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035  気力=spirit




 このゲームにはスキルが無数に存在する。俺が得てきたスキルもその中のごく一部に過ぎない。そのごく一部には自分でも信じられない動きを、働きをするスキルがある。それは自分で発見するのではなく、たまたま他のプレイヤーが自分と同じスキルを使い、全く違うことをしている場面を目撃して発見することも少なくない。


 その逆もしかり。


 同じスキルでも自分だけの使い方というものがあったりする。それを見つけたのはたまたまだった。




時は少しさかのぼ




">>三人称視点




「〔気力〕ってなんなんだろうな?」


 ハルトはステータスを確認しながらつい呟いた。

 沢山ある自分のスキルの中でいまいち効果がわからなかったスキル、それが〔気力〕だった。このスキルはパッシブスキルで、いわゆる常時発動型のスキルだ。だが、ゲットしてから今までその恩恵を受けたと実感したことはなかった。そもそもこのスキルを使おうと意識したことは取ってすぐ以来ない気がする。


(たまには暇つぶしにいろいろしてみるか)


 この時ハルトは軽い気持ちが今後のプレイを変えるきっかけになるとは思っていなかったのである。


 〔気力〕はそもそも、なんのことを指しているのかが分からない。アニメや漫画などでは魔法と同じようなとらえ方をしているものもあれば、魔法とは別のカテゴリーとしてあつかわれる場合もある。


 〔魔力〕と同じように魔法が撃てるのかと言われるとそうでも無い。魔法はMP(魔力)を消費して発動しているが、それを気力でおぎなえないかと思いやっては見たものの成果は上がらなかった。


 このことから魔力=気力では無いというのがわかった。まあ、飛行=飛翔、とか。火=火炎とかでもスキルの性質は異なるため全く同じ効果というのはないと思う。


(なら、まったく別の力であると考えた方がいいのか?だとすると何をするためのものなのか?〔魔力〕とは違うカテゴリー…。もしかして、MPみたいに気力用のバーがあるなんてことはないよな?そんな、誰も気が付かないようなところに変な隠し要素なんてある訳…)


 ハルト何を思ったのかおもむろにステータスを眺めながら…


「まさかね…。ステータス…。〔気力〕〔表示〕」












(嘘だろ…)







ステータス


ーーーー


名前 ハルト


所持金 15,0000,110G




HP 0├───────────┨


MP 0├───────────┨


SP 0 ├───────────┨



ーーーー



(バー生えたよ。さも当たり前のように生えてきたよ。SP…。まあ、十中八九〔気力〕のことだよな。どーすっかなー。片っ端から試していくしかないか)





">>ハルト視点





 〔気力〕それは、〔魔力〕はMPを消費して本来起こりえない現象を起こすのに対して、〔気力〕はSPを消費してそれらの現象を物や人に付与することができる。また、素手などにまとうことで魔法耐性、身体能力強化ができる。他にもいろいろ試せていないこともあるがこんなものだろう。


 だから、こんなことができるようになる。







 ナユカが上に飛んだことで黒龍の目線は上がり俺のことなんて見えていない。そこに【剣ノ弾幕流儀ケンノダンマクリュウギ】をぶち込む。


 黒龍に急接近しながら剣をかまえる。それと同時に剣が薄黄緑色に発光しだす。それでも黒龍は俺に気づかない。だから思いっきりそのまま腹を切りつける。




「グギャァァァーーー!!?」



 お!結構いいダメージ入ったかな。でも、これからだぜ?


 俺はそのまま黒龍に接近したまま右側に移動。黒龍も攻撃してきた俺の方に意識を向けている。もう一度、脇腹?あたりを切りつけると黒龍が腕を振り回し攻撃をしてきた。


 黒龍の腕をスラリとかわし、そこに目掛けて剣を振る。剣は黒龍の腕に届いていないがそれでも問題はない。剣を振ったその時、剣から斬撃が飛び出す。


 これは〔飛撃〕…。とは少し別物で、〔風〕の魔法だ。先程の剣の薄黄緑色の光は〔風〕を剣に付与しているために発生したものだ。


 風の魔法はそのまま黒龍を切り刻み、それを予期していなかった黒龍は再度悲鳴をあげる。そして怒りに任せて腕、しっぽ、足など様々な攻撃を俺に向けて放ってきた。


 ある程度かわしているが、それでもナユカのように直角に避けたりできない俺は先読みされ、目の前にしっぽが迫ってくる。それを剣で受け止めた。


 重っ!!


 本来なら質量の違いから俺はしっぽを受け止めた瞬間吹き飛ばされるだろうが、それも〔気力〕を纏っているおかげか、その攻撃を受け止めることを可能にしていた。たぶん身体能力強化のおかげだと思う。


 そのままではらちが明かないので体を剣と一緒にひねり、回転しながらしっぽをくぐり抜けることで攻撃をいなし、そのまま黒龍の後方へ移動。また、振り向きざまに剣を振る。


「【サン】!!」


 そう技を唱えることであらかじめセットしておいた現象が起こる。


 なんとそれは剣から出てきた〔風〕の斬撃が複数に分裂してさもショットガンのようにデタラメに斬撃が黒龍を切り刻む。しかし、背中はうろこが丈夫なのかかすり傷程度で終わってしまった。


「ちっ!!」


 その後体勢を立て直した黒龍は俺目掛けてブレスを放つ。



「危ない!!」


 咄嗟とっさに誰かが叫ぶが、そのまま剣をかまえ、ブレスをッ!!


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