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第7話 死を招き入れる人形(マリオネット)

 私達は、『ヒューマ』の村に帰って行った。


「ガキン!キズー!お前達は!」


 マザムさんが、焦った顔で、2人の名を呼び、走ってくる。


「2人とも!今、どういう状態か分かっているの⁉」


 マザムさんがふと、私の方を見て、2人を自分の方に寄せる。


「貴方… リチュさん…」


 うぅ… マザムさんの目が痛い…


「ち、違うんだ。マザムさん。私の勘違いで…」


 リズさんが、マザムさんに、説明をしてくれた。


 ――――――――――


「疑ってすまなかったわね。」


 マザムさんが、私に頭を下げた。


「い、いえ。マザムさんが、お2人を大事にしているのは知っていますので…」


 私達が、孤児院に戻ると、白髪の少女が黄色い髪の人形を持って、玄関にいた。


「あ、ガキン君。キズ―君。帰って来たんだ。よかったぁ。」


「あ、イーシャ!た、ただいま。」


 ガキンさんの顔が赤くなっていた。

 私は、彼の額に手を置いた。


「な、なんだよ!リチュ姉!」


「赤くなってたので、風邪でも引いたのかと思いまして。」


「な!赤くなんかなってねぇよ!ば~か!」


 ガキンさんは、私の手を払うと、部屋に戻ってしまった。


「どうしたんでしょう?」


 私の疑問に、キズ―さんがため息交じりに言う。


「ガキンは、イーシャちゃんが好きだからねぇ。」


「なるほど、照れてるのか。なんで、男ってのは好きな相手に、好きって言えないんだろうねぇ。」


「ほんとだねぇ。」


 キズ―さんとリズさんが、あきれたように、言う。

 どういう状況だこれ。


「そういえば、その人形はどうしたんだい?イーシャ。」


 マザムさんが、気づいたかのように言う。

 イーシャさんが、人形を抱きしめて言う。


「食糧庫の掃除してた時に、落ちてたの。」


「あら、そうなの?誰かの落とし物かしら。あとで連絡しなきゃ。」


 マザムさんが、イーシャさんと一緒に奥に行ってしまった。


「リズさん、ちょっと2人で話したいことがあるのですが。」


 私がそう言うと、リズさんは驚いたように答える。


「な、なんだ。」


「そんなに警戒しないでください。」


 私は少し落ち込んだように言った後、リズさんと話をした。


 ——————————


 私達は、夕食を食べた。

 もっとも、私はいつも通り体に蓄え、外にいるナイトバード達に与えた。


「いつもこんな感じで、ナイトバードに餌を与えてたのか?」


「あ!リズさん。ええ、いつも夜にスライムの村に行くついでに、与えてました。」


「そうか。」


 リズさんがそう言って、静かに笑った。

 私は立ち上がり、リズさんに言った。


「さて、そろそろ。」


「ああ、行こうか。」


 私達は、孤児院の中に戻った。


 ――――――――――


 私達は、イーシャさんの部屋の前で待機する。

 突如、部屋から窓を開ける音が聞こえた。


「ちっ、窓からでたか!」


 リズさんは、そう言って外に出た。

 私も後を追った。


「やはり、今回の狙いはイーシャだったか。」


「土魔法で出来た人形。やはり犯人が作ったものだったんですね。」


「なるほど、人形を使って、狙いの相手を洗脳して、相手側から外に出るようにしてたって事か。リチュ姉!」


「ええ、その通りです。」


「そういえば、マナを見ることができるんだっけ。リチュお姉さんは!」


「ええ、そのと…」


 私達は、後ろを向く。


「ええ!?」


 そこには、ガキンさんとキズーさんがいた。

 私達が、驚く。

 それに対して、ガキンさんが怒る。


「びっくりしたな!急に大声出さないでよ!」


 私達は、2人に近寄る。


「お前ら、なんでここにいるんだよ!」


「そうですよ。危険だから、孤児院に戻ってください。」


 私達に向かって、ガキンさんとキズーさんは、頬を膨らます。


「俺達だって、犯人が許せないんだ!」


「そうだよ。それに、早く行かないと見失っちゃうよ。」


 キズーさんの指摘で、私達は仕方なく、2人を連れてイーシャさんを追いかける。


 ――――――――――


 私達が、森まで歩く。

 途中でイーシャさんが、立ち止まる。

 そして、私達は、見覚えのある男を目にした。


「ヒーッヒッヒ。さぁ、さぁ、いらっしゃい。ボクと一緒に楽しいパーティーに行こうじゃないか。」


 黄色く染めた唇を吊り上げたピエロさんが、イーシャさんに風船を渡す。


「おい!デブピエロ!イーシャを離せ!」


 突然、ガキンさんが叫ぶ。


 その声を聞いて、ピエロさんがこちらを見る。


「おめぇらは、くそスライムにくそガキ共!」


「お前が、子供誘拐の犯人か。」


 リズさんが、杖を向ける。


「ああ?なんだてめぇは!」


「私は、『ヒューマノン』の騎士団の1人、リズだ。」


 リズさんの言葉を聞いて、ピエロさんが笑う。


「そうか、てめぇらが、俺の事を捜査してた騎士団の野郎か。俺は、ダイヤ!この世のガキ共に、恐怖をもたらす者!」

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