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第70話:肘-1グランプリ①

「さあ遂に始まりましたひじ-1グランプリ。実況はわたくし田島勇斗と」

「か、解説は浅井智哉でお送りいたします」

「「「うおおおおおお!!!!」」」


 いや何が始まったの急に!?

 僕と勇斗は校庭のド真ん中に作られた特設ステージ横の実況席に鎮座して、全校生徒の視線を一身に集めていた。


 朝登校してきてたらまーちゃんや変公達に「いいからいいから」と何の説明もなくここに連れて来られ、既にスタンバっていた勇斗と共に肘-1グランプリの実況と解説を任されたのである。

 ……いや肘-1グランプリって何だよッ!?!?


「あのー、勇斗……じゃなかった田島さん、肘-1グランプリというのはいったい……」

「はい浅井さん、ではまずはそこからご説明させていただきますね」

「はい……」


 あと勇斗はなんでそんなキャラ仕上がってるの!?

 エチュードの時とかも思ったけど、勇斗って意外と演技の才能あるのかな……?


「肘-1グランプリというのは、一言で言うならミスコンのようなものです」

「ミスコン……」

「はい。これから8人の肘北の女子生徒にこのステージに上がっていただき、トーナメント戦でミス肘北を決めようという企画なんですね」

「トーナメント戦!?」


 ミスコンでトーナメント戦というのは珍しいような……。

 むしろ肘-1というネーミング的にも、K-1グランプリを彷彿とするのは気のせいかな?

 そもそも授業はいいのかよ……。

 今更といえば今更だけど、急にこんな企画が立ち上がるあたりやっぱこの学校滅茶苦茶だよね。

 まあ、IGA忍者が運営母体の学校なくらいだしな。

 この程度、驚く程のことでもないのかな?(洗脳)


「で、でも田島さん、なんで僕が解説役なんでしょうか? 僕、ミスコンの解説なんてやったことないんですけど……」


 まあ、ミスコンの解説経験がある高校生がいたらそれはそれでどうなのとは思うが。


「大丈夫です。むしろ浅井さん以上に今回の解説役が相応しい人はいませんから」

「え?」


 それってどういう……。


「というわけで、早速出場者のみなさんを紹介してまいりましょう!」

「田島さん!?」


 いやだからどういうことなのか説明してよ!?

 田島さんのキャラちょっと怖いんだけど!?


「まずはエントリーナンバー1番。――肘北が誇る特攻隊長。天衣無縫のTo LOVEるメーカー、足立茉央!」

「FOOOOOOOOOOO!!!! ともくーん、私頑張るから、ちゃんと見ててねー!」


 まーちゃああああああん!?!?!?

 まーちゃんが颯爽とステージに登場した。

 のっけからド身内がきたッ!!!

 確かにまーちゃんに関する解説だったら、僕以上の適任はいないかもしれないね!

 まあ、まーちゃんは黙ってれば紛れもなく美少女だからな(ノロケ)。

 ミスコンにノミネートされても不思議じゃないか。


「続いてエントリーナンバー2番! ――肘北に舞い降りた天使!! その笑顔は全ての人類を優しく包み込む!! 控えめに言って超絶可愛いッ!!! 一生幸せにしたいッ!!!! 篠崎美穂ッ!!」

「よ、よろしくお願いします」


 大分田島さんの主観入ってましたね!?!?

 篠崎さんが恥ずかしそうにおずおずとステージに上がった。

 また身内だった!

 何となく僕が解説に選ばれた理由がわかってきたぞ!?

 とはいえ篠崎さんも美少女なことは間違いない。

 ここに立つ資格は十二分にあるだろう。


「さあどんどんまいりますよ。エントリーナンバー3番。――文学界の麒麟児。そのあまりの才能に、著作を読んだ者は必ず発狂するという噂すらある、古賀詩織しおり!」

「癌罵詈魔酢!」


 ドグラ・マグラかよ!?

 古賀さんが盛大に誤字りながら登場した。

 確かに古賀さんの小説は、メンタルに対する破壊力だけでいえばドグラ・マグラ級だけどもッ!

 ――ははーん、さてはこれ、知り合いしか出ないパティーンだな!?

 あと、古賀さんの下の名前って詩織っていうのか……。

 普段苗字でしか呼ばないから、パッと下の名前出てこない人っているよね(え? いない?)。


「次はエントリーナンバー4番。――その右拳は今日も執拗に鳩尾を穿つ。全身凶器の狂気ガール、熊谷くまがい強子きょうこ!」

「押忍! 失礼のないようにみなさん殺す気でいくんで、よっしゃっしゃすッ!!」


 物騒だな発言が!?

 武道家の流儀をミスコンに持ち込まないでくれるかな!?

 クラスメイトの熊谷さんが、如何にも年季の入ったボロボロの道着姿でステージに飛び乗った。

 熊谷さんは一年生にして空手部のエースの空手少女で、嘘か本当かは定かではないが、素手で熊を倒したという噂まで出回っている。

 ポニーテールの可愛らしい顔立ちからはとても想像がつかないが、人は見かけによらないのはまーちゃんや篠崎さんで痛い程身に染みているので油断は禁物だろう。

 少なくとも今の「殺す気でいくんで」発言からもわかる通り、血の気が多いのは事実なんだろうし……。

 これは、意外と熊谷さんが台風の目になったりするのかな……?


「さあ続いてエントリーナンバー5番です。――巨乳死すべし、慈悲はない。巨乳を憎み、巨乳を誅するちっぱい界のジャンヌ・ダルク、小牧こまき梨乃りの!」

「クソがッ!!!! 田島君の彼女だって同じくらいちっぱいだろーがあああああ!!!!!」


 どんどん殺伐としてくんなッ!?

 頭から湯気を出して憤慨しながら、小牧さんがステージにガニ股で登場した。

 またクラスメイトきた!?

 大丈夫!?

 これミスコンとして成立してる!?

 ミスコンって普通、全校生徒から満遍なくエントリーするものなんじゃないの!?

 それにしても小牧さんに対する勇斗の、『ちっぱい界のジャンヌ・ダルク』って……。

 確かに小牧さんは篠崎さん並みのちっぱいだけれども……。

 まあ、勇斗にとって『貧乳はステータスだ! 希少価値だ!』からな。

 『ちっぱい界のジャンヌ・ダルク』も、勇斗には褒め言葉なんだろうが……。


「さて、エントリーナンバー6番です。――今日も肘北に天然の嵐が巻き起こる。見た目は聖母、頭脳は天然酵母、鳩原はとはら箏莉ことり!」

「みなさんどうもこんにちは。そういえばいつの間にか消費税が10%になってましたね。ジャ○プの値段が290円になってたんでビックリしました」


 いつの話してんの!?!?

 鳩原さんがいつものホワホワした笑顔を浮かべながら、ステージにふわりと降り立った。

 鳩原さんは容姿は紛れもない美少女なのだが、超がつく程のド天然で、その奇抜な発言でよく僕達を困惑させてくれる。

 そして鳩原さんも僕のクラスメイトだ(迫真)。

 今のところ6人共クラスメイトだけど、ひょっとして出場者全員クラスメイトってオチか?


「そしてエントリーナンバー7番。――好きなことは趣味と実益を兼ねた人体実験。誰が呼んだかマッドサイエンティストならぬバッドサイエンティスト、峰岸梅!」

「フッ、今日は特別に、先着で3名までを人体実験してやろう」


 応募者ゼロだよッ!!!

 変公がデュー○更家のデュー○ズウォークをしながらステージに躍り出た。

 いや待って!?!?!?!?


「た、田島さん! なんで梅先生が出場してるんですか!? 普通ミスコンって、生徒の中から選ばれるものじゃ!?」


 そもそも変公は見た目だけは100点だが、中身はマイナス100点だから差し引き0点の女だぞ!?


「ミスコンが生徒だけって、誰が決めたんですか浅井さん?」

「え……」


 だ、誰がって……。


「いや、誰も何も、普通そういうものじゃ……」

「それはどこかに明文化されているんですか?」

「そっ!? それは……」

「されてないですよね?」

「…………はい」

「じゃあ教師が出場しても、問題はないはずですよね?」

「…………そうですね」

「では最後の出場者を発表しましょう!」


 マジで今日の勇斗ちょっと怖いッ!!!

 また変公に変な薬でも飲まされてんじゃねーだろーなッ!!?


「エントリーナンバー8番。――堕とした男は星の数。宇宙を股に掛けるグッドルッキングハンター。保健室の死神ならぬ保健室の女神、有栖優子!」

「うふふ、TA・BE・CHA・U・ZO」


 お前が言うと洒落になんねーよッ!!!?

 優子が白衣を翻しながら、ステージに華々しく登場した。

 見事に身内しかいないッッ!!!!


「以上8名により、肘北ナンバーワンクイーンを決める戦い、肘-1グランプリを開催いたします!」

「「「うおおおおおお!!!!」」」


 ……こ れ は 先 が 思 い や ら れ る。

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