目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第11話 黒竜を操る調教師(クラブ)

 私は、ふと思い出し、タンクさんに顔を向ける。


「そういえば、タンクさん!」


 ずいっと近寄る私に、押され気味に「お、おう。」と答える。


 私は続ける。


「タンクさん失恋したって、聞きました!失恋って悲しい事だって、私知ってます!私で良ければ相談にのりますから気軽に話してくださいね!」


 タンクさんは私の話を聞いて、「ちょっと待て。」と言い、左手で私の前に壁を作る。


「その話。誰から聞いた?」


 そう、静かに聞くタンクさんに、私は疑問符を浮かべつつ答える。


「リズさんですが?」


「リズぅ!!」


 私の言葉を聞いた瞬間、タンクは低い声を上げ、リズさんの方を見る。

 リズさんは背を低くして、どこかへ行こうとしていた。

 タンクさんに名を呼ばれた彼女は、背を伸ばし、慌てた様子で話す。


「ほ、ほら。よかったじゃないか。リチュはお前の話を聞いてくれるってよ。」


「勝手にホラ吹きやがって!! 許さねぇからな!!」


 タンクさんは背中にしょっている大斧を持ち上げる。


「やっべ!これ、まじでキレてるわ!!」


 リズさんは、タンクさんから逃げ出し、彼は彼女を追いかける。


「逃げるな!」


「ちょっと待ってくれ!お前の本心を隠したうえで、あの質問に答えるにはそう言うしかなかったんだよ!お前に気を使ったんだぞ!」


「黙れ!」


 タンクさんとリズさんは、追いかけっこを続ける。


「争いは───」


 私が2人を追いかけようとしたが、それをリードさんが止める。


「放っておけ。彼らはちょっと、じゃれてるだけだ。」


「おい!リード!! お前も結構性格悪いよな!」


 リズさんはそう叫んだ。


 ──────────


「あんなに怒らなくてもいいのによぉ。」


 リズさんは、タンクさんに殴られて、出来たたんこぶをさすりながら愚痴を言う。

 タンクさんは、「俺はとりあえず、ダイヤとかいう男が森の周りにいないか見てくる。それまでに、ちゃんと誤解をといておけよ!」とリズさんに言って、森に入っていた。

 たんこぶをさするリズさんの頭の上に、ウィングさんが乗る。


「なんだよ?」


 ウィングさんを睨むリズさんに向かって、ウィングさんは風魔法をかける。

 すると、リズさんのたんこぶがみるみるうちに消えていく。

 ウィングさんの風魔法を感じたのか、さっきまで寝ていたチュンチュさんが起きて、慌てた様子で、リズさんの肩に乗り、歌を歌う。


「あ、ありがとう。こっちのナイトバードは結構優しいんだな。昨日も私に治療してくれたしな。」


 リズさんは、頭の上に乗る、ウィングさんを見る。

 そして、次にチュンチュさんの方を見る。


「こっちも、ああ。多分回復魔法が出来ないのも知れないが、優しいのは伝わった。だが───。」


 リズさんが最後に、ヘッドさんと睨みあう。


「お前だけは、やっぱ気に入らねぇわ。」


 そんなリズさんに、リードさんは飽きれたように言った。


「ナイトバード相手に、威嚇しあうのやめてくれ。恥ずかしくないのか?」


「うるせぇな。こいつは私の頭をつついてくるし、睨んでくるし、むかつくんだよ。」


 今にも喧嘩しあいそうな2人の視線を妨害するように、ヘッドさんの目の前で、手の壁を作る。


「そ、そういえば、タンクさんの言っていた。誤解ってなんですか?」


「そ、それは…。」


 私の言葉に、リズさんは誤魔化すように目をそらす。


「なんですか?」


 私は、リズさんの目を追いかけるように、顔を移動させる。


「や、やめろよ!人の形じゃなくなってきてるぞ!そ、それより。」


 リズさんが、後ろを向いて言った。


「タンクのやつ、遅くないか?少し様子を見に行かないか?」


 リズさんの言葉に、リードさんも頷く。


「確かに、ちょっと遅いな。少し様子を見に行ってくる。」


「わ、私も行くぞ。」


 リードさんとリズさんは、村の出口へと向かう。


「あ。私も行きます。」


「お、おい!なんでリチュまで、ついてくるんだよ!」


 私を拒否するリズさんに向かって、私は言う。


「何かあった場合、数が多いほうがいいでしょう?それに、タンクさんの言っていた誤解の話が気になります。」


「だ、だからそれは…。」


 私はなかなか、話さないリズさんに同じ質問をしながら、森の奥へと走っていった。


 ──────────


「タンク⁉」「タンク⁉」「タンクさん⁉」

 私達が、森の奥をしばらく歩いていると、倒れているタンクさんと、その前に、緑色の髪と目をした。私を騙して人間の敵にしたピエロ少女がいた。


「ぷふ~。この雑魚男の仲間じゃ〜ん。それに、雑魚スライムもいるじゃない。」


 ピエロ少女は、私に向かって馬鹿にするような笑みを向ける。


「アンタ。人間と仲良くなれたんだ。あんなに嫌われてたのに、体でも売ったの?」


 クビを傾げる私を無視して、リードさんが言う。


「スライムの村を調べた結果。人間に危害を加えてないことが分かった。だから俺らはこいつらを信用した!それだけだ!!」


「ふん、ど〜だか。すぐにその本性さらけ出してやるわ!! この『猛獣使い・クローバー』がね!」

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?