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第50話:古賀さんの書いた小説②

「ともくん、『ニャポニャポニャッポゲーム』しない?」

「ニャポニャポニャッポゲーム!? 何それ!?」

「たけのこニョッキみたいなもんで、『1ニャッポ』『2ニャッポ』って手を挙げていくゲームだよ」

「でも、僕とまーちゃん二人だけだと、すぐ終わっちゃうよ?」

「じゃあ今回は特別ルールで、『2ニャッポ』までいったら、二人で『ニャッポッポ』って言って猫のポーズをとることにしよ」

「えぇ……、面白いの、それ?」

「いいからやってみよ? いくよ、ニャポニャポ、ニャポニャポ、ニャッポッポ! ――1ニャッポ!」

「に、2ニャッポ!」

「「ニャッポッポ!」」

「うるさいぞお前達ッ!!!」

「「っ!」」


 何なんだいつもまったく!

 ――今日も今日とて足立と浅井は文芸部の部室で性懲りもなくキャッキャウフフしている。

 これではおいそれと古賀の耳の裏の匂いが嗅げないではないか。


「あ、あの、皆川先輩」

「む? 何だ、古賀」


 ……嗚呼、古賀。

 マイスイートハニートースト古賀。

 今日も何てカッワイイんだ。

 是非脱ぎたての靴下の匂いを嗅ぎたい。


「わ、私、、小説書いたんです! なので、批評、よろしくお願っしゃっしゃっすッ!!」

「よろしくお願っしゃっしゃっすッ!?」


 それに、先日の経験だと!?

 それって、あのか!?

 バカかお前は!!

 確かにあの時、「この経験を元に小説を書く」的なことは言っていたが、本当に書くやつがあるか!?

 普津沢さんからも厳重に口止めされただろう!!

 せっかく俺達以外の生徒には、『偶然みんな同時に居眠りしてしまった』ということで、誤魔化したというのに!(本当にそれで誤魔化せているのかは、甚だ疑問だが……)


「よ、読んではもらえませんか?」

「む!?」


 古賀は捨てられた子犬みたいな眼で、俺を見上げてくる。

 カッワイイーーーーーーー!!!!!!!!

 うちで飼いたいーーーーーーー!!!!!!!!

 ブラッシングして抜けた毛の匂いを嗅ぎたいッ!!

 ――ハッ! イカンイカン。

 またトリッパーズギターしていた。

 ま、まあ、この小説を世に出すわけではないのだし、俺が読むだけなら問題はないか。


「わかった、拝見しよう」

「オナシャス!」


 さてと、いつもあれだけ厳しく言っているんだ。

 流石に今回は大丈夫だろう。

 どれどれ――。







『南インド洋で捕まえて 第二章 ~故意に故意してマンゴーラッシー~』



「いっけなーい、血酷血酷ー」


 グーテンモルゲン♪

 私の名前は、松平まつだいら・ドボルザーク・マンマミーア・ンガポニョヌポ・明美あけみ

 日本人とドイツ人とイタリア人と、あとどこかの国のクォーター。

 気軽にドボルザークって呼んでね!

 遂に憧れだった武者小路むしゃのこうじ武者彦むしゃひこ先輩と故意人同士になった私ッ!

 今は先輩と同棲しながら南インド洋の学校に通ってるんだけど、先輩ったら自分だけ先に投降しちゃってからに!

 私のことも興してよッ!

 でも、あの曲がり角を曲がれば、ガンジス北高校(通称ガン北)はもうすぐ――。


「キャッ!」

「おや?」


 と、思ったら、角で誰かとぶつかっちゃった。

 いった~い、ちゃんと魔絵見て歩きなさいよ!

 ……って、あれ?


「ふふふ、これはこれは、可憐なレディだ」

「――!」


 そこには滅茶苦茶胃毛麺だけど、全裸で股間の部分だけが羊の毛でモコモコしている編隊が立っていた。

 その腹筋はまるで、どすこい浪人生がばいんばいんぶるるん祭りの参加賞で貰った、ラリルレローションみたいに六つに割れていたのである。

 あ、朝から高カロリーなもん見ちゃったーーー!!!!


「ふふふ、僕の名前はアッーリス・ユーゴー。またの名を、伝説の宇宙下位族グッドルッキングファビュラスハーレムシープと呼ばれているよ」

「で、伝説の宇宙下位族!?」


 何よそれ!?

 そんなの嘘でもホントでも、どっちにしろただのイタいやつじゃないッ!


「君は実に可愛いね。よし決めた、君は僕の夜目にするよ」

「夜目!?」


 そんなのお断りよ!!

 私には武者小路先輩という、心に決めた人がいるんだから!


「ん?」


 その時だった。

 私の蚊蛮の中の、ポケベルがブルブルと震え出した。

 誰よこんな時に!

 見ればそこには私の実家の電話番号が表示されていた。

 お、お火亜さん!?

 何かあったのかしら……。

 私は慌てて、近くにあった口臭電話で実家に電話をかけた。


「藻死藻死お火亜さん!? どうしたの!?」

『ドボルザーク……。今度こそ……、今度こそポチが……』

「!!」


 まさか、そんな……!?

 嘘……。

 嘘だって言ってよ……!


「ポチイイイイイイイ!!!!」




 ――そして次の日。


「ひゅ~。今日も爽やか元気が一番! 今日の先輩のパンツはブリーフかな? ボクサーパンツかな?」


 いつも通り血酷ギリギリでガン北に着いた私。

 すると肛門の前に、見覚えのある編隊が……。


「ヘーーーイ、レディ! 昨日はよくもこの僕をガン無視してくれたねッ!」

「あ、あなたは昨日の!?」


 イタい人!!

 もしかして一晩中ここで私を待ってたの?

 イタい上に火魔人だわこの人ッ!!


「もう興ったよ!! 今すぐ僕と一緒に来てもらう!!」

「い、嫌ッ! 放してよッ!」


 ……助けて。

 助けて武者小路先輩――!


「何をやっとるか貴様アアアアアアアアアアア!!!!!」

「「っ!!」」


 その時だった。

 武者小路先輩が、時速5億キロの速度で走ってきて、イタい人に猪木ビンタを喰らわせた。


「ごべらっぱー!!!」


 その一発で、イタい人は5000兆光年先の宇宙の果てまでふっ飛ばされてしまったのでしたとさ。


「せ、先輩ッ!」

「大丈夫か、ンガポニョヌポッ!!」

「は、はい、でも、故輪かったです……!」

「ンガポニョヌポ……!」


 先輩は南インド洋の如く広い胸で、私を抱きしめてくれた。

 先輩揉み揉みツンツンてろてろ、トーテム土器土器、ワフワフヒャッハー。


「――ンガポニョヌポ、血痕しよう」

「――! 先輩……」


 嬉しい……。

 私もずっと、先輩の汚夜目さんになりたいと思ってました――。


「先輩! 哀死手ますッ!」

「ああ、俺もだ」


 こうして私と先輩は、計11人の子宝に恵まれて、末永く幸せに暮らしましたとさ。

 芽出多死芽出多死。



 ~fin~







 まさかの続編!?!?!?

 続編で来ると予想できた者が果たしていただろうか!? いや、いない(反語)。

 しかも――。


「何なんだ毎回のこの愛犬が死ぬくだりは!? お前これ絶対入れるが、その割にストーリーにまったく影響がないじゃないか!」

「そ、それは……」


 古賀はあからさまにオドオドしている。

 むうううう!!!?

 オドオドした古賀もカッワイイ!!!!!!!

 バスタオルの匂いを嗅ぎたいッ!

 ……い、いや、ダメだダメだ!

 古賀のためにも、厳しく!

 厳しくしなくてはッ!!


「あと相変わらず誤字が多い。多分ここは本来なら、『先輩の胸に包まれていると、とてもドキドキして、私は心臓が張り裂けそうだった』としたかったんだろうが、『先輩揉み揉みツンツンてろてろ、トーテム土器土器、ワフワフヒャッハー』になってるじゃないか! 痴女か!? 痴女なのかこの主人公はッ!?」

「あああッ!」


 いや、これは元の文章がわかったの奇跡だろ!?

 俺凄いな!?


「そして今回の比喩は過去最高に酷い。何だこの、『その腹筋はまるで、どすこい浪人生がばいんばいんぶるるん祭りの参加賞で貰った、ラリルレローションみたいに六つに割れていたのである』ってのは? お前、比喩に造語を使うようになったら作家としてお終いだぞ!?」

「う、うぅ……」


 古賀は今にも泣き出しそうだ。

 嗚呼ッ!

 泣かないでくれ古賀!!

 泣くならせめて、後で匂いを嗅ぐために、その目元に浮かんだ涙を俺がティッシュで拭いてからにしてくれッ!


「せ・ん・ぱ・い」

「っ! 足立……」


 足立が、明らかに怒気を含んだ笑顔を俺に向けてきた。

 ……い、言われなくともわかってる!


「……古賀」

「はっ、はひ!?」


 古賀はプルプルと震えながら、潤んだ瞳で俺を見つめてくる。

 今すぐ結婚したいッ!!!

 そして毎朝、古賀が使用した歯ブラシの匂いを嗅ぎたいッ!!!!

 ……い、いやいやいや、今は違うだろう、俺!


「……まあ、その、何だ……。しゅ、主人公のキャラだけは……、なかなか個性的でよく書けていると思うぞ」

「――! せ、せんぱ~い」

「むッ!?」


 例によって古賀はおでこを俺の胸にぐりぐりと押し付けてきた。

 むおおおおおおおおお!!!!!!!!

 足立と浅井さえいなければ、耳の裏の匂いが嗅ぎ放題なのにいいいいッ!!!!!!!!!


「まーちゃん、今度は僕からいくよ。ニャポニャポ、ニャポニャポ、ニャッポッポ! ――1ニャッポ!」

「2ニャッポ!」

「「ニャッポッポ!」」

「帰れッッ!!!!」

「「っ!!」」


 二度と部室に来るな!!!!

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