10秒を返してくださいッ!」
なんだうそなのかー。
ほんとうだったらおもしろかったのにな。
「それでは当園を存分にお楽しみください。では私はこれで」
「ご機嫌ようッ! ……ハァ、何だったんだろうね、今の人」
「あはは、世の中にはいろんな人がいるね」
そうだね。
おとなだからって、みんながおとなじゃないんだね。
あっ。
「しろくまさんしろくまさーん」
「ん? シロクマ? ――ああ」
このさきでしろくまさんのえさやりをけんがくできるってかいてあるよ。
みお、しろくまさんもだいすきだよ。
しろくまさんのえさやりみたいよー。
「3時から餌やりだって書いてあるね。あ、ちょうどもうすぐ3時じゃん。見に行こうか?」
「うん! 私も未央も、シロクマ好きなんだー。うちのお母さん、昔素手でシロクマと戦ったこともあるんだよ」
「それは素直に信じられるよ! あのお母さんならさもありなんだよ!」
さもありなんってなにかなー?
さもはんきんぽーみたいなものかなー?
「じゃ、シロクマの餌やりにしゅっぱーつ!」
「うおっ!? まーちゃん、僕の上に未央ちゃんがいるんだからそんなに腕を引っ張らないで! おっぷぁいが! おっぷぁいがあたってるよッ!」
そんなこといってー。
ほんとはあさいくんもうれしいくせにー。
つむじぽちー。
「未央ちゃーーーん!!! ううっ! 僕の胃腸がギュルギュルいってる気がする! ラッパのマークの正〇丸! お客様の中に、ラッパのマークの正〇丸をお持ちの方はいらっしゃいませんかッ!?」
「大袈裟だなー、ともくんは」
おおげさだなー、あさいくんは。
「しろくまさんしろくまさーん」
「こらこら未央ちゃん、じっとしてなきゃダメだよ」
あさいくんにぎゅってされちゃった。
いまみおはいすにすわってるあさいくんにだっこされてるの。
あさいくんのひざのうえきもちいー。
「……ともくんが目覚めようとしている」
「し、してないってば!? ホ、ホントだよッ!?」
めざめちゃってもいいのにー。
そのときはみおがおむこさんにもらってあげるよ?
「で、でも、僕シロクマの餌やりって初めて見るけど、こんな地下の薄暗いとこでやるんだね」
「そうみたいだね。あの目の前のおっきな水槽の中に餌を投げて、それをシロクマが潜って食べるとこを私達が見るっていう趣向みたいだね」
はやくしろくまさんでてこないかなー。
あっ。
「ようこそみなさんこんにちは。当最先端の動物園『雑食』へ。わたくしは当園のガイドを務めております、楊張喰菜と申します」
「また出てきた!?」
さっきのおとなでこどもなひとだ。
「それでは只今からみなさんお待ちかねの、シロクマの餌やりショーをご覧いただきますが、その前に一つ、シロクマの豆知識をみなさんにお教えいたしましょう」
「また嫌な予感がする!?」
「――実はシロクマの体毛というのは、全身透明なのです」
「はい嘘ッ!」
「ううんともくん、今のは本当なんだよ」
「えっ!? そうなの!?」
そうだよ。
しろくまさんのけはひかりをとうかするから、ひかりがさんらんしてしろくかがやいてみえるんだよ。
みおはものしりなんだよ。
えっへん。
「――では、何故シロクマの体毛は全身透明になったのか。――それは紀元前にまで遡ります」
「「……おや?」」
おや?
「元々シロクマは普通の茶色い熊だったのですが、彼女いない歴イコール年齢だったその熊は思いました。――モテる熊になるためには、髪を脱色するしかない、と」
「「おやおや?」」
おやおや?
「しかしその際に、ケチって安物のブリーチ剤を使ってしまったがために、色が落ち過ぎて透明になってしまったというわけです」
「「はい嘘ッ!!」」
はいうそ。
「まあ、要は安物買いの銭失いには気を付けましょうという教訓ですね。――あっ! ではみなさん、わたくしはこれにて失礼いたします! よい動物園ライフを!」
「「っ?」」
っ?
「オイ待てッ! あんたまた勝手なことしてたのかッ! ……逃げられたか。え、えー、大変お騒がせいたしました。今の人は当園の職員ではございません」
「「なっ!?」」
なっ。
「たびたび注意をしてはいるのですが、何度言っても勝手にガイドの真似事みたいなことをするもので、当園といたしましても困っている次第でして……」
「「……」」
おとなだからって、みんながおとなじゃないんだね。
「で、では、気を取り直しまして、只今からシロクマの餌やりショーを始めさせていただきます! 前方の水槽にご注目ください!」
わーい、しろくまさんしろくまさー……、むにゃむにゃ。
はー、しろくまさんみたいけど……、あさいくんのふとももが、やわらきゃすぎて……。
「おっ! シロクマ出てきたよ未央ちゃ――あっ」
「あらあら、今日は一日ずっとはしゃいでたもんね」
くぴー、くぴー。
むにゃむにゃ。
あさいくんのおっぷぁいは……、やわらきゃくにゃい……。
「……ね? ともくん」
「え? 何?……ってまーちゃん!? ダ、ダメだよこんなとこで!?」
「……ん」
「……えぇ」
「ん!」
「う、うぅん……。ちょ、ちょっとだけだよ?」
「ん」
「…………。んっ」
「んふっ!」
「わーお」
「「っ!?!?」」
まったくあさいくんとおねえちゃんは、こんなとこでもちゅーしちゃうの?
おちおちねてられないよ。
「ガーオ!」
「「っ!?!?!?」」
ほら、しろくまさんもいわをぶつけようとしてるよ?