「FOOOOOOOOOOO!!!! 象FOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」
「まーちゃん!? ここではマジで暴れないでッ!!」
修学旅行三日目。
プーケットからタイの首都、バンコクに移動した僕達は今現在、象に乗っている(迫真)。
『象乗り』はバンコクで最もメジャーなオプショナルツアーの一つらしい。
二人一組で象の背中に乗せてもらい、森の中をぐるりと一周するのだが、これがまた迫力満点でまーちゃんが興奮するのもさもありなんといったところだ。
しかも意外と安定感がある。
よく訓練されているからこそだろうが、不思議と恐怖は感じない。
こんなに身体が大きくて強そうなのに草食ってところも、勇斗を彷彿とさせて微笑ましい。
逆に可愛い見た目によらずゴリゴリ肉食なまーちゃんは、差し詰め女豹ってところか……。
「ん? 私の顔に何か付いてる?」
「っ!」
僕の視線を敏感に察知したのか、女豹が顔を近付けてきた。
「……いや、今日もまーちゃんは可愛いなって思って」
「えへへ、ありがと! ともくんこそ今日もカッコイイよ!」
「……それはどうも」
……ハッ!
今後ろの象に乗ってる微居君から、
君だっていつも絵井君とイチャイチャしてるんだから、おあいこじゃないか!(問題発言)
「因みにこれは余談だけど、バンコクの正式名称は、『クルンテープ・マハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット』っていうんだよ」
「よく暗記できたねそれ!?!?」
バンコクしゅごい!
そしてまーちゃんはどこでそんなこと覚えたの!?
相変わらず底が知れない
「あっ! ともくん見て見て! あそこに象くん達の控え室があるよ!」
「控え室?」
まーちゃんが指差したほうを見れば、屋根の下で無数の象達が横一列になって、ムシャムシャと餌を食べていた。
おお!
確かにこれは控え室って感じだな。
もしくは楽屋?
こうしてここで餌を食べながら、出番を待ってるわけだねこの子達は。
はあ~、象ってホント可愛いな。
すっかり僕も象のファンになったよ。
「「――!」」
その時だった。
いよいよゴールも目前というところで、僕達の乗ってる象くんが、ぐいんとこちらに鼻を伸ばしてきた。
ゾッポリート!?
えっ!?
何何!?
「あ、ともくん、ここでさっきの
「ああ、そういうこと」
そういえばこの子に乗る前に、モンキーバナナを一房渡されてたんだった。
これはこの子にあげる用の餌だったのか。
「ともくんともくん、早く餌あげてみてよ!」
「えっ、僕が!?」
う、う~ん、ちょっとだけ怖いけど、メッチャ待ってるし、じゃ、じゃあ。
恐る恐る僕がバナナを差し出すと、象くんは鼻の先でバナナを摘まんで、口に運んでいった。
「ぬはー!! カッワイイー!! 器用に鼻で摘まんで、モシャモシャ食べてるよッ!」
「本当だね!」
象の鼻って、手の代わりでもあるんだね。
……あれ!?
また鼻を伸ばしてきたぞ!?
「ともくんともくん! おかわり求めてるよ! 早くあげてあげて!」
「う、うん」
食べるの早ッ!
まあ、これだけ身体が大きいんだから、当然っちゃ当然か。
人間でいうなら、チ○ルチョコ摘まんでるみたいなものなんだろうしな。
よし、今あげるからね。
僕がバナナを差し出すと、象くんはまた鼻の先でバナナを摘まんで、口に運んだのだった。
「はあー、ドチャクソ可愛いよー!! ともくん、将来私達が結婚したら、象飼おうよ!」
「どこの富豪!?」
本当に飼いかねないからなまーちゃんは!
僕は不安だよ!
……あれ!?
また微居君から
今のは何が悪かったの!?(無自覚)
……お、おや?
「「――!!」」
また鼻を伸ばしてきたッ!?!?
無限ループだわこれ!!
そりゃそれだけ食欲あれば、こんな身体が大きくなるわ!
大食い選手権とかに出れば、間違いなく優勝だろうな……。
「ともくんともくーん!」
「わ、わかってるよ。でもこれが最後のバナナだよ」
ゆっくり味わって食べてね。
多分聞いてもらえないだろうけど……。
「FOOOOOOOOOOO!!!! 象FOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」
「……」
日本で象って飼えるのかな……?
「フッ、諸君、ここがかの有名な『メークロン線路市場』だ」
「「「おおー」」」
これは凄い。
続いてやってきたのはメークロン線路市場。
ここはテレビでも見たことがある。
現役で運行している電車の線路沿いに、所狭しと市場が広がっているという、漫画の中みたいな場所。
ホントにここを電車が通過するの!?
結構みなさん線路のすれすれまで品物並べてらっしゃるけど!?
「でも多分、この線路沿いに置かれてる品物は、ギリギリ電車の下を通過するように配置されてるんだろうね」
「ああ、確かにどれもあまり高さのないものばかりだもんね」
だとしても不安じゃないのだろうか、ここの人たちは……?
まあ、長年こうやってきたのだろうから、今更なんだろうけど……。
日本じゃ絶対有り得ない光景だろうな。
とはいえあれなのかな。
日本の通勤ラッシュの満員電車とかも、外国の人の目にはこんな風に滑稽に写ってるのかな?
「フッ、諸君、いよいよ電車が来るようだぞ」
「「「――!」」」
変公がそう言った途端、モーセの十戒のワンシーンの如く、バタバタとテントが仕舞われていく。
結果、ちょうど電車一台がギリギリ通れるくらいの隙間が出来たのだった。
マ、マジでここを電車が通過するの!?
あわわわわ。
本当に大丈夫なのかな!?
他人事なのに、凄くドキドキする!
「あっ! ともくん、電車来たよッ!」
「えっ? ――おおっ!?」
デッシャリート!?
キ、キタああああああああああ!!!!
速度は極めてゆっくりだけど、モノホンの電車が品物の上を通過してゆく……!
タイSUGEEEEEEEE!!!!!
そもそもなんでこんなとこに市場開いてるの?(素)
そして電車が通過した端から、割れた海が元に戻るかのように、一瞬でテントがまた広げられていく。
いやはや、タイの人達のバイタリティ半端ないっすわ……。
「FOOOOOOOOOOO!!!! 電車FOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」
「……」
今度は電車を飼うなんて言わないでね、まーちゃん?
「ふはー、お腹ペコペコー。さあ、今日もいっぱい食べるぞー」
「まーちゃんはいつもお腹空いてるね」
そんなところも可愛いけど(流れるようにノロケ)。
今日の夕飯は各自好きなところで食べていいと言われたので、僕とまーちゃんはホテル近くのデパートの中にあるフードコートで食べることにした。
因みに勇斗と篠崎さんは、何やら用事があるらしく別行動だ。
「まーちゃんは何にしたの?」
「もちろん今日もトムヤムクンだよ!」
「また!?!?」
マジで毎日トムヤムクン食べる気なんだこの
胃腸鋼で出来てたりする!?
「ともくんは?」
「う、うん、それがさ……、メニューが全部タイ語でしか書いてなくて、よくわかんなかったから、適当に見た目があまり辛くなさそうなものをチョイスしたよ。料理の名前は正直よくわかんない。でも美味しそうではあるよ」
鶏肉と青菜の炒め物に、ご飯と目玉焼きが付いた定食のようなものだ。
「ほほう、確かにそっちも美味しそうだね! ではいただきますか!」
「うん」
「いっただっきまーす!」
「いただきます」
どれどれ、お味は、と――。
――!?
「
「ともくん!?」
うわこれ、見た目に反してメチャメチャ辛い!!!
味は美味しいよ?
味は凄く美味しいんだけど、突き刺さるような辛さで口の中がビリビリする!!!
こんなの篠崎さんが食べてたら昇天モノだろうな……。
タイの料理は見た目が辛くなさそうでも、油断してはいけない(戒め)。
「あ、ともくん、私デザートにあれ食べたいな」
「まだ食べるの!?」
あの後まーちゃんは一杯ではトムヤムクンが足りなかったらしく、また違う店で大盛りのトムヤムクンをペロリと平らげたのだが、その上デザートまでいくってのかい君は!?
「だってタイの果物といえばマンゴーでしょ!? 私マンゴーも大好きなの! それにほら、あのデザート超可愛くない!?」
「え?」
まーちゃんが指差した店舗に飾られてる写真を見ると、そこにはマンゴーを薄くスライスして、薔薇の花のように飾り付けられた、何ともインスタ映えしそうなスイーツが写っていた。
おお!
これは確かに心惹かれるものがあるな。
流石に今はお腹いっぱいだから、そこまで食指が動かないけど……。
「ともくんも食べる?」
「いや、僕はいいよ。まーちゃんは好きなだけお食べよ」
「えへへ! じゃあ、お言葉に甘えて」
そういうなりまーちゃんは店員さんに、薔薇風のスイーツを含めて、計三つもマンゴーのスイーツを注文したのであった。
一人で三つも!?!?
「FOOOOOOOOOOO!!!! マンゴーFOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!」
「……」
マンゴーの樹って、いくらくらいするんだろう……?
「ふー、余は満足じゃ」
「それはようございました姫様。……あれ、篠崎さんと勇斗?」
三つもあったスイーツをペロリと平らげ、やっと落ち着いてくれた姫様と共にホテルに向かった僕だが、その通り道、別行動をしていた田島夫妻がDVD売り場の前で佇んでいるのを見掛けた。
何やら田島夫人は、売り場に置かれているテレビの映像をガン見している。
何をそんな熱心に?
「あっ! あれ、美穂がどうしても観たいって言ってた、タイで今話題のBLドラマだ!」
「……え?」
見れば、ちょうどその映像は、イケメンのタイ人俳優が、これまたイケメンのタイ人俳優に壁ドンしているシーンだった。
……イッケリート。
ぶるうちいず先生は口元を両手で抑えるいつものポーズをしながらも、小声でずっと「
そしてそんなぶるうちいず先生のことを、勇斗は菩薩のような顔で見守っているのだった。
エクフラが
今にも出そうな
タイの夜
智哉 心の俳句(字余り)