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第56話 『特殊能力』

「んー、他には?マイカっち?」


 アフネスのマイカへの問い掛けは続いている。


「うん、あと、魔法とは違うと思うんだけれど、私が真剣に本当の事を言うと、聞いた人にとっては突拍子もない事でも、何故か信じて貰えたりとか、私が質問すると、聞いてもいないところまで答えてくれたり、その人にとって都合の悪いような事でも教えてくれたりとか…」


「それ特殊能力スキルだねー。ワタシの、真実を見極める能力スキルと同じくー。

 スゴいね、マイカっち。魔法と特殊能力スキル両方使える人、滅多にいないんだけどねー。まー、ワタシら3人とも両方使えるけどー。」


「皆使えるの?」


「うん、ワタシら3人ともー。あ、マイカっち入れて4人かー。

 もしかすると、この4人で全員なのかも?世の中でー。そんだけ珍しいのー。」


「へえー……その能力スキルって、皆はどうやって使えるようになったの?」


「こんな能力があれば!とか、欲しい!とか長い年月ずーっと念じていたら、突然、芽生えたんよー。

 ワタシは100年ちょっとくらいかかったかなー。」


「私は50年もかからなかったわ。

 私の能力スキルは、私が、この人を仲間にしたい!と強く願ったら、私の事を既に仲間だったと認識してくれる能力スキルよ。」


と、リーセロットも自分の能力スキルについて説明した。


 (エルフは長生きなのは知ってるけど、100年とか50年とか、リーセロット、ララ、アフネスの3人は、一体何歳いくつなんだろう…タメ口で良かったのかな…?)


「既に…?」


と、マイカはリーセロットが話した能力スキルについて尋ねた。


「そう、そこから仲間に出来るってもんじゃなくて、既に仲間だった、と思ってくれるのよ。これは凄く役に立ったわ。」


「あ、リーセロット、その能力スキルって、私に対して使った?」


「いいえ、使ってないわ。だって、私の方から貴女あなたの仲間になりたい、ならせて下さいって思っていたから。だから使ってないわよ。」


「私の特殊能力スキルは、完全に気配を消せる事です。あ、ことよ!」


と、ララも自分の能力スキルについて説明し始めた。


「これはね、私が影の魔法で物影に潜んだとしても、気配を消せていないと、バレてしまうことがあったから、気配を消せるようになりたい!って、ずっと思っていたのよ。」


「あっ、それか?インハングの街での事は?」


「はい。あっ、そう!完全に気配を消した筈なのに、あのハンデルって男には気付かれてしまった…」


「うん、ハンデルが言ってたよ。都会の人混みの中、四方八方に人の気配がある中で、全く気配がない所に違和感を感じたからって。

 森の中とかだったら判らなかっただろうって言ってたよ。」


「クッ…使い方がまずかったということね。

 …しかし、ハンデルって…」


「ねっ、ムカつくぐらいに腕が立つんよ、あのハンデルって男は。」


「一通りワタシやリーセロットちん、ララちんから説明を受けて判ったかなー?

 マイカっちは、自分のその能力スキルを手に入れた事についての心当たりはあるー?

 コッチに来て間もないから、前世に強く望んだり、願ったりした事になるよねー。」


「…うん、私さ、前世では真剣に話しても、中々信じて貰えない事が多々あったんだよ。

 …その…さっき皆が笑ったりした見た目のせいでね…

 そんないかついのに、そんなキラキラした目で言われても信用できない!!って言われて、悔しい思いをいっぱいしたんだよ。」


「ギャハハハ!」

「ハハハハッ」

「フフフフッ」


「あ、また笑ったな!…まあ、それで、本当の事を真剣に話しているんだから信じてくれよ!って強く思ってたな…

 あと、前世の警察の仕事の中でね、取調べ、とか、職務質問、とかいう、人に色々と質問して、こちらが知りたい事を聞き出さなきゃならないって事がイマイチ苦手でね…

 その他の事は得意だったから、これさえ得意だったら、完璧なのになあ、って、ずっと思っていたよ。」


「フムフム、なるほど…で、マイカっち、その特殊能力スキルも発動しっぱなしなんよー、ずっと。

 その能力スキル、これから使いたくない場面も出てくるかもよ。だから、能力スキルにも名前付けてオンオフ出来るようにしちゃおうか?」


 (…確かに何でもかんでも信じ込まれたり、何でも聞き出せたりって、人と関わる上で、いつも必要って訳じゃないかもな。)


「うん、そうだね。アフネスの言うとおり、オンオフを使い分けて、ここぞ!という時に使うようにした方が良さそうだね。」


 (んー…名前ねぇ…

 真実…伝える…眼差し…

 それと、職務質問…そういや、事件のこと以外でも色々と聞き出せていたな…

 どんな事でも聞き出せるって、万能だな…)


真伝眼しんでんがん万能ばんのう職務質問!解除!!

 …これで良いのかな?魔法と違って効果がよく判らないけど…」


「んー、大丈夫と思うー。でも能力スキルについても、まだマイカっちが気付いていないモノがあるかもー。

 まー、直ぐに判ると思うしー、心配しないでー。」


「うん。なんか今日一日で、いや、アフネスと話して色々と判ったよ。ありがとう。

 ところで、あなたのその真実を見極める能力スキルは、私にずっと使う感じ?」


「んー、もういいよー、使わなくてもー。

 これからはマイカっちが、これについて聞きたいって思うときに使ってあげるー。

 リーセロットちんやララちんにも、もう全然使ってないしー。まー、付き合い長いからー、そんなもん使わなくても判り合ってるって感じー。」


 (ホッ、何もかも見透かされるのは良い気分じゃないから良かったぜ。

 ていうか、オレの能力スキルも、何の疑いもなく信じ込ませたりとか、都合の悪い事でも聞き出されたりとか、不気味な感じがするだろうから、使い方にはよく気を付けないと…)


「さあて、あらかた話も落ち着いた感じかなー?

 じゃーさー、マイカっち、お風呂でも入るー?この高い塔に登ってきて汗かいたでしょー?」


「お風呂?」


「うん、この部屋の奥にぃー、お風呂あるんよー。」


「こんな高い塔のてっぺんに?」


「うん、そーだよー。この皇宮はねー、私が土の魔法で温泉が出るよーにしたんだけどねー、それを風の魔法でここまで吹き上げて汲んでるのー。」


「へえー、便利な魔法だね。」


「そーでしょー。

 あっ!折角だからー、更なる親睦を深めるためにー、皆で一緒に入ろーよー。」


「えっ!!??

 ああああー、いやいやいや、私、オッサンだよ!中身!判ってるでしょ!!」


「んー、でも今は可愛い女の子じゃんー。だから全然問題ないーみたいなー。」


 (素人童貞だったオレには刺激が強すぎるって!皆、揃いも揃って、美人だし、巨乳だし!下手したら心臓止まるわい!)


「いや!遠慮しとく!!じゃあ、私はこれで…」


 椅子から立ち上がったマイカの両脇を、リーセロットとララが固めた。

 それぞれ、自分の腕をマイカの腕に絡ませて


「そういえばマイカ、貴女あなた、私の胸をずっと、じろじろ見てたわね…

 いいわ、たっぷり生で見せてあげる。

 貴女あなたのも、たっぷり見せて貰うわよ!」


と、リーセロットが言い


「お背中を流して差し上げ…、あ、背中流してあげるわ、マイカ!

 …フフフ、何なら前の方も…ジュル…」


と、ララが続けて言った後、2人声を合わせて


「さっ、一緒に入るわよマイカ!覚悟を決めなさい!!」


と言ってマイカの腕を引っ張り、このアフネスの私室の奥のドアの方へ連れていこうとした。

 アフネスが先回りしてドアを開け、マイカはズルズルと中に引き込まれていく。


「う、うっ、うわああぁぁーーっっ!!」


 全員、中へ入り終わると


「バタンッ!!」


と音を立ててドアが閉まった。


               第56話(終)


※エルデカ捜査メモ〈56〉


 アフネスは、リーセロットやララに対しては、もう「真実を見極める」能力スキルを使っていないと言ったが、彼女がしょ長を務める魔導講究處まどうこうきゅうしょの職員や研究者に対しても極力、能力スキルの使用を控えている。

 これは、いちいち人の本質を覗いてしまうと、当然、好悪別に人を選別してしまう事に繋がり、公平を期さなければならない組織の長として、相応しくない事だと思っているからである。

 ただ一点、ヘローフ教徒であるか否かについては、その能力スキルで調べている。

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