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第55話:修学旅行 in タイ①

「海だああああああヒャッホー!!!」

「明確なデジャブ!!」


 そう、この光景は僕とまーちゃんが付き合い始める前、四人で海に行った時と同じ!(最早遠い過去のよう)

 ……それにしても、まさか修学旅行先がとは。


 今僕達は、タイのプーケットに来ているのだった。


 いくら肘北のバックにIGAがついているとはいえ、修学旅行先が海外で、しかもタイというのはなかなか斬新だ(白目)。

 まあ、今更このくらいのことで驚いていては、肘北生は名乗れないが(苦笑い)。

 でも、流石世界有数のリゾート地だけあって、プーケットの海は溜め息が出る程綺麗だな。

 やっぱ日本の海と比べると、透明度が段違いだ。

 誰のかわからないけど、水上バイクが普通に乗り捨ててあるところとかも、自由の楽園って感じがする。

 しかもすっかり冬の色が濃くなってきた日本と違って、タイは文字通りの常夏。

 当然僕達も水着で海に来ている。

 こんなの、日本の海だったら凍死案件だろうな……。


「はー、やっぱ海はテンション上がるね、ともくん!」

「う、うん、そうだね」


 それよりも僕は、まーちゃんの格好が気になってしょうがないんだけどね。

 まーちゃんの水着は何と、いつぞや未央ちゃんと三人でプールに行った時に着ていたスリングショットなのだ……!

 いくら水着は各自自由と言われていたとはいえ、修学旅行先でスリングショットは如何なものかと僕は思うよまーちゃん!?

 ……まあ、かく言う僕も、同じくプールに行った時にまーちゃんと未央ちゃんからプレゼントされたブーメランパンツを無理矢理穿かされているので、人のことは言えないけど。


「茉央ちゃん、あんまりはしゃぎすぎて、怪我しないでね?」

「そうだぞ足立、海に入る前は、しっかり準備運動しておくんだぞ」


 相変わらず篠崎さんと勇斗は、まーちゃんのお母さんとお父さんみたいだな。

 流石熟年夫婦!

 因みに篠崎さんの水着は、パレオのついたエスニック柄のビキニだ。

 プーケットの海に非常にマッチしていて、このままパンフレットとかにできそうなくらい可愛らしい。

 勇斗もさっきから日本まで届きそうなくらい鼻の下を伸ばしている。


 対する勇斗は、いつの間に買っていたのか、僕とまったく同じデザインのブーメランパンツを穿いていた。

 これには正直僕もちょっとだけ引いた……。

 これがもしぶるうちいず先生の差し金だったとしたら最早狂気すら感じるし、仮に勇斗が自ら僕と同デザインのブーメランをチョイスしたのだとしたら、ぶるうちいず目線でなかったとしても、勇斗にいろいろ疑惑が湧いてしまう……。

 まあ、ブーメランが全然似合っていない貧相な身体の僕と違って、全身肉体美な勇斗にはバリバリ「ベストマッチ!(再びの小林○也)」してるので、文句も言えないけど……。


「フッ、どれどれ、智哉のブーメランを、試しにブーメランさせてもらおうじゃないか」

「どゆこと!? ――って、梅先生!?!?」


 僕は変公の格好を見て度肝を抜かれた。

 何と変公はハロウィンの時とまったく同じ、金太郎スタイルで砂浜を闊歩していたのだ。

 日本の恥ッ!!!!

 それがタイの人に日本のスタンダードだと思われたらどうすんだ!?!?

 そしてマジでそれ、背中側はどうなってんの!?!?

 とても怖くて後ろを覗く気にはなれないけど……。


「うふふ、智哉くんのブーメランからは、イイ出汁が取れそうだわあ」

「料理の人!? ――って、優子!?!?」


 優子も優子だった。

 優子もハロウィンの時同様、羊モードになっていた。

 いやそれ、確かに一見水着着てるみたいに見えるけど、羊毛だからメッチャ水吸わない?

 みんな自由の意味を履き違えてんじゃない!?

 自由ってのは、何でもアリって意味じゃないんだよッ!?(哲学)


「うふふ、せっかくみんなで浜辺に来てるんだし、ビーチバレーでもしない?」

「え」


 優子はすぐ近くにあるビーチバレー用のコートを指差した。

 そうそう、前に四人で海に行った時も、ビーチバレーやったっけな(懐古厨)。

 でも……。


「いや、無茶言うなよ優子。そんなの優子がいるチームが勝つに決まってるじゃん」


 一人だけ人外の身体能力を持ってるんだからさ。

 優子の打ったボールなんか喰らったら、骨折れちゃうよ。


「あら、もちろん手加減はするわよ」

「それにしたって……」

「フッ、ではこうしよう」

「う、梅先生!?」


 変公は胸の谷間から、空気の入ったスイカ柄のビーチボールを取り出した。

 スイカからスイカが!?!?

 だからお前の谷間はどんな構造なの!?!?

 気になることが多いなあ、変公はッ!!!(倒置法)


ビーチボールこれなら怪我をすることもあるまい。そして、ビーチボールこれを破裂させてしまったら相手チームのポイントということにすれば、より盤石だ」

「ああ」


 そういうことなら、まあ、大丈夫かな?


「うふふ、私はそれで構わないわよ。じゃあ、早速始めましょう」

「ふっふーん、吠え面かかせてやるからね! 覚悟しなさいよッ!」

「うふふ、精々楽しみにしてるわ」

「がるるるる」


 ああ、またまーちゃんと優子この二人は……。

 でも、こういう時って、意外とこの二人が同じチームになっちゃったりするんだよね。




「うふふ、それじゃイクわよ」

「よーし、バッチコーイ!」


 と、思ったら、クジ引きの結果、まーちゃん・僕・変公、そして篠崎さん・勇斗・優子というチーム分けになったのだった。

 ま、まあ、こういうこともあるよね(目逸らし)。

 因みにルールはデュースはなしで、先に10ポイント取ったチームが勝ちの短期決戦だ。

 これならこちらにも勝機はあるかもしれないな。


「智哉くんのブーメ、ラン!」

「ぬっ!?」


 変な掛け声でサーブ打つなよ優子!?

 リズム崩れるな!?


「フッ、智哉!」

「は、はい!」


 が、やはりビーチボールを使ってるだけあって、サーブの威力は然程でもなかった。

 変公は格好に似合わず綺麗なフォームでサーブを受けると、僕の方にボールを上げてきた。


「ともくんッ!!」

「っ!」


 まーちゃんはスパイクの体勢をとり、トスを上げろと言わんばかりのオーラを纏っている。

 よし、ここは――。


「梅先生!」

「えっ!!?」

「フッ、任せろ!」

「「「っ!!」」」


 まーちゃんを含め、完全にまーちゃんにボールが上がると思い込んでいた相手チームは、意表を突いた変公からのスパイクに対応できず、そのボールを自陣に埋めることになった。

 計画通り(月スマイル)。


「と、ともく~~~んッ!!!」

「ぬえっ!?」


 が、どうやら囮に使われたことがまーちゃんにはご不満だったらしく、頬を膨らませてプンプンしながら、両手で僕の頭を鷲掴みにして、鼻と鼻が付きそうな超至近距離で睨まれた。

 ままままままーちゃん!?

 そ、その……、そんなに近付いたら、あ、当たるんですけど(何がとは言わないが)。

 ただでさえ今のまーちゃんはスリングショットなんだからさ……。


「なんで私にトス上げてくれなかったの!?(圧)」

「い、いや、なんでと言われましても……」


 その方が勝率が高そうだったからとしか……。


「次は私に上げるように(圧)」

「ぜ、善処します」

「よろしい」


 やっとまーちゃんの圧(且つぷぁい圧)から解放された……。

 やれやれ、ヤンデレの彼女を持つのも楽じゃない(如何にもなろう主人公っぽい台詞)。


 ――が、結論から言うと、この後も僕がまーちゃんにトスを上げることはほとんどなかった。

 何故なら毎回相手チームがまーちゃんの方ばかりマークするので、とてもじゃないがそれじゃ勝てないのだ。

 そのたびに僕はまーちゃんから圧(且つぷぁい圧)を受けたことは言うまでもない。

 いや、決して圧(且つぷぁい圧)を受けたいからそうしたわけじゃないよ!?(必死)


 ……そして、やはり相手チームは優子の存在が厄介だった。

 手加減しているとはいっても、どんな競技に出ても金メダルが獲れるくらいの能力があるのだ。

 僕達は対応するだけでいっぱいいっぱいだった。

 それでも何とか喰らいつき、勝負は9対9のマッチポイントまで縺れ込んだ。

 次のポイントを取ったチームの勝ち。

 優雅なリゾートビーチは、俄然緊張感に包まれた戦場と化した。

 ラストのサーブは金太郎。

 頼むぞ金太郎。

 サラリーマン金太郎ならぬ変態公務員金太郎。

 いい加減、税金分くらいは働くんだぞ?(圧)


「フッ、それではイクぞ! 智哉のブーメ、ラン!」

「ぬぬっ!?」


 定着させようとすんな!!

 ただでさえこの格好恥ずかしいのに!!


「うふふ、甘いわよ」


 が、決して緩くはなかった金太郎サーブも、優子には難なくレシーブされてしまう。

 やはり優子を何とかしない限り、こちらに勝ち目はない!


「篠崎さん!」

「は、はい!」


 セッター役の篠崎さんに、優子はトスを要求した。

 くっ!

 このスパイクを止められなかったら、僕らの負けだ!

 僕達は三人がかりで、優子のいる側の左サイドに陣取った。


 ――が、


!」

「「「っ!!!」」」


 ユッポリート!?!?

 ここで勇斗!?!?

 完全に裏をかかれた!!

 策士篠崎ッ!!


「任せろ美穂!!」


 くうぅっ!!

 勇斗がスパイクを打ってきた右サイドはがら空きだ。

 一番ボールに近いのは僕だが、僕の身体能力じゃ、逆立ちしたってギリギリボールには届かない。

 ……ここまでか。


「フッ、まだだッ!」

「えっ!!?」

「「「――!!?」」」


 その時だった。

 僕の後頭部に、むにゅんとしたとても柔らかい二つの物体が押し当てられた感覚がした。

 こ、これは……!?


「フッ、飛べ、おっぷぁいバズーカ!!」

「「「――!?!?!?」」」


 そして僕は金太郎の秘技おっぷぁいバズーカで、ボールに向かって物凄い勢いで弾き飛ばされたのだった。

 おっぷぁりーとおおおおお!?!?!?

 が、これならギリギリ僕でも間に合う……!


「ふんぬらば!!」


 渾身の力で拾ったボールだが、如何せん無理な体勢で取ったもので、ボールは味方が誰もいない方向に飛んでいってしまった。

 ああ!

 せっかく届いたのに……。


「っ!!」


 ……どうやら僕はヤンデレの勘を甘く見ていたようだ。

 まるでそこにボールが上がるのをあらかじめ知っていたかのように、いつの間にかまーちゃんはボールの真下に移動していて、太陽に向かって高く高く跳躍していた。

 ――まーちゃん!


「チェストオオオオオオオ!!!!!」

「「「っ!!!」」」


 ビーチボールとは思えない程の弾丸のような鋭いスパイクが、相手チームの陣地に深々と突き刺さったのだった。

 か、勝った、か……。


「ともくうううううううん!!!」

「ぬぶ!?」


 仰向けに倒れていた僕に、まーちゃんが思いきり伸し掛かってきた。

 しかもちょうど顔のところにおっぷぁいを押し付けられているので、密閉されて息ができない。

 しかもしかも、重ねて言うが今のまーちゃんはスリングショットだ。

 つまりほぼ直なのである(真顔)。


「ぬぐぐ、むぐ、むぐっ!」

「やったねともくん、私達の勝ちだよ!」

「むぐぐ、むぐんぐ!」


 それはわかったから早く解放してッ!

 そろそろ窒息しちゃうよ!!


「……でも、峰岸先生からおっぷぁいバズーカを受けた罪は重いよ」

「むぐっ!?」


 途端、常夏のビーチにいるとは思えない程空気が冷たくなった。

 いや、あれは完全に不可抗力だと思うんですけど!?


「だから後で、ね?」

「……」


 えぇ……(困惑)。

 まだまだ修学旅行は始まったばかりなんだから、お手柔らかにお願いしますね……。

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