『南インド洋で捕まえて ~初故意はガラムマサラの香り~』
「いっけなーい、血酷血酷ー」
グーテンモルゲン♪
私の名前は、
日本人とドイツ人とイタリア人と、あとどこかの国のクォーター。
最近の悩みは、朝なかなか起きられないこと!
あと、風が吹くだけで膝が痛いことッ!
なんで今日もお火亜さん、私のこと興してくれないかな~。
このままじゃ学校に血酷しちゃうじゃない!
でも、あの曲がり角を曲がれば、学校はもうすぐ――。
「キャッ!」
「む!?」
と、思ったら、角で誰かとぶつかっちゃった。
いった~い、ちゃんと魔絵見て歩きなさいよ!
……って、あれ?
「すまなかった。怪我はなかったか?」
「あ……、はい」
はわわわわ。
何この胃毛麺!
芽蛾根も超似合ってるし、メッチャ私のタイプッ!
ニャッポリート!
「せめてもの詫びに、これ、見るか?」
「え?」
そう言って胃毛麺が私に見せてきたのは、一本の刀。
それはまるで、いつも待ち合わせに5分くらい遅刻してくる、朝からラーメンを食うのが日課の、90年代後半のグラビアアイドルみたいな形をした日本刀だった。
素敵!
銃刀法違反もなんのその!
――これが私と、
「せーんぱい! おはようございます!」
「む? ああ、ンガポニョヌポか。おはよう」
「もう! ンガポニョヌポって名前は嫌いなんですから、ドボルザークって呼んでくださいっていつも言ってるじゃないですか!」
「はは、すまんすまん」
そう言うと武者小路先輩は、わしゃわしゃと私の亜多魔を撫でてくれた。
はうう、今日の先輩もカッコイイよ~。
あれ以来私は部員が先輩しかいない、『南インド洋熱帯低気圧研究部』っていう部活に入部したんだけど、毎日先輩と二人だけで過ごす痔感は、私にとっては何事にも代えがたい宝だった。
……でもそんなある日。
「ただいま~。あれ? どうしたのお火亜さん?」
「ドボルザーク……。ポチが……、ポチが……」
「……え?」
ポチが……、どうしたの?
ポチは10年間ずっと一緒に暮らしてきた愛犬だ。
最近は歳のせいか、大分元気がなくなってきてたけど……。
――まさか!
私は慌てて、ポチのいる犬小屋に駆けた。
――そこには、
「――! ポチイイイイイイイ!!!!」
――そして次の日。
「ひゅ~。今日も爽やか元気が一番! 今日の先輩はどんな柄のパンツ履いてるかな~?」
いつも通り血酷ギリギリで学校に着いた私。
すると肛門の前で、偶然武者小路先輩と出逢ったの。
はうっ!
やっぱり私と先輩は、運命の亜火い意図で結ばれているのではッ!?
「せーんぱい! おはようございます!」
「む? ……ああ、ンガポニョヌポか……」
「? 先輩?」
どうしたんだろう?
何か先輩の様子が……?
「何かあったんですか、先輩?」
「……ふっ、お前には何でもお見通しか」
「そ、そりゃあ、まあ」
いつも先輩のこと見てますからねッ!
「……実は来週、親の仕事の都合で引っ越すことになってな」
「…………え」
ひ、引っ越し!?
先輩がッ!?
「ど、どこに……」
「……南インド洋だ」
「――!」
その日私は一日、授業も何も手に付かなかった……。
どうやって胃絵に帰って来たかも覚えていない。
そんな……。
こんなのってあんまりだよ……。
私と先輩を結びつけてくれてた南インド洋が、こんな形で牙を剥くなんて……。
そしてあっという間に、先輩が引っ越す当日になってしまった。
「……ドボルザーク、見送りにいかなくていいの?」
「……お火亜さん」
いいの。
どうせ会っても、辛いだけだし。
「……お火亜さんもね、若い頃、好きな人がいたの」
「っ! お火亜さん……!?」
隙あらば自分語り。
「でもその人は某魔法科学王国の王子様でね。その人と結ばれることはなかったの」
「お火亜さん!?」
魔法なのか科学なのかハッキリしてよ!
「今でも公開してるわ……」
「……お火亜さん」
そういう話、実の無素目にする?
――でも、そうだよね。
ここ出禁に義憤のお餅にキツツキたら、私は筋斗雲生姜公開する。
「ありがとうお火亜さん! 私逝ってくる!」
「ふふ、逝ってらっしゃい」
――武者小路先輩。
「武者小路先輩!!」
「む? ……ンガポニョヌポ」
先輩は今にも、自家用ヘリで南インド洋に飛び立とうとしていた。
「……先輩、私……」
「……?」
「私…………、先輩が隙ですッ!!!」
「っ! なっ、こ、こんな時に冗談はよせ」
「冗談なんかじゃありません! 私はずっと、先輩が隙だったんですッ!」
「……ンガポニョヌポ」
「……私も南インド洋に連れて行ってください」
「むむ!? そ、そういうわけには……」
「大丈夫、もうターバンも買ってあります」
「っ!」
私はこんな時のために鈍器方手で買っておいた、ターバンを頭に巻いた。
「……これで私も南インド洋の一部です」
「……ふっ、敵わないな、お前には」
先輩は私に手を差し伸べてくれた。
――先輩!
「先輩! 哀死手ますッ!」
「ああ、俺もだ」
こうして私と先輩は、末永く幸せに暮らしましたとさ。
芽出多死芽出多死。
~fin~