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第35話:体育祭③

「ヒャハハハハハハハ。われが参戦しヒャからには、ヒャく人力ヒャぞ息子達よ!」

「「「ヒャッハー! パパヒャッこいいー!」」」


 っ!?!?

 そこにはヒャッハー三兄弟が作る騎馬の上に乗ったヒャハパパが、いつもの高笑いを浮かべていた。

 な、なんでヒャハパパが参加しようとしてるんだ!?


「フッ、これも余興の一つだよ智哉。騎馬戦に限っては、保護者の参加も自由なのさ」

「マジかよ!?」


 保護者参加型の騎馬戦なんて、聞いたことないぞ!?


「ヒャハッ! 可愛い息子達のヒャめに、アタシもひとヒャだ脱ごうかねえ!」

「なっ!?」


 その隣には、ヒャハママも立っていた。

 ヒャハママは騎馬の先頭を担当している。

 ヒャハママまで!?


「うぇーーーい!!! 智哉ー! 今日こそお前に、兄よりすぐれた弟なぞ存在しねえってことを教えてやるからな!」

「兄貴!?!?」


 しかもヒャハママと同じ騎馬の向かって右側は、あろうことか兄貴が担当していた。

 いやいやいやいや、ヒャハママが白組なのはヒャッ歩譲ってまだいいとしても、何で兄貴まで白組そっちに参加してんだよ!?(まあ、紅組に来てほしくもないけど……)


「フッ、だから言ったろう? だと」

「どっちに参加するかも自由なんですか!?」


 そんなのアリ!?


「美穂ー! 今日こそお父さんが、そのどこの馬の骨ともわかんないやつをブッ倒して、美穂の目を覚まさせてやるからなー!」

「お父さん!?」

「なっ!? なんで美穂のお父さんまで!?」


 ほあっ!?

 篠崎さんのお父さんも白組に!?(ヒャハママと同じ騎馬の向かって左側を担当している)

 そんなに勇斗が憎いのか……。

 子煩悩なお父さん、恐るべし……。


「フフフ、差し詰め地上最強の親子喧嘩ってところかね、茉央」

「っ!! ……お母さん」


 ニャッポリート!?!?

 そ、そんなバカな……。

 ヒャハママの騎馬の上に乗っていたのは、まさかまさかの、其の人であった。

 あ、ああ……、これはマズい……。

 本格的にマズい展開だぞこれは。

 正直こっちにはまーちゃんがいるから、まーちゃんに無双してもらえれば勝てんじゃね? と高を括っていたのに、範馬勇〇郎があっちに参戦したとなれば、話は180度変わってくる。

 むしろ無理ゲーじゃね、これ?


「……大丈夫だよ、ともくん」

「っ! まーちゃん」


 が、まーちゃんは額に冷や汗を浮かべながらも、お母さんのことをシッカリと見据えていたのだった。


「たとえお母さんが相手だろうと、私は負けないよ。――ともくんが側にいてくれるならね」

「……まーちゃん」


 今日も僕の彼女は、世界一カッコイイぜ。

 そうだよな。

 やる前から勝てないと諦めてたら、勝てる勝負も勝てないよな。


「そうだね、一緒に頑張ろうまーちゃん。僕もまーちゃんとなら、誰にも負ける気はしないよ」

「ふふ、ともくん大好き」

「……僕もだよ」


 微居君のほうからゴトッという音がしたのは、言うまでもない。




「いいかお前達ッ! ここが天王山だ! 全身の骨が砕けても構わんッ!! 必ずや大将騎を落とし、勝ち鬨をあげるのだッ!!!」

「「「おーーー!!!!」」」


 相変わらず皆川先輩は、薩摩隼人並みの捨てがまり精神でみんなを熱く鼓舞している。

 とはいえ、全身の骨が砕けてもとか、若干熱すぎる気はするけど……。

 やっぱあれくらい何事にも本気で挑む気概がないと、プロの小説家にはなれないんだろうな。

 皆川先輩を騎馬の一人として支えている古賀さんも、例によってウットリしながら皆川先輩を見上げている。

 むしろ、たまに先輩のふとももに頬擦りしてる?

 先輩は先輩で、小声で「ここからじゃ古賀の耳の裏の匂いが嗅ぎづらいな……」って言ってるし……。

 ……お似合いのカップルだよ、あんたら。


「……なんで俺がリア充の騎馬をやらなきゃいけないんだ」

「文句言うなよ微居。決まったことなんだから、自分の役割は果たせよ」

「……いざとなったら、岩を使ってもいいよな?」

「いいわけねえだろ!?」


 大丈夫かな、あそこの騎馬?

 まさかドリア充の皆川古賀カップルと、絵井微居コンビが同じ騎馬とは……。

 騎馬の先頭が微居君。

 向かって右側が絵井君。

 左側が古賀さん。

 そして騎馬に乗るのが皆川先輩という編成だ。

 お世辞にも相性が良いとは思えないけど……。


「よーし、頼むね三人共。今だけは私に、みんなの命を預けて」

「うん、もちろんだよ茉央ちゃん」

「その代わりビシッと決めてくれよ、足立」

「……まーちゃん、でも、無理だけはしないでね」

「ふふ、大丈夫だよ、ともくん」


 僕達四人は、もちろん同じ騎馬だ。

 騎馬の先頭が勇斗。

 向かって右側が篠崎さん。

 左側が僕。

 そして騎馬に乗るのは、当然まーちゃんだ。

 因みに僕達の騎馬は大将騎でもある。

 今回は俗に言う川中島方式ルールで、先に大将騎のハチマキを取るか、大将騎を崩すかしたチームの勝利となる。

 ……もちろん白組の大将騎はまーちゃんのお母さんの騎馬だ。

 つまり、僕達紅組が勝利するためには、範馬勇〇郎を倒す以外に道はないということになる……。

 改めて目の前に立ちはだかる壁の高さに心が折れそうになるが、僕達にはまーちゃんがいるんだ。

 まーちゃんならきっと、お母さんにだって勝ってくれる。

 だから僕に出来るのは、まーちゃんのサポートに徹することだけだ。

 モブはモブらしく、全力で主役を引き立ててみせる!!


「いくぞ者共!! 突撃ーーー!!!!」

「ヒャッハー!! お前達、ヒャッちまえーーー!!!!」


 両軍の団長の掛け声と共に、決戦の火蓋がここに切られた。




「ヒャハハハハハハハ。退かぬ! 媚びぬ! 省みぬ!」

「「「っ!!」」」


 が、開幕早々百派山一家が、単騎でこちらの陣に突貫してきた。

 うえっ!?

 確かにやつらは大将騎ではないから落とされても支障はないとはいえ、いくら何でも単騎で突貫は無謀では!?


「ヒャハハハハハハハ。痛ッ! ヒャハハハハハハハ。痛ッ!」

「「「っ!?」」」


 しかも何やらパパは痛がっている。

 何事かとよく見れば、息子達の肩パッドのトゲトゲが、動くたびにパパのももやお尻にチクチクと刺さっているのだった。

 いや外してこいやッ!!!!

 ただのバカなんじゃないかこいつら!?!?


「ヒャハハハハハハハ。ヒャーッハッハッハッハッ!!」

「「「っ!!!」」」


 が、次の瞬間僕の目には、信じられない光景が写った。

 高笑いを浮かべているパパの両手には、数え切れない程の紅いハチマキが握られていたのだ。

 なっ!?

 い、いつの間にあんなに!?


「ヒャハハハハハハハ。これぞ百派山家奥義、『チクチクミスディレクション』!」

「「「ヒャッハー! 流石パパー!」」」


 チクチクミスディレクション!?!?

 つまり何か!?

 パパがトゲトゲのチクチクで痛がってたのは、僕らを油断させるための囮だったっていうのか!?

 その隙にハチマキを奪ったと……!?

 ……何て恐ろしい技なんだ。

 あんなの、流石のまーちゃんでさえ、気になって仕方ないはずだ。


「ヒャハハハハハハハ。次はお主ヒャ、小娘よ。装獣戯画ビーストアートの時の借りを返させてもヒャうぞ」

「くっ!」


 案の定まーちゃんも、チクチクミスディレクションの脅威を本能で感じ取っているのか、珍しく緊張しているのが肌を通して伝わってくる。


「終わりヒャー! 痛ッ! ヒャハハハハハハハ。痛ッ!」

「――!!」


 百派山一家がこちらに突っ込んできた。

 だが、まーちゃんの目線はパパのももとお尻に釘付けだ。

 ――まーちゃん!


「何をやっている足立ーーー!!!!」

「っ!?」


 その時だった。

 皆川先輩の騎馬が、横合いから百派山一家にぶつかってきた。

 せ、先輩!?


「こんなものに惑わされるな!! ここは俺に任せて、お前は母親と決着をつけろ!!」

「せ、先輩……」

「ヒャハハハハハハハ。こヒャくなー!」


 皆川先輩とパパは、がっぷり四つで組み合った。

 おお!

 でも、確かにあそこまで密着すれば、チクチクミスディレクションに惑わされずに済む!

 頼りになるぜ団長!


「……まったく、なんで俺がこんな暑苦しいことを」

「そう言うなよ微居。お前も本当は、ちょっとテンション上がってるんだろ? 俺にはわかるぞ」

「……うるさいぞ絵井」

「ヒャッハー! その勇気だけは褒めてヒャるがな。勇気と無謀は違うんヒャぜえ!」


 下の騎馬は、騎馬同士で鍔迫り合いを繰り広げている。

 どうやら実力は拮抗しているらしい。


「……すいません皆川先輩、ここはお任せします」

「ふっ、気にするな足立。だが、これで貸し借りはなしだからな」

「はい」


 貸し借り?

 ああ、まーちゃんが先輩と古賀さんのキューピットになってあげたことかな?

 見た目通り、義理堅い人だな、皆川先輩って(変態だけど)。


「よしみんな、目指すは敵の大将騎。私のお母さんのところだよ!」

「「「オウ!」」」


 フウ、これは早くもクライマックスだな。




「おりゃあああ! おりゃりゃりゃああああ!」

「うわっ!?」

「ひょえっ!?」

「ニャッポリート!?」


 お母さんのところに向かいつつも、まーちゃんは目にも止まらぬ速さで敵のハチマキを奪っていく。

 やっぱ常人じゃ、まーちゃんとは天と地程力の差があるらしい。

 見る見るうちに敵の数が減っていく。

 よし、これでお母さんのところに着いた頃には、大分こちらが数で圧倒しているはずだ。

 そうなれば、数の利でこちらが有利に戦況を進められるかもしれない。


「あ、みんな! あそこにいるよ、お母さん!」

「「「!」」」


 まーちゃんが指差したほうを見ると、確かにそこにはまーちゃんのお母さんの騎馬が仁王立ちしていた。

 よし、ラスボス戦だ!


「……あ、あれ」

「フフフ、遅かったじゃないか、茉央」

「「「!?」」」


 が、そこで僕達は異変に気付いた。

 いつの間にか、辺り一面には、紅組の騎馬が一騎もいなくなっていたのだ。

 ニャッポリート!?

 何があったんだ!?


「茉央が来るのが遅いから、アタシが他の騎馬は全滅させちまったよ」

「「「!!」」」


 そんなバカな!?

 まだ始まって五分も経ってないんだぞ!?

 だが、お母さんの手に握られている夥しい数のハチマキを見て、僕らは現実を受け入れざるを得なかった。

 バ、バケモノだ……。

 やっぱりこんな人に、勝てるわけなかったんだ……。

 いくらまーちゃんでも、これは……。


「フフ、さあ茉央、決着をつけようか!」


 お母さんは手に持っていた無数のハチマキを、天高く放り投げた。


「……ともくん、お願いがあるの」

「えっ!?」


 な、何だい急にまーちゃん?

 まーちゃんの頼みなら、僕に出来ることなら何でもするけど。


「私のふとももに、頬擦りしてほしいの」

「はあ!?」


 まーちゃん!?!?

 こんな時に何の冗談を!?


「……お願いともくん。私にともくんの力を分けて」

「! ……まーちゃん」


 まーちゃんの膝は震えていた。

 ……そうだよな。

 まーちゃんにとってお母さんは、決して超えられない、そびえ立つ霊山のような存在だ。

 口では強がっていても、内心は怖くて仕方ないはずなんだ。


「智哉」

「浅井君」

「!」


 勇斗と篠崎さんも、「頼むぞ」と言わんばかりの顔で僕を見つめている。

 ……ああ、任せてくれよ。


「――よし、いくよ、まーちゃん!」

「う、うんっ」

「はあああああああああああ」

「んふぅッ」


 僕は全身全霊を込めて、まーちゃんのすべすべなふとももに頬擦りをした。

 僕の頬がまーちゃんのふとももに擦れるたび、まーちゃんの体温が上昇していくのが頬越しに伝わってくる。


「うおおおおおおおおおおおお!!! いくよ、お母さんッ!!」

「フフッ、来な! 愛する娘よ!」


 僕達は、乾坤一擲の突撃を仕掛けた。


「おりゃりゃりゃああああッ!!!」

「フハハハハハハハハハッ!」


 まーちゃんとお母さんは、ドラゴ〇ボール並みの超スピードで、激しい攻防を繰り広げている。

 凄い……、とても人間同士の戦いとは思えない。

 でも、それでも若干まーちゃんが押されている……?

 やはり元々の実力の差は、そう簡単には埋まらないか……!


「ハハハハ! どうしたんだい茉央! 浅井君にドーピングしてもらったのに、その程度なのかい?」

「くっ! うううぅ……」

「ヒャハッ! そのままヒャハッちまいなぁ!!」

「もう少しです足立さん! もう少しで、美穂は私のところに帰ってきてくれるッ!」

「うぇーーーい!!! 残念だったな智哉ぁ! 今回は俺の勝ちだぜぇ!」


 このクソ兄貴!!

 お前は何の役にも立ってないだろうが!

 ……ん?

 待てよ。

 ……よし、ここは一か八か。


「あっ! 兄貴、あんなところに猫耳巨乳メイドが!」

「ぬわんだってえええええええ!!!!?!!??」

「「「っ!!」」」


 物の見事に兄貴バカは単純な手に引っ掛かり、体勢を大きく崩した。

 こんなところに猫耳巨乳メイドがいるわけないだろ。

 ホント兄貴は昔から、猫耳巨乳メイドに目がないんだから。

 土台となる騎馬がバランスを崩したことで、上に乗っているお母さんにも一瞬だけ隙が生じた。

 よしっ!


「まーちゃん、今だよ!」

「ありがと、ともくん! 愛してるッ!」


 そういうのは後にしてね!(照)


「チィ!」

「お母さん、覚悟ぉ!!」


 まーちゃんはお母さんのハチマキに向かって右腕を伸ばした。

 やったか!?


「……フフ、なーんちゃってね」

「なっ!?」


 ぬあっ!?

 が、お母さんは上半身だけを向かって左側にタコみたいにぐにゃりと曲げ、まーちゃんの攻撃を躱したのであった。

 本当に人間ですかあなたは!?


「残念だったねえ、茉央!」

「くぅっ!」


 そして今度はお母さんがカウンターで左腕をまーちゃんのハチマキに伸ばす。

 嗚呼!

 ――まーちゃん!


「あさいくんあさいくーん」

「「「!!!」」」


 こ、この声は!?!?

 咄嗟に声のした方に顔を向けると、何と未央ちゃんが一人で競技場に侵入しようとしていたのだった。

 あ、危ないよ未央ちゃんッ!!


「未央ッ!」


 あまりの事態に、お母さんにも動揺の色が走った。


「隙ありいいいい!!!」

「くっ!」


 そしてそれを見逃すまーちゃんではなかった。

 まーちゃんは今度は左腕を、お母さんのハチマキに向かって真っ直ぐ突き出した。


「うおおおおおおおお!!!!」

「くああああああああ!!!!」


 母子の腕が、宙でクロスする。

 ――まーちゃん!!


 ――そして。


「……フ、フフフ、なかなか楽しかったよ、茉央」

「「「――!」」」


 無情にも、お母さんの左腕には、まーちゃんの紅いハチマキが握られていた。

 あ、ああ……、ダメだったか……。


「まさかこのアタシがるとはね」

「「「っ!!」」」


 何!?

 ……あ。

 よく見れば、お母さんの頭からは、ハチマキが消えていた。


「いや、今のは未央が乱入してこなきゃ、私の負けだったよ。……まだまだお母さんには適わないな」

「フフフ、言うようになったね」


 まーちゃんッ!!!

 ふと見上げると、まーちゃんの左腕にも、お母さんの白いハチマキが、シッカリと握られていたのであった。

 うおおおおおおおお!!!!

 まーちゃあああああああああん!!!!!!

 引き分けということは、点数で僅かにリードしていた、紅組僕達の優勝だああああ!!!!


「茉央ちゃん、やったね!!!」

「足立、お前ならやってくれると思ってたぜ!!」

「……まーちゃん、お疲れ様」

「えへへ、ありがと、みんな」


 騎馬から下したまーちゃんを、僕達は心から労った。


「ヒャハッ! また負けちヒャッたか。でも次こそはこの百派山百派子ひゃはこが勝たせてもヒャうよ」


 あんた百派子って名前なの!?

 旦那は百派夫だし、もうあんたら運命のカップルだよッ!


「HEEEEYYYY。あァァァんまりだァァアァ」

「兄貴……」


 まあ、確かに兄貴にはちょっとだけ悪いことしたかなと思ってるけど、騙されるほうも騙されるほうだと思うよ……。


「……フン、父さんはまだこいつを美穂の彼氏と認めたわけじゃないからな」

「お父さん……」

「お父さん、でも俺は――」

「だが」

「「――!」」

「多少は。た・しょ・う・は、……骨があるようだな」

「お、お父さん!」

「あ……ありがとうございます、お父さん!」

「だから貴様にお父さんと呼ばれる筋合いはないと言ったろうがッ!」


 やれやれ、この家族も、ほんの少しだけは前進したかな?


「あさいくんあさいくーん」

「うおっ!?」


 未央ちゃんが僕の足に抱きついてきて、いつも通り無表情で足に頬擦りをしてきた。

 今度は僕が頬擦りされる側になるとは……。


「未央ちゃん、危ないから競技中は入ってきちゃダメだよ」


 僕は未央ちゃんの頭を撫でながら注意した。


「えへへー、でもみおのおかげでかてたでしょ?」

「――!」


 ま、まさか!?

 この子は、僕達を勝たせるためにワザと……!?

 ……何て末恐ろしい子なんだ。

 あれ?

 そういえば、何かを忘れてるような……?

 ――あ! そうだ!

 皆川先輩だ!

 あの後、ヒャハパパとの戦いはどうなったんだ!


「ああ! あれ見て、ともくん!」

「え?」


 まーちゃんにいつものように腕を引っ張られ(ついでにおっぷぁいも押し当てられ)、言われたほうを見ると、何故かそこには犬〇家の一族のスケ〇ヨみたいに、逆さで上半身だけが地面に埋まっている、皆川先輩とヒャハパパの姿があった。

 ニャッポリート!?!?

 何がどうしてどうなったら、こういう状況が生まれるの!?


「「「パパー! ヒャい丈夫!? パパァー!!」」」

「皆川先輩! 今私が、先輩のこと助け出してあげますからね!」

「……アホクサ。俺は帰るぞ」

「オイ微居! 勝手に帰るなよ!」


 何だかよくわからなかったけど、とにかく滅茶苦茶な体育祭だったな……(てか体育祭か、これ?)。




「フッ、ではこれより閉会式を執り行う! 先ずは校歌斉唱、二番!」

「「「駅前の~ 三叉路を~ 右に曲がって~

しばらく進んだ先にある~ 犬がうるさい山田さん家の~

角を左に曲がって~ 道なりに進むと~

見えてくる青い屋根の平屋が~ 校長の家~

嗚呼~ 我らの~

肘川北高校~」」」


 ……。

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