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第526話 第二次防衛戦⑧

 ヨシナリ達の姿を見て安心したのかタヂカラオは大きく息を吐いた。

 その様子を見て助けに来てよかったと胸を撫で下ろす。 幸いにもヨシナリ達は中に居たのでゲート近くに居たタヂカラオの元へは内部を通って簡単に辿り着けたことも大きい。


 「状況は御覧の通り最悪だ。 僕は戦闘に集中していたので中の様子は詳しくないのだけれど、入られたってのは本当なのかい?」

 「はい、西と東は死守を諦めて適度に通す事で時間を稼ぐつもりの様です」


 通さない事よりもゲートの陥落そのものを防ぐ方針に切り替えたようだ。

 第一層の陥落だけは何としても避けたいと思っているプレイヤーは多いのである程度の敵を内部で負担させるのはそこまで悪い判断ではない。 


 付け加えるなら内部はそこまでダメージを受けていないので開始前にせっせと設置した防衛装置が生きている事も大きい。 


 「なるほど。 で? ヨシナリ君。 君には何か考えがあるんじゃないかな?」

 「なくはないですがどうしてそう思ったんですか?」

 「いや、わざわざ僕を助けに来たんだ。 戦力が欲しいんじゃないのかい?」


 タヂカラオの見立てではヨシナリには何かしらの目的があって戦力を欲しがっている。

 その一環として助けに来たというのは本音ではないか? そう考えていたのだ。


 「それもありますけど、タヂカラオさんにはお世話になったので割と純粋な気持ちで助けに来ましたよ」

 「そ、そうなのか。 何かすまないね」

 「いえいえ、戦力が欲しいっていうのは当たっているので俺のプランを聞いてくれますか?」

 「是非とも拝聴させて頂こう」


 戦闘を継続しながらヨシナリはこの戦場のマップを表示させる。

 どこもかしこも敵だらけだ。 防衛装置が機能しなくなったので外から次々とエネミーが雪崩込んで来る上、空からは一定間隔で敵の空中戦艦が現れて敵性トルーパーを吐き出している。


 「御覧の通り戦況は最悪で、個人レベルで引っ繰り返す事はまず不可能です。 ――あ、ラーガストさんは例外で」

 「はっはっは、彼が居れば本当に一人で何とかしそうだね」

 「――でも敵に対して嫌がらせをする事は出来ます」


 タヂカラオは興味深いと先を促すとヨシナリは上を指差す。

 そこでは追加の戦艦が地上に砲火を浴びせながら艦載機を吐き出している。


 「割と時間をかけて観察してたんですけど、追加が湧くタイミングってフィールド内に居る戦艦が落とされた後だったんですよ。 これから検証するんですけど――グロウモスさん。 行けます?」

 「い、いけそう。 ちょっと待って」


 タヂカラオが視線を地上のグロウモスに移すと彼女は追加パーツを付けたスコーピオン・アンタレスを空に向けて構えており、マルメルが敵を寄せ付けないようにガードに入る。

 銃口に強い光が集まり、大出力のレーザーが発射。 光は敵の戦艦の動力部を射抜き、空中で爆散させる。


 そのタイミングでヨシナリはシックスセンスの感度を最大にしてタヂカラオと共有。


 「やっぱり」


 撃墜されてから五秒後に新しい戦艦がリポップした。

 それを見てタヂカラオはなるほどと納得。 そしてヨシナリが何をやろうとしているのかも同様に。


 「なるほど。 つまりこのフィールドに存在できる戦艦の数には上限があるのか」

 「はい、それでなんですけどあの戦艦って自動で動かしてるって感じに見えないんですよね」


 そこまで聞いてタヂカラオはヨシナリの意図を察して少し楽しくなってきた。 


 「つまりハイジャックのお誘いという訳だ」

 「はい。 どうです? 面白そうじゃありませんか?」

 「いいね、乗ったよ。 ちょうど面白くもない防衛戦には飽きて来た所だ」

 「ではタヂカラオさんは来てくれるという事で次に行きましょうか」

 「次、という事は戦力を拾いに行く感じかな?」


 ヨシナリは大きく頷く。 

 ヨシナリ、マルメル、グロウモス、後で合流するベリアルだけでは少し戦力的に足りない。

 破壊だけなら充分だが、乗っ取りが目的なので制圧できる人数が欲しいのだ。


 「アテはあるのかい?」

 「前に抜け駆けして怒られたので真っ先に声をかけておきました。 南ゲート集合って言っておいたんでそろそろ来ると思いますよ」


 ヨシナリがレーダー表示を確認すると複数の味方機がこちらに向かって来ているのが見える。


 「いよぉ! 今回はちゃーんと声をかけたな! 俺は乗るぜ!」


 そう言って真っ先に現れたのはツガルとフカヤだ。

 フカヤはしがみつくようにツガルの機体に乗っており、ヨシナリの姿を見てどうもと小さく手を振る。 


 「ホウレンソウは大事っておねーたまも言ってたからナぁ! あたしも当然参加だ」


 次に現れたのはポンポンとその脇に控えるようにまんまるとニャーコ。

 まんまるが小さく会釈してきたのでヨシナリも会釈で返す。

 振り返るとゲートからソルジャー+と数機のⅡ型がゆっくりと近づいてきた。


 「何か俺達って場違い感が半端ねぇんだが、混ざっていいんだよな?」


 ヴルトムとその仲間達だ。  

 手当たり次第に声をかけたのだが、思った以上に集まってくれたのでヨシナリとしてはありがたかった。


 「いや、頭数が欲しかったから助かるよ。 大歓迎だ」


 ヨシナリ達『星座盤』のメンバーがこれから合流予定のベリアルを含めて四人。

 ツガルとフカヤ、ポンポンと連れて来た二人。

 ヴルトムと彼が連れて来た四人にタヂカラオを加えると十五機。


 悪くない規模の戦力となったが、具体的にどうするのかは聞いていなかった。


 「で、ベリアル君の合流を待って仕掛けるのは分かってるけど具体的にはどうするんだい?」

 「そのベリアルに一仕事頼んでいたんですけど――あ、来たみたいですよ」


 タヂカラオのレーダー表示には味方機の接近が示されていたが、反応が異様に大きい。

 視線を向けるとなるほど。 ヨシナリの意図を理解した。


 「よくもまぁ、協力を取り付けられたね。 君にはいつも驚かされるよ」


 そこに現れたのは影のような機体――ではなく巨大な威容を誇る戦闘機。

 ユニオン対抗戦で対戦したプレイヤー『カカラ』の機体だった。 

 そしてその背には見慣れたベリアルの機体が乗っている。


 「来てやったぞ! 何やら面白そうな事をするらしいな!」

 「ふ、戦友よ。 貴様の願い通り、連れて来たぞ」


 タヂカラオは揃った戦力を見て思わず拳を握る。 

 何故ならこれからする事への期待感でいっぱいだったからだ。


 ――面白くなりそうだ。

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