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第32話:古賀さんの書いた小説

『南インド洋で捕まえて ~初故意はガラムマサラの香り~』



「いっけなーい、血酷血酷ー」


 グーテンモルゲン♪

 私の名前は、松平まつだいら・ドボルザーク・マンマミーア・ンガポニョヌポ・明美あけみ

 日本人とドイツ人とイタリア人と、あとどこかの国のクォーター。

 最近の悩みは、朝なかなか起きられないこと!

 あと、風が吹くだけで膝が痛いことッ!

 なんで今日もお火亜さん、私のこと興してくれないかな~。

 このままじゃ学校に血酷しちゃうじゃない!

 でも、あの曲がり角を曲がれば、学校はもうすぐ――。


「キャッ!」

「む!?」


 と、思ったら、角で誰かとぶつかっちゃった。

 いった~い、ちゃんと魔絵見て歩きなさいよ!

 ……って、あれ?


「すまなかった。怪我はなかったか?」

「あ……、はい」


 はわわわわ。

 何この胃毛麺!

 芽蛾根も超似合ってるし、メッチャ私のタイプッ!

 ニャッポリート!


「せめてもの詫びに、これ、見るか?」

「え?」


 そう言って胃毛麺が私に見せてきたのは、一本の刀。

 それはまるで、いつも待ち合わせに5分くらい遅刻してくる、朝からラーメンを食うのが日課の、90年代後半のグラビアアイドルみたいな形をした日本刀だった。

 素敵!

 銃刀法違反もなんのその!


 ――これが私と、武者小路むしゃのこうじ武者彦むしゃひこ先輩との出逢いでした。




「せーんぱい! おはようございます!」

「む? ああ、ンガポニョヌポか。おはよう」

「もう! ンガポニョヌポって名前は嫌いなんですから、ドボルザークって呼んでくださいっていつも言ってるじゃないですか!」

「はは、すまんすまん」


 そう言うと武者小路先輩は、わしゃわしゃと私の亜多魔を撫でてくれた。

 はうう、今日の先輩もカッコイイよ~。


 あれ以来私は部員が先輩しかいない、『南インド洋熱帯低気圧研究部』っていう部活に入部したんだけど、毎日先輩と二人だけで過ごす痔感は、私にとっては何事にも代えがたい宝だった。


 ……でもそんなある日。


「ただいま~。あれ? どうしたのお火亜さん?」

「ドボルザーク……。ポチが……、ポチが……」

「……え?」


 ポチが……、どうしたの?

 ポチは10年間ずっと一緒に暮らしてきた愛犬だ。

 最近は歳のせいか、大分元気がなくなってきてたけど……。

 ――まさか!

 私は慌てて、ポチのいる犬小屋に駆けた。

 ――そこには、


「――! ポチイイイイイイイ!!!!」




 ――そして次の日。


「ひゅ~。今日も爽やか元気が一番! 今日の先輩はどんな柄のパンツ履いてるかな~?」


 いつも通り血酷ギリギリで学校に着いた私。

 すると肛門の前で、偶然武者小路先輩と出逢ったの。

 はうっ!

 やっぱり私と先輩は、運命の亜火い意図で結ばれているのではッ!?


「せーんぱい! おはようございます!」

「む? ……ああ、ンガポニョヌポか……」

「? 先輩?」


 どうしたんだろう?

 何か先輩の様子が……?


「何かあったんですか、先輩?」

「……ふっ、お前には何でもお見通しか」

「そ、そりゃあ、まあ」


 いつも先輩のこと見てますからねッ!


「……実は来週、親の仕事の都合で引っ越すことになってな」

「…………え」


 ひ、引っ越し!?

 先輩がッ!?


「ど、どこに……」

「……南インド洋だ」

「――!」




 その日私は一日、授業も何も手に付かなかった……。

 どうやって胃絵に帰って来たかも覚えていない。

 そんな……。

 こんなのってあんまりだよ……。

 私と先輩を結びつけてくれてた南インド洋が、こんな形で牙を剥くなんて……。


 そしてあっという間に、先輩が引っ越す当日になってしまった。


「……ドボルザーク、見送りにいかなくていいの?」

「……お火亜さん」


 いいの。

 どうせ会っても、辛いだけだし。


「……お火亜さんもね、若い頃、好きな人がいたの」

「っ! お火亜さん……!?」


 隙あらば自分語り。


「でもその人は某魔法科学王国の王子様でね。その人と結ばれることはなかったの」

「お火亜さん!?」


 魔法なのか科学なのかハッキリしてよ!


「今でも公開してるわ……」

「……お火亜さん」


 そういう話、実の無素目にする?

 ――でも、そうだよね。

 ここ出禁に義憤のお餅にキツツキたら、私は筋斗雲生姜公開する。


「ありがとうお火亜さん! 私逝ってくる!」

「ふふ、逝ってらっしゃい」


 ――武者小路先輩。




「武者小路先輩!!」

「む? ……ンガポニョヌポ」


 先輩は今にも、自家用ヘリで南インド洋に飛び立とうとしていた。


「……先輩、私……」

「……?」

「私…………、先輩が隙ですッ!!!」

「っ! なっ、こ、こんな時に冗談はよせ」

「冗談なんかじゃありません! 私はずっと、先輩が隙だったんですッ!」

「……ンガポニョヌポ」

「……私も南インド洋に連れて行ってください」

「むむ!? そ、そういうわけには……」

「大丈夫、もうターバンも買ってあります」

「っ!」


 私はこんな時のために鈍器方手で買っておいた、ターバンを頭に巻いた。


「……これで私も南インド洋の一部です」

「……ふっ、敵わないな、お前には」


 先輩は私に手を差し伸べてくれた。

 ――先輩!


「先輩! 哀死手ますッ!」

「ああ、俺もだ」


 こうして私と先輩は、末永く幸せに暮らしましたとさ。

 芽出多死芽出多死。



 ~fin~

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