「ひゃあっ!」
「うわっ! そんなに驚かないでよ!」
萌は図書館で本を探していたところに後ろから突然肩を叩かれて飛び上がった。
「こんにちは、佐藤さん。俺、野村
「えっと、新田さんの取り……じゃなくて
話しかけてきたのは、真理の周りに侍っている親衛隊というか、取り巻きの1人だった。真理のファンと公言しながらも、女の子を取っかえ引っかえして遊んでいるチャラ男として有名だ。
「実はさ、あの発表のグループからあぶれちゃったんだ。佐藤さん達のところに入れてくれないかな?」
「え、今更? なんで?」
グループ分けした授業は先週だった。グループからあぶれたならなぜすぐ聞いてこなかったのか? 萌は不思議に思った。
「私達5人だからもう定員いっぱいだよ」
「先生に聞いたら1人オーバーぐらいはOKだって」
「本当に? でも他のメンバーの意見も聞かないといけないからまだ返事できないよ」
教員が本当に定員オーバーを了解したのか萌は疑っていた。
教員にメールをしたら、すぐに返事が返ってきた。定員オーバーになっても他のグループに移ってもいいと確かに孝之に許可したそうだった。
でも教員が『グループを移ってもいい』と書いてきたのが萌には引っ掛かった。孝之は『あぶれた』と言っていたからだ。
萌はもやもやしたが、そこまでは個人の事情を詮索し過ぎのような気がして教員にも孝之にも聞けなかった。
教員の返事を確認してすぐに萌は、メッセージアプリのグループで孝之の加入希望について聞いた。
『了解』
『おk』
『私もいいよ。でも分担どうする?』
皆、孝之が入るのに異存はないようだった。でも萌は分担のことを忘れてた。
『私の分を手伝ってもらうよ。それとも誰か野村君に手伝ってほしい人いる?』
どうやら皆、自分の分担は1人でやりたいようで、萌が孝之と自分の分担を分け合うことになった――でも萌はそれが悩みの種になるとは予想していなかった。
――はぁ~……どうしてこうなるの?
事務的に分担を分けたはずなのに、翌日から孝之は図書館で萌にべったりだ。
「佐藤さん、このテーマについてこれしか文献見つからなかったけど、十分かな?」
「どれ?……うん、まぁいいんじゃない? 時間もないし」
「なんか身に入ってないよね? 大丈夫?」
――誰のせいだー!!
萌は、悠と並んで調べものをするのを密かに楽しみにしていた。その日は3人で4人掛けの机で調べものをしていたが、孝之がしょっちゅう話しかけてきた。だけど発表にかかわる内容だから『うるさい』とは言えない。
そうこうするうちに悠は『あっちで本を探してくる』と言って席を立って戻ってこなかった。次の日から悠は、初めから2人と離れた席に座って調べものをしていて話しかけられなそうな雰囲気になってしまっていた。