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第397話 サーバー対抗戦Ⅱ⑥

 こうして戦場の只中に飛び込み、空気を直に感じると見えてくる物もある。 

 まずは戦力差。 アメリカ第三サーバーの時よりも層の差が顕著だった。 

 フランス側は明らかにエンジェルタイプ、キマイラタイプの割合が多く、ソルジャータイプもいるにはいるが、ほとんどがプラスだ。 


 ――それにしても日本サーバーのプレイ人口の少なさはどうにかならないものか……。


 明らかに向こうの方が質で勝っているのでここでも人口差が露骨に出ていた。

 しかも今回は前回と違って正面からのぶつかり合いなので、前回よりも圧倒的に不利だ。

 地形を利用しての小細工ができないのだからどうしようもない。


 ヨシナリの見立てではこのまま行けば十中八九負ける。

 恐らくどこかで大きく崩れればそのまま押し切られると見ていいが、裏を返せばそれさえなければこの拮抗を維持するぐらいは可能だろう。 


 ――何もなければだが――


 「まぁ、そんな訳ないよなぁ……」


 思わず呟く。 何故なら敵陣の奥から一際目立つ機体が現れたからだ。 

 白を基調とした機体で人型ではあるがやや大型。 通常の機体よりは一回り程大きい。

 法衣のような布を身に纏っており、手には錫杖。 推進装置は見当たらないが、周囲の空間情報が変動している点から何らかの手段で重力を操作している。


 『ごきげんよう。 ジャパンサーバーの皆様。 私は『グリゼルダ』、今回の対抗戦では主将を務めさせていただいております。 海の向こうにある地方エリアの実力――堪能させていただきました。 これは私からのささやかなお礼ですどうぞお納めください』


 少女の声。 指揮官を名乗っている割には声が幼いなと思いながら様子を窺っていると、グリゼルダと名乗ったプレイヤーは錫杖を軽く鳴らす。

 同時に頭上に無数の反応。 空間情報に変動があった。 転移の兆候だ。

 現れたのは無数のリングとその奥から覗く巨大な砲口。 同時にレーザー照射による照準。


 「おいおい、冗談だろ?」


 呆然と呟く。 リングの数は千は軽く超えており、上位機種を優先的にロックしているようだ。

 観測データからグリゼルダ単独でやっている訳ではないようだが、飛んでくるものが変わらない以上は何の慰めにもならない。


 ロックオンされたプレイヤー達が悲鳴を上げたり、回避を図ろうと動き出す。

 当然、ヨシナリもロックされていた。 発射のタイミングを見極めて回避という思考が脳裏を過ぎるが、反射兵器の存在が脳裏を過ぎる。 回避は困難な可能性が高い。 


 ならどうするか? 答えは地形を利用する、だ。

 ヨシナリはホロスコープを変形させて急降下。 そのまま水に飛び込む。

 レーザー照射は未だ継続中だ。 可能な限り深く潜り、底が見えたタイミングで発射された。


 案の定、レーザーはヨシナリを正確に狙ってきたが水によってかなり減衰した事により届く頃には無視できるレベルにまで威力が落ちていた。 凌いだと判断したと同時に機首を上に向けて急上昇。

 侵攻戦での経験を活かして水中でもある程度動けるようにしておいて本当に良かったと内心で胸を撫で下ろしながら水面へと向かうが途中、無数の残骸が雨のように降って来たが努めて無視して水上へ。


 戦場は酷い有様だった。 ヨシナリと同じ考えに至った者達は同じタイミングで自ら飛び出すが、水面に浮かんでいる無数の残骸と減った味方の反応を見ると結構な数が躱せずに落ちたと見ていいだろう。 傾けばヤバいという事を考えていた矢先にこれだったのでやってくれると僅かな苛立ちを感じながらグリゼルダと名乗ったプレイヤーに仕掛けに行く。 流石にあの規模の攻撃を何度も使えるとは思えない。 グリゼルダの武装ではないが、タイミングを取っていたのは彼女だ。


 ――再発射する前にどうにか仕留めなければならない。


 同じ事を考えていたプレイヤーは多かったようで、ヨシナリよりもグリゼルダに近い位置にいたプレイヤー達が先に仕掛けに行った。 エンジェルタイプがエネルギーライフルを連射するが、グリゼルダは軽くを手を翳すだけで軌道が捻じ曲げられる。 


 だったらとエネルギーウイングを噴かして急旋回。 

 二機が挟みこむ形で左右からエネルギーブレードを抜いて斬りかかる。

 左を小さく仰け反るだけで躱し、右を錫杖の一振りで破壊。 振るっただけでエンジェルタイプの上半身が粉々になった。 何だあの威力は。


 錫杖の周りの空間が歪んでいるのでただの打撃ではないのだろう。

 ジェネシスフレームにしても性能が突出している。 恐らくSランクプレイヤーだ。

 もう一人ぐらいいる可能性は高いと踏んでいたが、実際目の当たりにすると厄介なと感じてしまう。


 ――だからと言って無視する訳には行かないんだよなぁ……。


 まずは防御を剥がす必要がある。 

 機銃を連射しながら突っ込み、グリゼルダの機体が動いた瞬間にバレルロール。 

 不可視の何かが通り過ぎ、水面が爆ぜた。 


 『おや?』


 不思議そうにしているグリゼルダにヨシナリは内心で苛立つ。

 反応から完全に舐め切っているのは明らかだ。 旋回して背後を取りに行くが、途中で変形しアトルムとクルックスを連射。 バースト射撃によって無数の銃弾、エネルギー弾がグリゼルダに向かって飛んでいくが見えているのに躱しもしない。 


 銃弾は運動エネルギーを奪い取られて停止。 エネルギー弾は霧散。


 ――拳銃の火力じゃ無理か。


 アシメトリーに持ち替えながら急降下。 頭上を何かが通り過ぎた。

 シックスセンスが無かったら何をされたか分からないままに何度撃墜されている事か。

 周囲を見ると一緒に仕掛けていた味方プレイヤー達は全滅しており、気が付けばSランクプレイヤーと一対一という厳しい状況になっていた。 他は手一杯のようで助けは期待できなさそうだ。


 『貴方、見えているのですか?』


 グリゼルダはヨシナリを見て不思議そうに首を傾げる。


 「何の話ですかね?」

 『セカンドサイト? マインドビジョン? ――もしかしてシックスセンスですか?』


 ヨシナリは無言でアシメトリーを連射。 これだからハイランカーは怖い。

 見ただけでこちらの装備構成を当ててくるのは本当に止めて欲しいなと思いながら機体を加速。

 とにかく動き回って常に回避できる状況を作る。 幸いなのはラーガストと違い、足を止めて戦うスタイルである事。 


 機動性に振った機体なら今頃、ユニオンホームで悪態を吐いていただろう。

 ここまでの戦闘で多少の情報は集まったが、底がまだ見えない。

 少なくともさっきの砲はグリゼルダの攻撃手段ではない。 


 呼び出したのは彼女の仕業かもしれないが攻撃事態は別だ。 

 根拠はエネルギーの出所がグリゼルダの機体ではなかったからだ。

 次に防御手段。 侵攻戦の時に現れたボスエネミーと同じ、空間に作用するタイプのフィールド。

 銃弾の運動エネルギーが奪われる事で止められた点からも間違いない。 

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