目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第10話 一難去ってまた一難

「いよっしゃあ!ゃったりぃ!」


 ガキンさんが、拳を振り喜ぶ。


「リチュの『囮花火トーチ』で、あのピエロの視界を奪い、キズ―の『囮人形デコイ』で、あいつを囲う。戸惑っている、奴の視界の隅で私の『水柱スプラッシュ』を使い、『囮人形デコイ』を動かして注意を引く。そして、そこでガキンが奴を斬る。

 成功するか不安だったが、出来るもんだな。」


 リズさんが顎に手を置き、感心する。


「ね?上手くいったでしょ?まぁ、着色ができなくて困ったけど、リチュお姉さんが体の色を変えれるの教えてくれて、助かったよ。」


 目を閉じ、笑顔を見せて言うキズーさん。

 私も彼に笑顔を返す。

 突然、私の両肩と頭に、ナイトバード達が止まった。

 彼らを見ようとして、私は振り向く。

 そして、私の背後にいた、ダイヤさんの姿が消えていることに気づいた。


「あ、あれ?ダイヤさんは?」


 私の言葉で、他の3人もダイヤさんがいた方を見る。


「な!まさか。あいつ生きていたのか!? それとも、森の魔物に食われちまったか?」


 杖を構え当たりを警戒するリズさん。

 しばらくして彼女は、「ここにいるのは危険だな。すぐに襲ってくるわけでもなさそうだし、1度村へ戻ろう。」と言い、私達は村へ戻ることにした。

 リズさんが、目をこすって「あれ?ここは?」と言っているイーシャさんの手を引く。


「ちょっと、悪夢にうなされてたからな。外に出てたんだ。さぁ、帰ろう。」


 リズさんが笑顔を、イーシャさんに向ける。

 直後、彼女は不思議そうな顔をした。


「ん?イーシャ。お前何を持って…。」


 リズさんは、イーシャさんの持つものを見るために視線を上げた。そして───


「わぁ!!」


 リズさんは、イーシャさんから離れる。

 イーシャさんの手には、黄色い風船が握られたままだった。


「ま、まさか爆弾か!?」


 驚いている彼女たちに、私が応える。


「いえ。風船からはマナを感じません。」


「そ、そうか。」


 リズさん達は、「ほっ」とため息を着く。

 そして私達は、改めて村へと向かっていった。


 ──────────


 私達は村へ戻り眠りについた。

 そして次の日、私達が目を覚ますと、村に、リードさんとタンクさんが来た。


「お?遅かったな。上手くいったのか?」


 リズさんが2人に駆け寄る。

 しかし2人は、あまり元気そうではなかった。


「いや、それが…。」


 苦しそうに言うタンクさんに、真剣な顔をするリズさん。


「どうかしたのか?」


 突然、リードさんが、リズさんに頭を下げる。

 この人、よく頭下げるなぁ。


「すまねぇ。王は納得してくれなかった。『せっかくの儲けを無くすつもりは無い。』との事だ。」


「本当に、あの王。自分のことだけだな…。」


 若干引いたように言うリズさん。

 よく分からないけど、オウさんとの話は上手くいかなかったらしい。


「それで。それに俺達は、反論したんだが。そのせいで、俺らは首都『ヒューマノン』から追放。出禁を食らってしまった。」


「まじか…。」


 3人はしばらく黙っていた。

 そして、リズさんが口を開く。


「そ、そうだ。子供達の拉致をしていた男を見つけた。」


 リズさんの言葉に、2人は驚いていた。


「ダイヤという男で、太ったピエロだった。リチュに、ガキン。キズーの手伝いもあって、奴を上半身だけにできたんだが。少し目を離している隙に、そいつは消えちまったんだ。」


「ふむ、普通に考えれば、なにかの動物に食われたか。」


 リードさんが顎に手を当て言った。

 彼の言葉に、リズさんが頷く。


「ああ。だが、あいつは自分のことを悪魔と言っていた。何があるかは分からん。念の為気をつけてくれ。」


 リードさんとタンクさんは、彼女の言葉に「分かった。」と返した。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?