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第13話 絆

「大丈夫か?リズ。」


 心配するリードさんに、リズさんは起き上がりながら答える。


「ああ。悪い。油断した。今度はあんなもん食らうもんか!」


 リズさんのその言葉を聞いて、クローバーさんが彼女を笑う。


「そんな自信も無駄よ。何度も食らわせてやるんだから!やっちまえ!ノワール・トルネード・グレーティストオメガ!」



 クローバーさんがドラゴンに命令をすると、ドラゴンが咆哮をあげ、炎の息を吐く。

 私達はバラバラになってそれを避ける。


「逃がさんぞ!」


 クローバーさんがそう言って、リズさんを、持っていた鞭で掴む。


「はい!捕まえたぁ!」


 クローバーさんは、鞭を引き、リズさんを引き寄せる。


「うわ!?」


 リズさんが宙に飛ばされる。

 それを向かいうつようにジャンプするクローバーさん。

 そして彼女は、自身の右膝に風のマナを集める。


「『ドラゴニック・ニー』!!」


 クローバーさんが、飛んだリズさんに飛び膝蹴りをし、さらに膝についた風の魔法でリズさんを吹き飛ばす。


「ぐはっ!」


「リズ!?」


 吹っ飛ばされたリズさんを見たリードさんが、クローバーさんに向かって走る。

 クローバーさんが、着地するタイミングで彼女を斬ろうと狙ったのだ。

 しかし、クローバーさんを守るように、ドラゴンが尻尾を振り、リードさんを攻撃しようとする。


「ちっ!!」


 リードさんはギリギリでドラゴンの攻撃を、ジャンプして避けた。


「ぷふ。空中じゃ身動き取れないからそこを狙うってのはいい考えだったけれど…。でもアタイとノワール・トルネード・グレーティストオメガは強〜い絆で結ばれた名コンビなのよ!アタイの事はこの子がしっかり守ってくれるのよ!」


 クローバーさんの言葉に、リードさんと帰ってきたリズさんが言う。


「やはり、ブラックドラゴンが脅威だな…。」


「ちっ。やはりあのドラゴンを先に倒すしかないか!」


 2人の言葉に、クローバーさんが地団駄を踏んだ。


「アンタら、耳ついてる!? この子には、ノワール・トルネード・グレーティストオメガってとってもとっても、かっこいい名前があるんだから!ちゃんと名前で呼べよ!!」


 怒るクローバーさんの言葉が終わると、一瞬の沈黙の後、リードさんとリズさん、そして私が口を開く。


「ブラックドラゴン。」


「ドラゴン。」


「ノワトルさん!」


「変に略すな!名前で呼べ!っていうか…。」


 クローバーさんが振り向く。


「雑魚スライム!いつの間に後ろに!!」


 そう。私はクローバーさんがリズさんと、リードさんと戦っている間に、彼女の後ろ。タンクさんの所へと移動していた。


「タンクさん!大丈夫ですか?」


 私はタンクさんの方を向いて、そう言う。


「リチュ!早く逃げろ!! ブラックドラゴンを相手にするなんて無茶だ!」


 タンクさんの言葉に、私は笑顔を返す。


「大丈夫です。それより、早く怪我を治さないと!」


 私はそう言って、両手をタンクさんに向ける。


「『痛いのヒー痛いの飛んでいけリング』!!」


 私の両手から、癒し効果のある水を生み出し、それをタンクさんにかける。


「これは…。ポーションか?しかもとてつもなく濃縮された、貴重なポーションじゃないか。スライムはこんなものも作れるのか!?」


 瞬く間に回復したタンクさんが、私にそう言った。


「ポーション?『傷を癒したい。』その気持ちを水のマナに込めてできた水ですが。そう言うんですか?」


 私が頭をかしげると、タンクさんはさらに驚いた。


「なに!? 薬草を潰して、さらに汚れのない水を混ぜて、それでも10回に1回成功するようなポーションを気持ちとマナだけで…。」


 どうやらポーションというものはとても貴重なものらしい。


「しかし、おかげで助かった。」


 タンクさんはそう言うと、大斧を持ち、立ち上がる。


「さぁ、リベンジマッチだ!ドラゴン娘!!」


 タンクさんが虚空に斧を振るう。

 それを見て、クローバーさんが笑う。


「ぷふ。また、すぐにボコられるのがオチでしょ?やっちゃえ!ノワール・トルネード・グレーティストオメガ!」


 クローバーさんの命令を聞いた、ノワトルさんが咆哮をあげ、タンクさんに向かっていく。

 タンクさんは、ノワトルさんが襲ってくるのも臆せず大斧で盾を殴ることで大きな音を出す。

 その音に驚いて、ノワトルさんは動きを止める。


「今だ!!」


 そこにすかさず、タンクさんが斧でノワトルさんを攻撃する。


「ノワール・トルネード・グレーティストオメガ⁉」


 タンクさんに攻撃されたノワトルさんを見て、クローバーさんが驚く。


「ペットの心配より、自分の身の心配をしな!!」


 リズさんがそう言って、杖を構える。


「なに?アタイを魔法で蹴散らそうって思ってんの?『待の構えミリタリー・スタイル』!!」


 クローバーさんはそう言って、片膝を付き、両脇をしめ、両拳を顔の前に持っていく。


「膝をついて、降参か?『火炎魔弾ファイヤーボール』!!」


 リズさんは、クローバーさんに向かって、『火炎魔弾ファイヤーボール』を放つ。


「『音速弾ソニック』!!」


 クローバーさんが両手を振り、小さな竜巻を起こす。

 その竜巻は、リズさんの『火炎魔弾ファイヤーボール』をかき消しリズさんを狙う。


「なに!? 『魔法の盾マジックシールド』!!」


 リズさんが生み出した『魔法の盾マジックシールド』がクローバーさんの『音速弾ソニック』を防ぐ。

 しかし───


「『音速弾ソニック』!『音速弾ソニック』!『音速弾ソニック』!」


 ───クローバーさんは連続で『音速弾ソニック』を放ちまくる。



「くっ…。」


 リズさんは、『魔法の盾マジックシールド』で守ってはいるが、反撃の隙を見抜けない。


「ほらほら!どうしたの?このまま寿命タイムアップが来るまでイモってる気?」


 リズさんが攻撃出来ないのを確認し、リードさんがクローバーさんに向かって走る。


「ぷふ。そっちにも撒けるわよ!『音速弾ソニック』!」


 リードさんは、『音速弾ソニック』を飛び上がり避けた。


「ぷふ。狙い通り!」


 クローバーさんも飛び上がり、再び右膝に風のマナを集める。


「『ドラゴニック・ニー』!!」


「ぐはっ!!」


 リードさんは、クローバーさんの膝蹴りに当たり吹き飛んでしまう。


「リードさん!?」「リード!?」


 私とリズさんが、そう叫ぶ。

 それを見てクローバーさんが笑う。


「ぷふ〜。『飛ばせて落とす』。この『待の構えミリタリー・スタイル』を突破出来ない限りアンタらに勝ち目ねぇから!!」


「ぐは!!」


 クローバーさんが、笑っていると、ノワトルさんにしっぽで攻撃されたタンクさんが、リズさんの方に飛んでいく。


「タンク!? 大丈夫か?」


 心配するリズさんに、クローバーが再び、『待の構えミリタリー・スタイル』をとる。


「あとは、アンタ1人。さいっきょーのアタイに喧嘩を売ったことを後悔しなさい。」


「私を忘れていますよ!!」


 私はそう言ってクローバーさんに向かって走る。


「アンタはもとより数に入ってないのよ!『音速弾ソニック』!」


 クローバーさんが、私の方を向いて『音速弾ソニック』を放つ。

 私はそれを飛んで避ける。


「学習能力のないバカスライムね。」


 クローバーさんが私を迎え撃とうと飛ぶ。


「『囮花火トーチ』!!」


 私は、クローバーさんに向かって小さな火の玉を放つ。


「ぷふ。こんなカス弾で牽制?」


 馬鹿にするクローバーさんの目の前で、『囮花火トーチ』は大きな音を立てて爆発する。


「うわ!?」


 『囮花火トーチ』にまともな火力は無い。

 しかし、強い光と大きな音に驚いたクローバーさんは空中で姿勢を崩す。

 その隙に、私はリズさんの元へ向かう。


「大丈夫ですか?」


「ああ。私は平気だ。だが、タンクが…。」


 リズさんが心配そうな目で見下ろす先にいるタンクさんは、ボロボロになっていて、顔を覆う鎧(外皮の名称は鎧らしい)からは、赤い液体。血が流れていた。

 私は、彼に向けて両手を向ける。


「『痛いのヒー痛いの飛んでいけリング』!!」


 私の両手から癒しの水が吹き出る。その水がかかると、タンクさんはみるみるうちに回復していく。


「す、すげぇ。」


 リズさんがそう呟いたあと、突然叫んだ。


「リチュ!危ねぇ!!」


 私が振り向くと、ノワトルさんが近くに来ていて、右前脚を上げていた。

 このままでは、皆引き裂かれる。


「『魔法の盾マジックシールド』!!」


 リズさんが、盾を作るが、ドラゴンの攻撃を防ぐにはあまりにも脆すぎる。

 『魔法の壁トーチカ』を生み出そうにも、水のマナを集めるために、土のマナを少なくしていて、必要分を集めるには時間が足らない。


「やっちまえ!ノワール・トルネード・グレーティストオメガ!!」


 ノワトルさんが、前足を振り下ろす。

 そして私達は引き裂かれる。

 それを想像したが、直前で防がれる。


「『泡の壁シャボンカーテン』!!」


 聞き覚えのある声、聞き覚えのある魔法。

 気がつくと、ノワトルさんは、大量の泡にぶつかり吠えていた。

 泡程度、痛くはないだろう。しかし、あのドラゴンの注意を引くことは出来たらしい。


「ありがとう。リチュ。」


 タンクさんの意識が戻ったのを確認すると、私達はノワトルさんから、距離をとる。

 そして、下がったところに、彼らがいた。

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