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第80話:エチュード④

「フッ、ではBチームのテーマは『ヒマラヤ山脈』でいこう」

「うふふ、望むところよ」


 ヒマラヤ山脈!?

 Aチーム僕達が『アマゾン熱帯雨林』だったから、それに対抗してってこと!?

 そんなん今度は絶対ビックフットやつを出す気満々じゃねーか!!?

 何なの!?

 エチュードって必ずUMAを出さなきゃいけない決まりでもあるの!!?


「うふふ、さあ、Bチーム私達実力じつりきをみんなに見せてあげましょう! エチュードエチュードエッチュッチュー!」

「「「エチュードエチュードエッチュッチュー!」」」

「…………エチュードエチュードエッチュッチュー」


 超渋々だけどやってくれる微居君……!(萌)

 因みに念のためBチームのメンバーをおさらいしておくと、優子、勇斗、篠崎さん、絵井君、微居君という、不安要素しかない構成である(デジャブ)。

 ……うん、改めて思ったけど、やっぱどのメンバーで組んでも無事に終わる気しないわこれ(素)。

 ……なんで僕の周りにはこんな人達ばっかなんだろう。


 ――と、そんな益体も無いことを考えていた時だった。

 勇斗と篠崎さんが、仲良く手を繋ぎながら舞台上に現れた。

 ふ、二人同時だと……!?


「いやあ、たまにはヒマラヤでデートっていうのもオツなもんだな、美穂」

「そうだね勇斗くん」


 ヒマラヤでデート!?!?!?

 しかも二人共本人役!!!

 君達エチュード舐めてない!?!?(謎の上から目線)


 ――と、そんな二人の前に微居君が。


「岩はいらんかねー。拾いたてゴツゴツの岩だよー」

「あ、こんなところに岩屋さんがある」


 岩屋さん!?!?!?!?!?

 そんな職業あったっけ!?!?!?

 それに『拾いたてゴツゴツ』って何!!!?

 『獲れたてピチピチ』的なもの!?

 そして岩屋さんはその辺に落ちてる岩をお金に換えようとしてるの!!?

 とんだ錬金術もあったもんだよッ!!!


「どうだいそこのお二人さん。今日のオススメはこの程よい重さの花崗岩。今なら特別に79800円でいいよ」


 プレ○テ5買えちゃう!!!!

 元手ゼロの物をその価格で売る胆力!!!!

 あと今のところヒマラヤ感ゼロだけど大丈夫!!?


「あー、ちょっと今は持ち合わせがないんで、遠慮しときます」

「まあまあそう言わずに、よく見てくださいよ――ホラッ!!」

「「――!!」」


 微居君は程よい重さの花崗岩を、フルスイングで勇斗にブン投げたのである。

 微ッポリート!!!

 !!!!

 最近の微居君は、完全にタガが外れてしまっているッ!!!!!

 勇斗――!!


「やれやれ、随分物騒だな」

「「「――!!?」」」


 勇斗!?!?

 何と勇斗は、程よい重さの花崗岩をバスケットボールのパスを受け取るかの如く、片手だけで華麗にキャッチしたのである――。


「ゆ、勇斗くん」

「……今まで黙ってて悪かった美穂。――実は俺は、正義の覆面ヒーロー、『田島勇斗仮面』だったんだのわっさほーい」

「そ、そんな!? 勇斗くんがあの有名な謎のヒーロー、田島勇斗仮面だったの!?」


 また出た田島勇斗仮面!!!!!

 だからヒーロー名に本名刻み込まれてんじゃんッ!!!!

 なんで誰も気付かないの!?!?

 ここぞとばかりに『のわっさほーい』もブチ込んでくるし!!!!


 ――すると、そこに音もなく絵井君が現れた。


「説明しよう! 田島勇斗仮面とは、誰も正体を知らない、謎の覆面ヒーローである!」


 まさかの説明キャラ!?!?

 演者が五人しかいないのに、説明キャラで一枠使っちゃうの!!?

 意気揚々と説明した割には、新しい情報何一つなかったし!!!


「……に、兄さん」

「「「――!!」」」


 兄さん!?!?!?

 岩屋さんが説明キャラのことを、兄さんと呼んだぞ!?!?!?


「なあ! 兄さんなんだろ!! 今までどこに行ってたんだよ!! 二人で先祖代々受け継いできたこの岩屋をり立てていこうって約束したじゃないか!!」


 由緒あるお店だった!!!!

 とても息子二人を育てられる収入があったとは思えないけどね!!!!


「……このままじゃダメだ」

「に、兄さん!?」


 ん?

 このままじゃ、とは?


ヒマラヤ山脈こんなところで岩なんか売ってても、誰も買ってくれるわけないだろう」

「そ、それは……」


 ド正論キタッ!!!!!

 よかった、お兄さんはまだまともで!


「――だからこそ、シッカリ宣伝をしなきゃいけない」

「え? 宣伝?」


 ……おや?


「これからはマーケティングの時代だ。――俺は説明キャラとして世界を回り、説明の傍らさりげなくこの岩屋のことを宣伝していたのさ」

「……兄さん」


 お兄さんもバカでした!!!!!

 残念!!!!!(ギ○ー侍)


「だから宣伝は俺に任せておけ。――その代わりお前は、親父から託されたこの店を守ってくれ。頼む」

「……ああ、わかったよ、兄さん」

「エクストリームヘヴンフラーーーッシュ!!!!」


 そしてお約束のように出るエクフラ(素)。

 ところで依然としてビックフットが出てこないけど、もしかして出ないまま終わっちゃう感じなのかな?

 ……何だかそれはそれでちょっとだけ寂しい気も(複雑な乙女心)。


 ――その時だった。

 満を持して、優子が舞台上に現れた。


「うふふットット。私はこのヒマラヤ山脈のぬし、『クイーンビックフット』――略して『クインビー』だフット。この山に足を踏み入れた者は、誰だろうと生きては帰さないフット」

「「「――!!!」」」


 と思ったらビックフットキターーーー!!!!(大歓喜)

 でもクインビーって、ツイ○ビーみたいだね(素)。

 あと「山に足を踏み入れた者は生きては帰さない」って言ってる割には、岩屋さんはずっと営業できてたみたいですけど?(名推理)

 それと大変今更で恐縮だけど、ビックフットはアメリカのUMAだよね?

 ヒマラヤにいるのはイエティだよね?


「くっ! みんな今すぐ逃げろッ! ここはこの田島勇斗仮面が食い止めるのわっさほーい!」


 た、田島勇斗かめーん!!

 がんばえー!(迫真)


「説明しよう! 田島勇斗仮面は、食い止めようとしているのだ!」


 お兄さん、説明キャラの才能ないなッ!!!?

 全然情報が更新されないものッ!!!


「ダメだよいくら勇斗くん――いいえ、田島勇斗仮面でも、クインビーには敵わないよ!」


 し、篠崎さん……!?


「もし勝てるとしたら伝説の『チュパカブラキング』――略して『チュパキン』くらいだよ」


 チュッパリート!?!?!?!?

 ここでチュパキンが出てくるの!?!?

 で、でも、もう演者は使い切っちゃってるけど……。


「はあ~、チュパキンさえいてくれたら。チュパキンさえいてくれたらなあ~」


 …………スゲーこっちのほうチラチラ見てくる。

 ……え? 待って?

 これもしかして僕が出てく流れなの?

 ……いやいや、僕はAチームの人間だから!

 Bチームそっちに出るのはご法度でしょ!?


「――ともくん、お願い、みんなを助けてあげて」

「ま、まーちゃん!?」


 まーちゃんがそっと僕の肩に手を置いてきた。


「フッ、そうだな、やはりチュパカブラといえば、お前以外に務まる者はおるまい」


 ……変公。


「癌罵っ手ください浅井君!」


 古賀さん。


「見せてやれ浅井、お前のチュパカブラっぷりを」


 皆川先輩。

 先輩の前では一度もチュパカブラは演じたことない気がするんですけど……。

 ……まあ、細かいことはいいか。

 これだけAチーム仲間から背中を押されたんだ。

 これで応えなかったら男じゃない。


 ――今度こそみんなに見せてやるよ、本物のチュパカブラってやつを(倒置法)。


「みんなもう安心チュパ!! このチュパキンが来たからには――」

「きゃあああああッッ!!!!! ビッグフットがもう一体増えた!!!」

「え?」


 篠崎さあああああああああん!?!?!?!?!?

 君まで裏切るのかよおおおおおおおお!!!!!!!!


「説明しよう! ビッグフットがもう一体増えたのだ!」


 最後までお兄さんはクソの役にも立ちませんでしたね!!!?


「うふふ、ハァーイオッケェ!! みんな素晴らしい演技だったわよ。――どうかしら梅ちゃん、今回の勝負は引き分けってことで」

「フッ、そうだな。白黒決着をつけるのは、またの機会としよう」


 ――両チームのリーダーは、舞台上で固い握手を交わしたのであった。


 ……いや、もう金輪際、絶対にエチュードはやらないからなッ!!!!!(フラグ)

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