よぉ、お前ら、息してるか?
毎日毎日、ヘドが出るようなニュースと、映えを強要してくるSNSのタイムラインにうんざりしながら、なんとかサバイブしてるってか。わかるぜ、その気持ち。心の底からリスペクトする。俺もそうだ。満員電車に揺られ、理不尽な上司にヘコヘコし、コンビニのちょっと高いアイスを手に取るのですらためらう。そんな日々の繰り返し。将来?知るかよ。年金?もらえるわけねえ。政治?ああ、年寄りたちがなんか勝手に決めてるやつだろ?選挙?投票?かったるい。一票入れたところで、俺たちの人生が1ミリも変わるわけねえし。
…なんて、本気で思ってるわけじゃねえよな?
万が一、億が一、お前の心の片隅にそんなナメくさった考えが巣食ってるなら、今すぐその腐った根性を叩き直してやる。耳の穴かっぽじって、よーく聞きやがれ。
お前らが「めんどい」「意味ない」と吐き捨ててるソレはな、お前の未来、お前の好きなヤツ、お前が愛するカルチャー、お前が推してるアイドル、つまり、お前が生きるこの世界のすべてを守るための、たった一つで最強の武器なんだよ。
いきなり説教臭えって? まあ、そう焦るな。今日はそんな高尚な話をするつもりは毛頭ねえ。代わりに、最強の助っ人を連れてきた。今から1300年近く前の、奈良時代を生きた、一人のイカしたギャルの話をしよう。
そいつの名は、狭野弟上娘子(さののおとがみのおとめ)。名前からしてパンチが効いてる。彼女が詠んだ、クソ熱いラブソングがある。
君が共 行かましものを 同じこと 後れて居れど よきこともなし
きみがむた ゆかましものを おなじこと おくれてをれど よきこともなし
パンチラインすぎる。現代語に訳すと、こうだ。
「アンタと一緒に行けばよかった!どうせ同じことなら、ここに一人で残ってたって、良いことなんてマジで一つもありゃしねえんだよ!」
シビれるだろ。これは、彼女の旦那である中臣宅守(なかとみのやかもり)が、っぴきならない事情で都から遠い越前の国へ島流しにされた時に詠まれた歌だ。当時、流罪人の妻は、希望すれば夫についていくことが許された。なのに、彼女はそれを選ばなかったのか、選べなかったのか。理由は定かじゃない。ただ、見送った後、彼女の胸を突き刺したのは、とんでもない後悔の嵐だった。
「なんで、アタシ、行かなかったんだ…?」
「アイツを一人にさせて、都に残って、それで何の意味がある?」
「一人で寂しく飯食って、アンタのいない夜を過ごして、アタシは幸せになれるのか? なれるわけねえだろ、バーカ!」
そんな、胸をかきむしる魂の叫びが、この三十一文字(みそひともじ)に凝縮されている。彼女は後悔したんだ。死ぬほど、だ。行動しなかった自分を、選ばなかった自分を、呪ったに違いない。
さて、ここでお前らに問う。
この狭野弟上娘子の後悔、何かに似ていないか?
そう、それだ。選挙に行かずに、クソみてえな結果がニュースで流れた後、「あーあ、なんか世の中終わってんな」「給料上がんねえかな」「もっとマシな世の中になれよ」って、こたつ記事を眺めながらスマホ片手に愚痴をたれ流してる、お前の姿そのものだ。
「君が共 行かましものを」
この「君」は誰だと思う?
狭野弟上娘子にとっては、愛する旦那、宅守だった。
じゃあ、お前にとっての「君」は?
それは、お前が「こうであったら最高だ」と夢想する、理想の未来そのものだ。
給料がちゃんと上がり、好きな服やコスメを値段も見ずに買える未来。
無駄な残業に追われず、定時でダッシュして推しのライブに向かえる未来。
結婚しても、子供を産んでも、自分らしく輝き続けられる未来。
性別や国籍や外見で差別されず、誰もが胸を張って生きられる未来。
そういう、お前が心の底から渇望するキラッキラの未来。それがお前の「君」なんだよ。
そして、「行かましものを」。一緒に行けばよかった、と。
そう、投票所に行って、その未来にベットすりゃよかったんだ。お前の一票という名の、激アツのラブレターを、未来っていう名の推しに叩きつければよかったんだ。
なのに、お前はどうした?
「どうせ同じこと 後れて居れど よきこともなし」
まさしく、この通りだろうがよ!
「だって、めんどくさい」
「どうせ何も変わらない」
「政治とか、マジわからん」
そんな言い訳を盾にして、家でゴロゴロ寝っ転がり、無為に時間を溶かしていただけ。
未来への片道切符が目の前にぶら下がっているのに、手を伸ばさなかった。
行動する権利を、自ら放棄した。
その結果、数年後はどうなってる?
「よきこともなし」
まったく、良いことなんて何一つありゃしない。
給料は上がらず、税金は上がり、未来はどんどん暗くなる一方。
「あの時、ちゃんと考えて投票してたら、少しは違ったかもな…」
そう、狭野弟上娘子と同じだ。手遅れになってから天に唾を吐く。クソダサい後悔を、無限にリフレインしているだけだ。
冗談じゃねえ。
そんな未来、俺は断固としてごめんだ。
お前だって、そんな結末は望んでいないはずだ。
勘違いするな。
俺は、お前に「社会のために!」とか「清き一票を!」なんて、陳腐な常套句を叫ぶつもりはない。そんなものは、意識高い系のインフルエンサーにでも任せておけばいい。
俺が言いたいのは、もっとシンプルで、ずっとパーソナルで、どこまでもエゴイスティックな話だ。
選挙は、最強の「推し活」なんだよ。
お前、好きなアイドルや俳優はいるか?
その「推し」が、もし総選挙に出るとしたらどうする?
CDを買い、投票券をぶち込み、なけなしのバイト代をつぎ込んででも、一位にしてやりたいと思うんじゃないか?
推しが笑顔でステージの真ん中に立つ姿を想像するだけで、飯が三杯は食える。
それとまったく同じだ。
お前の「推し」は、「お前が望む未来」そのもの。
その「推し」をセンターに立たせる唯一の方法が、選挙なんだ。
投票用紙は、推しへのファンレターだ。お前の政策(マニフェスト)という名の愛の言葉を連ね、「お前しか勝たん!」という熱情をぶつけるんだよ。
「一票じゃ何も変わらない」?
まだそんな寝ぼけたことを言っているのか。
お前が推しに送る「いいね!」一つが、推しの心を救う。
お前が推しに送るリプ一つで、推しは「明日も頑張ろう」と思える。
その小さな一つひとつの応援が、集まって束になることで、とんでもないパワーを生むことを、お前はSNSの世界でとっくに知っているはずだ。
選挙も同じこと。
お前の一票は、確かに大海の一滴かもしれない。
だが、その一滴がなければ、決して川は生まれない。
お前の一滴、俺の一滴、あいつの一滴。
最初はか細い流れでも、やがて岩をも砕く激流になる。
それは社会全体を巻き込む、巨大な「うねり」へと成長するんだ。
今まで見向きもされなかった、俺たち若い世代の声。
「あいつらはどうせ投票に来ない」と、ナメくさっていた連中。
そいつらのケツに、俺たちの「うねり」を叩きつけてやるんだ。
「おい、俺たちの声が聞こえるか?」
「俺たちの未来を、勝手に決めるんじゃねえぞ」
と。
政治家なんて、所詮は票がなければただの人だ。
俺たちが「こっちを向け!」と声を上げれば、嫌でもこちらを向かざるを得なくなる。
俺たちの望む未来に、耳を傾けざるを得なくなるんだよ。
わかるか?
選挙に行くのは、受け身の行為じゃない。
超絶に能動的で、攻撃的で、最高にロックな自己表現なんだ。
だからこそ、もうやめにしないか。
「どうせ何も変わらない」と悟ったフリをして、行動しない自分を正当化するのは。
それは単なる思考停止だ。未来に対するサボタージュだ。
何より、自分自身と、自分の愛する者たちへの、最悪の裏切りに他ならない。
1300年前、愛する男と共に行く道を選ばず、一人残って後悔に打ちひしがれた狭野弟上娘子。彼女は血の涙を流し、「よきこともなし」と叫んだ。
俺たちが、その叫びを繰り返すわけにはいかない。
お前に、守りたいものはないのか?
大好きな音楽、クソ面白いマンガ、魂を揺さぶる映画。
仲間とバカ笑いできる時間。
恋人と手をつなぐ帰り道。
家族と囲む、温かい食卓。
そのすべてが、お前が生きるこの社会の土台の上にある。
その土台が腐ってしまえば、お前の大切なものは、音を立てて崩れ落ちる。
それを黙って見ているのか? 指をくわえて待っているだけか?
ふざけるな。
さあ、顔を上げろ。
次の選挙がいつかなんて、調べればすぐにわかる。
誰に投票すればいいか、わからない? 上等だ。それもググれ。嫌になるほど情報が出てくる。政党のサイト、候補者のSNS、政策比較サイト、なんでもいい。
くだらないゴシップ記事を追う暇があるなら、5分でいいから、そっちに目を通してみろ。
お前が「これだ!」と信じられる誰かが、一人くらいは見つかるはずだ。
完璧な人間などいない。だが、「こいつなら、今より少しはマシな未来にしてくれるかも」と思えるヤツに、お前の魂を、愛を、未来を託すんだ。
投票日、当日。
ダチと連れ立って行け。恋人とデートがてら行け。
推し活のついででも構わない。
投票済証をもらい、SNSにアップして「#選挙行ったぜ」と自慢しろ。
「え、行ってないの? ウソだろ、ダッサ」と、行かなかった連中を煽りまくれ。
それが、新しいムーブメントの着火点になる。
俺たちは、もう後悔しない。
狭野弟上娘子のように、「行けばよかった」なんて、感傷に浸っている暇はない。
俺たちは、行く。
「君が共 行くぞ、今から!」
そう高らかに宣言し、俺たちの手で、俺たちが望む未来を、掴み取りに行くんだ。
わかったか。
お前の一票は、無力じゃない。最強の愛の弾丸だ。
その弾丸を撃ち込めるのは、世界中で、お前しかいない。
さあ、次の戦いの準備はいいか?
俺たちの声で、俺たちの愛で、このクソッタレな世界を、根底からひっくり返してやろうぜ。
面白くなるのは、いつだって、ここからだ。
ついてこい。最高の未来を見せてやる。