「小田桐さんが、どうかした?」
「おまえ、妙に見つめていたよな。その……気に入ったのか?」
気に入ったというか、目の前にいることが、多かっただけなんだけど。
「確かにキレイ目男子で、目の保養だなぁとは思ったよ」
「しかも結構、話が盛り上がっていたよな」
「…………」
(もしかしてタケシ先生、小田桐さんにヤキモチ妬いているんじゃないか!?)
体に回してる腕の力を抜いて、じっとタケシ先生の顔を見つめると、わざわざ横を向いて、俺から注がれる視線を逸らした。
「あんまり仲良くなるなよ。桃瀬に文句言われるの、俺なんだから……」
横を向いて顔を隠したんだろうけど、そのお蔭でしっかりと見えてしまった。頬から耳にかけて、いい色に染まってるタケシ先生の姿。
耳を赤くしながら告げられた言葉に、思わずニヤけてしまう。
「タケシ先生のワガママ、超かわいいんだけど」
「うっさいな、これはワガママじゃなく注意だよ。バカ犬っ!」
「じゃあ今度は、俺のワガママ聞いてよ。この恋するキモチに、是非とも応えてほしいんだ」
そう言って大好きな泣きボクロに、そっと口付けをした。
「俺が嫌いな野菜を頑張って食べたように、タケシ先生にも甘いもの、進んで食べてほしい」
「甘いもの?」
「せっかく、甘い雰囲気に持っていこうとしても、頭突きとか力技で阻止するの、いい加減に止めてほしいんだ」
困った顔して訴えると、心底おかしそうにクスクス笑い出す。
「しょうがないだろ、慣れていないんだから。正直、照れ隠しもあったりするし。だが、おまえのワガママだしな、なるべく頑張ってみるけどさ」
「じゃあ、頑張るついでに今、ここでしよ……」
俺の言葉に一瞬眉根を寄せたけど、しょうがないなと呟き、触れるだけのキスをしてくれた。
「ホント困ったヤツ。わかったよ、いろいろ頑張ったご褒美にくれてやる」
そんな投げやりな物言いなのに、嬉しそうに笑ったタケシ先生を、これでもかと強くぎゅっと抱きしめてから、美味しく戴いた。もう胸がいっぱいで、一度で終わらなかったのは言うまでもない――。