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第634話 防衛戦(復刻)㉖

 「あー、何というか、お疲れさまでした」


 「思金神」のユニオンホームに戻って来た面々だったが、大半が消耗している様でぐったりとしていた。

 無理もない話だ。 あの敵は文字通り死力を尽くさなければ勝つ以前に勝負にならない。

 それでも倒せたのは運も味方した。 


 ユウヤを始め、撃墜された面子は悔しそうにしていたが、ベリアルやタヂカラオのように撃破に絡んだ面々は何かを掴んだのか考えているような様子だ。 

 このまま感想戦と行きたい所だったが、ヴルトムの仲間達に帰りたそうにしている者も多くヨシナリは内心で小さく息を吐く。 


 ――まぁ、やれる奴でやればいいか。


 「今日の所は皆、疲れているようなので解散としましょう。 あ、『星座盤』のメンバーは反省会するのでホームに移動で」

 「あぁ、マジで疲れたわ。 じゃあ、今日はありがとな!」


 そう言ってヴルトム達は次々とログアウト。 

 すっかり人数が減ってしまったメンバーだが――


 「さて、これから感想戦をやるんだろう? 場所を貸すから広い所でやらないか?」


 タヂカラオの提案でホーム内の広い部屋へと移動。

 向かった先は立ち並ぶビル群の一つにあるシアタールームのような場所だ。

 広々とした空間に巨大なモニター。 全員で見るにはいい場所だった。


 「何となくでついてきたけど、これから何やるんだ?」

 「感想戦っていってたナ。 お前ら、いつもこんな事をやってるのか?」

 「あぁ、そういえばお二人は初めてでしたね。 基本的にウチは勝っても負けてもリプレイ映像を見直してあれこれいう時間を設けるようにしてるんですよ」


 ツガルとポンポンにそう返しながらタヂカラオに再生を頼む。

 『烏合の衆』のメンバーも異論はないようで彼等は無言でモニターに視線を向ける。  


 「流石に長いから序盤から中盤は飛ばしながらでいいかな?」

 「はい、メインは終盤のアレで」


 タヂカラオは了解といいながらウインドウを操作。 映像が流れる。 

 正直な所、終盤までは余り見どころがなかった。 

 何故なら事前情報が存在しており、専用の対策をしっかりと練ってきていたからだ。


 余程のイレギュラーがないか、指示を無視して引っかき回すような者がいない限りは上手くいって当たり前とヨシナリは認識していた。


 「しっかし、最初はヌルゲーだと思ってたのに終盤であんな事になるんだもんなぁ」

 「正直、あれは俺も想定していなかった」


 マルメルの言う通りだった。 

 ヨシナリとしても今回は次のサーバー対抗戦の予行演習程度の認識だったのだ。

 だから、味方との連携――主に集団に混ざる事でもしっかりと動けるように慣らしておこうと頭数が必要なこのミッションを選択したのだが、最後の最後でアレが出て来るとは思わなかった。


 下半身がフロート状の特殊機。 

 間違いなくジェネシスフレームでSランク相当の化け物だ。

 ドローンを精製する事で自身と機体のリソースが許される限り無尽蔵に手数を増やす事のできるというイカサマのような機体。 


 作り出せるドローンの種類も今回だけでも十数種類と非常に多く、攻撃を予測するのは非常に困難な相手だった。


 「単騎でこの手数、マジで反則だナ」

 「いや、俺もそう思いますよ」


 初見だったら碌に抵抗できずに全滅していただろう。 

 幸いにも一度当たっている相手だった事もあって対策を練れたからこそ勝負になったのだ。


 「多種多様なドローンを精製する事で全ての距離に対応する応用範囲の広さ、適切に運用するスキル、何よりもあれだけの数のドローンを操って機体の操作もこなすマルチタスクが一番ヤバいですね」


 攻略法としては強みである手数を減らす事に重きを置くべきだと判断した。

 つまりは本体ではなくドローンを優先して排除。 

 頭数が居る事を活かして相手の手数を減らしつつ、本体を叩くという戦い方は早い段階で思いついていた。 


 ツガルやポンポン、タヂカラオ達は何度か一緒に戦ってきた経験もあって即興でも合わせる事は難しくないが『烏合衆』のメンバーとは練度不足という事もあり、意識して切り離す――要は可能な限りお互いに干渉しないポジションを意識して配置。


 本体を狙うメンバーは少し難しかったが、同時ではなく微妙にタイミングをずらす事で交互に仕掛けるといった形を作ったのだ。 

 こうして見返してみると機能はしているが、攻撃の繋ぎが甘く連携としては未熟と言わざる得ない。


 ――一応、攻撃自体は通用していたが、こうして見ると不味い部分が多いな。


 これに関してはどうしようもなかった。 このチームは言い方は悪いが寄せ集めだ。

 そんなチームに一分の隙も無い完璧な連携を求めるのは無理があった。

 改めて敵機を観察する。 


 下半身のフロートは重力制御、機体の各所にスラスター、補助の推進装置である小型のブースター。

 ここだけ切り取れば機動性に振った機体とも取れるが、ドローンに攻撃を任せている以上、本体の役目は生き残る事にある。 ヨシナリからすれば理に適った造りといえた。


 映像ではユウヤとベリアルヨシナリ、ポンポンがドローンを片端から破壊し、残りのメンバーが本体の撃破に注力。

 まんまる、カカラ、アリス、マルメルの四人は広範囲にばら撒けるメンバーが相手の行動を制限。

 残りで仕留めるといった分かり易い組み立てだ。 


 アドルファス、カカラ、モタシラ、平八郎、ふわわ、シニフィエと接近戦に長けたメンバーが揃っているのだ。 連携が甘くてもゴリ押せるといった楽観があった事は否定しない。

 最初の綻びは平八郎が撃破された事だ。 地中に仕込んだドローンによる奇襲。


 「こうして見直すと不自然に高度を落としてる時があるな」


 アドルファスの口調はやや苦々しい。 


 「すいません。 これに関しては俺の落ち度でもあります」

 「いや、流石にアレを読み切れってのは無理だろ」


 アドルファスは「責めてる訳じゃねーんだ」と付け加える。

 そう言って貰えると気持ち的に楽だが、相手の行動を監視するのはヨシナリとポンポンの役目だ。

 ポンポンも理解しているのか小さく項垂れる。 


 気付かなかった原因も理解していた。 

 敵機の周囲ばかりに意識を向けていて相手がどの程度の範囲にドローンを出現させる事ができるのかを深く考えなかった事だ。 


 加えて精製するだけして一切、動かさなかった事も探知できなかった要因の一つだった。

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