「お疲れ様ー」
『お疲れ様ー』
乾杯のグラスが揺れる。合図を
一同は今、スタジオ『
目的は文化祭の打ち上げ。しかし、そこには文化祭でステージに立ったものだけでなく、
「俺たちまでいいのか?」
全く関係ない自分たちが呼ばれていることに、少しだけ遠慮気味になる春樹だったが……
「いいんだよ。ねっ!」
「いいよん!」
「いいじゃん!」
「まぁ、元々は
「
「えっ……申し訳ありません!
「そんなことないよ」
「それより……
「はい! なんでしょうか?」
「あの時はありがとう。おかげで助かった」
「いえ、いえ。あてぃしの方こそ、力になれたのなら嬉しい限りです」
その優しさが
「それよりさ、ちょっと話したいことがあるんだよね」
「それが僕たちを呼んだ理由だよね。ハニー」
「ハニー?」
「もしかして、アンタらそういう関係!」
ひとりで妄想を繰り広げていく
「もしかして……三角関係……闇が深いバンドだ……」
勝手な憶測を並べていく。
このままでは勝手な憶測で広まりかねないので、
理解してもらえるまで時間がかかってしまったが、なんとか落ち着いたようだった。
「なんだー、紛らわしい言い方しないでよ」
「いや、早とちりしたのはアナタでしょ」
「てへぺろ」
「古いぞ」
ちょっと可愛かったが、冷たい表情で
「えっとね……」
あれは一週間前のことになるだろうか。
文化祭が終わった後の部室での出来事。ステージに立った四人と
*****
「これでスタプロジェクトに勢いがつきますね!」
「うん!」
ステージで最高のステージができたのも嬉しいが、本来の目的を達成できそうなことも嬉しかった。
観客のあの盛り上がり様。多分、あの中から配信に来てくれる人はかなりいるだろう。
集客効果は期待できそうだ。これで一次予選突破に拍車がかかる。それが
皆が喜んでいると突然……
「どうしたんですか?」
突然の行為に
ずっと見られていることに段々と恥ずかしくなってきて、彼女から距離を取りたくなってしまっていた。
「メガネも似合ってたけど、コンタクトにしたら数倍可愛いよ」
今の言葉で彼女は顔から火が吹きそうなほど恥ずかしくなった。
だが、
「
放たれた言葉に
脈絡のない言葉。なぜ、自分なのか。そんな感情が心の中で
しかし、
一緒にデュエットした。その時に思った。
心の奥底からこの人と一緒に音楽がしたい。また一緒にステージに立ちたい。あれで最初で最後にするなんてもったいない。そう思っていた。それに……
「最初にホワイトちゃん……いや、
「ごめんなさい……」
無意識に出してしまっていた。それが彼女の答えだった。
彼女の言葉を聞いて、
思い切っての勧誘だったが、失敗に終わった。
だが、彼女自身が選んだ結果なら仕方ないと自分に言い聞かせる。そして、話題を変えていく。
「じゃあさ、今度打ち上げしようよ! みんなもいいよね!」
「いいよん!」
「いいじゃん!」
咲良も同意の言葉を述べ、一週間後に打ち上げをすることになった。
嬉しそうな
本当は一緒にやりたがったが、これでいいんだ。だって、これ以上夢を見るのは自分には贅沢すぎるから。
*****
『メンバーにならねぇのかよ!』
話の内容を聞いて
今の回想の入りは絶対にメンバー入りするやつだ。拍子抜けしてしまったが、
「みんなまで呼んだ本当の理由はね、
「そうなんだよん!
「演奏も見たいじゃん! どれだけ凄いのか!」
「だからスタジオで打ち上げね……」
この場所を選んだ理由の合点がいった。
観客は四人。だが、この四人は今まで聞いてもらったファンの誰よりも特別に思える人たちだった。
選んだ曲は『
美月のバンド道の原点の曲。
四人でのお披露目は初めてだ。元々は
前はベースとドラムはなかったので、二つの楽器が加わって味が出ている。
夢を追うことの素晴らしさやそこから出てくる苦悩などが歌詞に落とし込まれている。
彼女たちの歌声を聴いて、
眩しい。今の
*****
あの打ち上げから一ヶ月。
精神科へと向かうためにエレベーターに乗ろうとしていると……見慣れた後ろ姿を見た。
「ハニー?」
なぜここに……
風邪でもひいたのか……
色々な可能性があったが、結局彼女のことが気になってしまった
「えっ! なんで……」
その声に反応したかのように、
「
「なんか誰かに見られてる様な気がして……」
「気のせいじゃない? 病院なんだから人の目も多いし」
「そうだよね」
母親の言葉に
だが、
なぜなら、彼女が入って行ったのは