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第66話:エチュード②

「よし、今日もエチュードやろっか」

「そうだね」

「ああ、いいぜ」


 エッチュリード!?

 何このエチュードやるのが当たり前みたいな流れ!?

 さては前回思いの外好評だったから、調子に乗ってるな!?(メタ発言)


「フッ、今日も絶好のエチュード日和だな!」

「うふふ、このメンバーならエチュード甲子園出場も夢じゃないわね」

「「「――!」」」


 変態コンビがタンゴを踊りながらやってきた!(何故タンゴ?)

 てかエチュード甲子園って何だよ!?

 ないだろそんなの!?(な、ないよね?)


「フッ、今日はいかにも参加したそうな顔をしていた、この二人も連れてきた」

「え?」


 そう言うと変公は、二人の生徒を教室に招き入れた。


「……いや、俺は別に」

「まあまあ、せっかくだから参加させてもらおうぜ」

「――!」


 それは何と、絵井君と微居君であった。

 えっいびーと!?

 絵井君はまだしも、微居君はこういうの嫌いそうなのに……。

 ――いや、待てよ?

 よく考えたら文化祭で劇をやった時も微居君は意外とノリ良かったし、実はこういうの嫌いじゃないのかな?

 なーんだ、それならそうと言えばいいのに。

 まったくツンデレなんだから、微居君は。


「……投げるぞ」

「ヒッ!?」


 微居君は僕の考えていることを敏感に察知したのか、刺すような殺気を放ってきた。

 もちろん投げるのは岩だよね!?

 「投げるぞ」だけで脅しになるのは、古今東西君くらいのもんだよッ!


「オイオイ微居、浅井がビビッてるじゃないか。その辺にしとけよ」

「……チッ」


 絵井君が微居君の肩に手を置いてたしなめてくれた。

 ふう……、ありがとう絵井君。

 ……でも、そんな二人の遣り取りを見てぶるうちいず先生が若干エクフラしかかってる気がするのは気のせいかな?


「フッ、では、今日のテーマは『オフィス』でいこう!」

「オフィス!?」


 つまり前回の職員室の、会社員バージョンってこと!?

 それって大してシチュエーション変わんなくない?


「フッ、では早速舞台をセッティングしよう! 我々用の机を八個だけ残して、それ以外は後ろに下げるんだ!」

「「「はーい」」」


 ……そしてそこはかとなく嫌な予感がする。




「フッ、それでは始めるぞ。今回もそれぞれ舞台に上がるタイミングは任意とするからな。いくぞ! エチュードエチュードエッチュッチュー!」

「「「エチュードエチュードエッチュッチュー!」」」


 何その掛け声!?

 ま、まあそれはいい。

 それよりも今は目の前の舞台に集中しないと。

 ――今回の僕には秘策があるんだ。

 前回はまーちゃんに無理矢理チュパカブラ役にされて、散々な目に遭ったからね。

 もう同じ轍は踏まないぞ。


「おはようございます。あれ、まだ僕だけかあ」


 そう、誰よりも早く舞台に上がって一般人の役になってしまえばいいのだ。

 これで誰も僕を変な役には出来ないはず。


「おはようございまーす。チュパカブラ先輩、今日もお早いですね」

「っ!!!?」


 チュパカブラ先輩!?!?!?

 まーちゃんは何が何でも僕をUMAにしないと気が済まないのかなッ!?!?

 てかチュパカブラが普通に会社員として働いてるって、この会社採用基準ガバガバだね!?


「あ、ああ、おはようチュパ。足立君は今日も可愛いチュパね」

「やだなあ、お上手なんですから」


 チュパカブラの語尾は「チュパ」でいいのかなッ!?

 僕そんなに前世で悪いことしたのかなッ!?


「フッ、おはよう諸君」

「あ、チュパカブラハンター課長、おはようございます」


 チュパカブラハンター課長!?!?!?!?

 チュパカブラの上司がチュパカブラハンターなの!?!?!?!?

 あれかな!?

 ポケ○ントレーナーとポケ○ンみたいな関係なのかな!?


「フッ、どうしたチュパカブラ、顔色がよくないぞ? 大方昨日血でも飲みすぎたんだろう」

「あ、あははは、高校の同期と、久しぶりに集まりましてチュパ」


 確かにチュパカブラは生き物の血を吸うらしいけど、そんなお酒飲むみたいなノリなの!?

 あと自分で言っといて何だけど、チュパカブラって高校通えるんだ(素)。


「やあやあ、みんなおはよう」

「フッ、これはこれはぶるうちいず社長、うちの部署に何か御用ですか?」


 随分出世したねッ!?!?!?

 まさか社長にまで上り詰めているとはッ!!!!


「うむ、実はね、今度私自ら採用した新人を君の部署に配属することにしたんだよ。だから今日はその紹介をしようと思ってね」

「ホホウ、それはそれは」


 新人……!?


「おおい、入りたまえ、岩マニア君と岩マニアマニア君」

「どうも、岩マニアです」

「岩マニアマニアです」


 とりあえずさっきからみんな名前がおかしくないかな!?!?

 普通の名前が『足立君』しかいないんだけどッ!?


「岩マニア君は岩が大好きなんだ」

「はい、岩があればご飯何杯でもイケます」


 それは最早精神科案件ではッ!?


「そして岩マニアマニア君は、そんな岩マニア君が大好き」

「毎日岩マニアの観察日記つけてます」


 ここにきて絵井君にヤンデレ属性がッッ!!!!


「ではみんな、今日もわが社の社訓である、『一日一ヘヴンフラッシュ』の精神を忘れずにね」

「「「はい、ぶるうちいず社長」」」


 社長会社を私物化しすぎッ!!!

 ただの箱庭じゃないかここッ!!!


「待て待て待てーい」

「「「――!!」」」


 その時だった。

 舞台上に颯爽と勇斗が現れた。

 空気壊してきたけど、勇斗はどんな役なんだ……!?


「だ、誰だね君は!?」

「俺の名は正義の覆面ヒーロー、『田島勇斗仮面』!」


 全然素性隠せてないけど!?!?

 ヒーロー名に本名刻み込まれてますけどッ!?!?


「なっ!? き、君があの有名な謎のヒーロー、田島勇斗仮面だというのか!?」


 有名なの!?!?

 そして本名バレバレなのに、未だに謎の存在なの!?

 さてはこの世界の人達みんなバカだな!?(名推理)


「会社を私物化しているという噂を聞きつけて、馳せ参じたのさ! 悪は許さん! 覚悟しろぶるうちいず社長!」

「くっ……!」


 意外と手に汗握る展開にッ!!

 こ、これは、どうなるんだ……!?


「よいしょ」

「……え?」

「「「――!」」」


 ヌッ!?

 おもむろに田島勇斗仮面は、ぶるうちいず社長をお姫様抱っこしたのであった。

 ホワイッ!?!?


「だからお前を、一生俺の心の牢屋に閉じ込めておくからな」

「っ! た、田島勇斗仮面……」


 な ん だ そ れ。

 ただのリア充のイチャイチャを見せつけられただけじゃないかこれッ!?

 今にも岩マニア君が投げようとしてるけど、さもありなんだよこれはッ!


「うふふ、お邪魔するわよお」

「「「――!!」」」


 今回もシメはお前なのか!?

 でも、今回は特に運営さん案件ぽいところはなかった気がするし、運営さん役は無理があると思うけど……。


「フッ、あなたは?」

「うふふ、私はね、『書籍化作家様』よ!」

「「「――!?!?」」」


 どうしてもメタ発言しないと気が済まないのかお前はッ!?!?

 てか、書籍化作家様がこんな辺境に何の御用ですか!?


「うふふ、いえね、別に他意はないんだけど、私ちょっとだけ思ったのよ」


 ……?

 何を?


「あなた達アマチュア作家が何年もかけて何十万文字も書いた長編を、私が一日で書いた数千文字の短編が一瞬でポイントを抜かすことがよくあるなあ……って」


 他意あるじゃねえかッッッ!?!?!?!?

 書籍化作家様への熱い風評被害ッッ!!!!


「ハァーイオッケェ!! フッ、みんな大分板に付いてきたな。この分だと、エチュード甲子園も十分狙える位置にあるぞ」

「えへへ、そうですか」


 僕はツッコミで過労死しそうです……。


 ――もう絶対に、二度とエチュードはしないぞ(フラグ)。

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