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第12話 護らねばならぬ者

「お前ら逃げろ!!」


 タンクさんが、私達に向かってそう叫ぶ。

 それを見てクローバーさんが、タンクさんを笑う。


「フフッ!本当にこいつらを守りたいのね。アンタは。

 そうだ!こいつらに聞かせてやるよ。アンタの武勇伝。」


 クローバーさんが、小馬鹿にするような顔をしたまま、私達を見る。


「聞いてよ。こいつ、アンタらを守る為に、必死で戦ってたのよ。」


 その後、クローバーさんが、『クローバーさんとタンクさんが出会ってから、私たちが来るまで』の話をし始めた。

 私はその話から、その光景を思い浮かべた。


 ──────────


「まったく、リズのやつは。勝手に変なこと言いやがって…。」


 そんな事を呟くタンクの後ろから、クローバーがブラックドラゴンに乗って現れ、彼に話しかける。


「お兄さ~ん!ちょ~っとアタイと話さねぇ?アタイはクローバー。猛獣使いのクローバー。付き合ってよ、鎧のお兄さ~ん。」


 タンクが、自分に話しかけてきたクローバーを見て驚く。


「お前は!? あの時ドラゴンに襲われてた少女!! なんで、ブラックドラゴンと一緒にいるんだ!!」


 驚くタンクに、クローバーが腹を立てる。


「あのさぁ!ドラゴン、ドラゴンって。この子には『ノワール・トルネード・グレーティスト・オメガ』っていう、とってもハイセンスな名前があるんだけど!?」


 しかし、彼女はすぐに、タンクを小馬鹿にするような態度をとる。


「それにぃ。アタイがなんでこの子と一緒にいるか分からないって?アンタ、バカ?どう見たって、あの時この子を使って、アンタらを騙して、あの雑魚・・スライムを孤立させたってことでしょうが。」


 タンクは、彼女の言葉に怒りを覚えた。


「お前。今なんつった?」


「ぷふ。なぁに?もしかしてアタイにバカにされた事、気にしてたりするぅ?」


「そんな訳ないだろ!! ふざけるのもいい加減にしろ!!」


 タンクが背中に携えていた大斧を取り出し、クローバーに向かって振り下ろす。


「おっと。危ない。」


 クローバーはそれをいとも簡単に、ドラゴンごと移動して避ける。


「お返しするよ!!」


 そして、クローバーがそう言うと、ドラゴンが尻尾でタンクを押し飛ばす。


「ぐはっ!!」


 吹き飛んだタンクは、後ろにあった大木に叩きつけられる。


「あのねぇ。アタイは別に、アンタと戦いに来たわけじゃないの。話さないって聞いたじゃない。」


「何が聞きたいって言うんだよ!」


「ダイヤの居場所。知らない?」


 クローバーの言葉に、タンクは驚く。


「ダイヤを知っているのか⁉」


「知ってるよ。だって、ダイヤとアタイは仲間同士だもん。で、どこにいるの?昨日から連絡が取れないんだよね。」


 頭をかく彼女に向かって、タンクが言う。


「そいつは、俺の仲間が殺したらしいが。」


 タンクの答えに、クローバーがまた、小馬鹿にしたように笑う。


「ぷふ~。バッカじゃないの?アタイら悪魔族が、そう簡単に死ぬわけないじゃない。そんなウソついても無駄無駄。」


 何も答えないタンクを見て、クローバーが続ける。


「ま、いいや。話してくれないなら。どうせ、あいつ。『ヒューマ』の村に行くって言ってたし。そこ襲えば見つかるかな。」


 クローバーのその言葉に、タンクは怒声を上げる。


「待てよ。そ、そうはさせねぇぞ。」


 痛みに耐えながら、ゆっくりと立つタンクを見て、クローバーが笑う。


「ぷふ。どうするの?アタイのノワール・トルネード・グレーティスト・オメガにアンタ1人で勝てると思ってるの?」


「勝てるとは思ってねぇが、それでも、リードにリズ。それに、リチュあいつも。そして、『ヒューマ』の村の子供達。俺には守らねばならない奴がいるんだよ!!」


 猛獣をもビビらせるような、威圧感を出すタンクを見て、クローバーが言う。


「ふ~ん。…、ほんとバカ。」


 ドラゴンが前足で、タンクをはじく。

 吹き飛んだタンクは、木々を2、3本分貫通して吹き飛んだ後、うつ伏せに倒れる。


「ぷふ~。あんなに、いきまいといて、この体たらく。雑魚すぎ~。」


 ドラゴンに乗ったクローバーが、タンクの目の前に移動する。

 そして、ドラゴンが前足を上げる。


「じゃあ。死ね。」


 ドラゴンが、タンクを押しつぶそうとした時、タンクの名を叫ぶ者が2人と1匹。

 リードとリズ。そしてリチュだった。


 ──────────


「どう?こいつの武勇伝。いきまいた割にめちゃくちゃあっさり負けて、だっさくね。」


 クローバーさんは話を終えた後、ゲラゲラと笑う。

 それを見て、リズさんが激怒する。


「何がダサい⁉ 命がけで、守ろうとしたタンクを馬鹿にするな!!」


 リズさんの怒りに、クローバーさんは笑顔のまま言う。


「なんでよ。どれだけ命を賭けたって、結果、守れなければ何の意味もないじゃない。」


 しかし、彼女はその後、少し笑顔が消える。


「そう…。助けられなければ意味ないのよ…。」


 しかし、その悲しげな表情は一瞬で終わる。


「アンタらもこの、さいっきょーの猛獣使い。クローバー様が殺してあげる。そうしたら、この雑魚男の頑張りなんて無駄になるでしょ?」


 クローバーさんのその言葉に、リズさんが挑発する。


「ふん。何が『さいっきょー』よ。ただ、そのドラゴンが強いだけで、アンタはただの、虎の威を借りる狐じゃない。」


 その挑発に、クローバーさんは腹を立てたようだった。


「は?アタイはね。どんな猛獣でも操れるの!それこそが、アタイがさいっきょーって証よ。例えばそこのナイトバード!!」


 クローバーさんが、ブラックドラゴンの背から降りて、私の頭の上で寝ているヘッドさんを指さす。

 他の2匹は殺伐とした場の空気を感じたのか、いつの間にかどこかへ行ってしまったのだが。ヘッドさんはそんな中でも私の頭の上で寝ていた。


「ヘッドさんですか?」


 私が頭の上に目を向け、その子の名前を呼ぶ。


「へぇ。『ヘッド』っていうのね。スライムの癖に良い名前をつけるじゃない。」


 クローバーさんが私の目の前に移動する。

 そして、そこでなぜか私の目の前で地団太を踏む。


「ちょっと、雑魚スライム!! アンタしゃがみなさいよ!! アタイの手がヘッドさんに届かないじゃない!!」


 私はクローバーさんの言うとおりに、しゃがむ。

 そして、ヘッドさんの目の前に、人差し指を向けて言う。


「じゃあ、ヘッドさん!! アタイに回復魔法!!」


 そう言われたヘッドさんは───


 ────グサッと、クローバーさんの指をくちばしで刺す。


「ポピーーーーーー!!」


 クローバーさんはそう叫んで、地面に転がる。

 それを見たドラゴンが、急いでクローバーさんの方へ近寄り、ヘッドさんに向かって威嚇する。

 ヘッドさんも威嚇しかえす。

 私達は、怖がるブラックドラゴン相手に、度胸あるなぁ。


「ふん。やっぱり、アンタは何もできないじゃない。」


 リズさんが、クローバーさんに近寄りながらそう言う。


「おい、リズ!あまり前に出るな!」


 リードさんの注意も無視して、クローバーさんの目の前に行く。


「やっぱり、虎の威を借る狐。いや、ドラゴンの威を借る自称最強少女。アンタ1人じゃ何もできないじゃない。」


 馬鹿にされたクローバーさんは、ゆっくりと立ち上がり、怒りの表情を見せる。


「言ってくれるじゃない!でもね、アタイだって努力したんだよ!」


 クローバーさんの右手から、大量の風のマナが出てくる。

 そして、彼女は拳を握り締める。


「リズさん!危ないです!!」


「え?」


 私の叫びに、リズさんは混乱する。

 そして、クローバーさんが拳を振りかぶる


覚悟はいいかAre you OK?『フタエノショウゲキダブルインパクト』!!」


 クローバーさんのパンチを食らった、リズさんはものすごい勢いで吹き飛び、木にぶつかる。


「ぐは!」


「「リズ!!」」「リズさん!!」


 リードさんとタンクさん。そして、私が吹き飛んだリズさんを心配する。

 クローバーさんが、それを見て笑う。


「ふふ。どうかしら。自分の拳に風魔法を纏わせて、殴りつけ、一瞬にして2回連続の攻撃を与える技。アタイも戦えるって分かったかしら!!」


 場の空気に緊張が走った。

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