「危ない！！」

　誰かが叫ぶ。それでも俺はブレスを前に回避行動をとるつもりはなかった。

　黒龍がブレスを放とうとしてからブレスが俺を包み込むまでの一瞬。俺の中ではそれが走馬灯そうまとうのようにゆっくりと見えていた。

　狙うは真ん中。

*＞＞三人称視点

　魔法、魔弾と言われるものには魔法の核となる場所が存在する。それはその魔法の根源であり、同時に全ての魔法共通の弱点。

　魔法や魔弾は通常その核を守るように展開され、火なら火を、水なら水でその核を覆おおうように守っている。そしてその核を本来攻撃できる手段はなかった。そもそも核があると認識さえしていないだろう。

「ブレスも魔法だよなっ！」

　唯一、その核を攻撃する方法、それは〔気力〕を纏った武器、素手…。物理による攻撃だということをハルトは偶然発見していた。

　ハルトはブレスを直前に剣を真上から振り下ろす。全員がハルトがブレスに飲まれると予測する中、ついにブレスがハルトに当たる瞬間、それは全員の予想を裏切る形で現れた。

　目の前に現れた光景を、ナユカ以外の全員が目を見開き、ただただ見つめることしかできない。

　ハルトの剣とブレスがぶつかり。そして、ブレスが霧散していく。剣に当たった片っ端から次々にあたかも何もなかったかのように、ブレスの威力も、炎の熱も全てがそこから消えていく。

「おおぉぉ！！すごい！！」

「すごい！の一言で片付けられたらハルトさんが可哀想かわいそうですよ？あんなことできるとは。今まで誰もしたことないような…。龍のブレスを…。魔法を剣で切るなんて…」

　ナユカのつぶやきに、ビュアがたまらずツッコミを入れていく。当の本人は目の前の光景がどれだけの価値があるのかわかっていない。そんなナユカの態度を見て、後でゆっくり常識について教えようと静かに決意したビュアである。

　いずれ、黒龍の吐くブレスもか細くなっていき、ついに消える。その隙だらけの黒龍にハルトは更に攻撃を仕掛けていく。攻撃を躱かわし、攻撃を流しながらその剣を振っていく。

　その剣から飛び出す風の魔法は確かなダメージを黒龍に与えていた。時には一振で無数の斬撃を。時には曲がる斬撃で黒龍を圧倒している。そうして黒龍の体力が7割を切ったその時。変化は起きた。

「ギャおおぉぉーーーーーーー！！！」

「うぉっ！？」

「うわっ！？」

　いきなり咆哮ほうこうをする黒龍。その咆哮にはまたもや〔衝撃波〕が使用されており、比較的黒龍の近くにいたハルトとナユカを離れた位置に押し飛ばす。

バサッバサッバサッ

　その隙に翼を広げ、バッサバッサの飛立つ黒龍。その巨体は空へと羽ばたいて。

「今度は空飛んだぞ？」

「反則だーーー！！」

「初めから翼ありましたからね？」

　アリア以外の3人がそんなことを言う。そんななか、黒龍はまたもやブレスの構かまえをとる。

「飛んでいようとブレスなら俺が斬ってやる」

　その言葉と同時に発射されるブレ…

「なっ！！？ブレスじゃない？あれは火弾か？…どっちでもいいか。同じように斬ってやるよっ！！」

　黒龍の口から放たれたのは火弾。それもなかなかの大きさを保持している。それを真正面から叩き切ろうとするハルトだが次の瞬間、火弾は途中でいくつにも分裂、そのままハルトを点ではなく、面で攻撃する。

　咄嗟とっさのことで不意を突かれる形となったが、ハルトは慎重しんちょうに自分に当たるぶんだけの火弾を全て叩き切った。

「はぁ、はぁ…。あー…。びっくりしたぞ…。普通ブレスだと思うじゃん。あの流れ」

　ハルトが火弾を切っている間も、ナユカとビュアは少しづつ攻撃をしている。それでもほんの少しだけしかHPを減らせてはいない。それに…

「わっ！なんか継続ダメージがっ！？」

「落ち着いてくださいナユカさん。周りが燃えているから熱ダメージを喰らってるだけですよ。〔水〕で自分の周りだけでも消火すれば治まります」

「私…〔水〕持ってない…」

「おっと…失礼。ではこれで」

「うべッ！ちべたい！！？」

　ナユカに〔水〕をぶっかけているビュアを横目にしながらそろそろ辺り一面が火の海になることを懸念けねんするハルト。

(ちっ！！元々この場所が植物園なのはわかっていたが…。初めのブレスといい、さっきの炸裂火弾といい、どんどん周りが燃えていく。動ける俺たちはいいが一番ヤバイのはアリアか。あいつたぶん今動けないだろ？)

　ハルトの予想通り、アリアは周りの植物が燃えて囲まれることでものすごい勢いでHPがうばわれていっていた。

*＞＞アリア視点

　まいりましたわね…。詠唱中で動けないのですが…。詠唱キャンセル？…いや、そんなことすればまた3分ほど無駄むだになりますわね…

　黒龍が羽ばたき出した今、3分も持たない可能性の方が高い。なら死ぬ気でこの1発にかけた方がいいですわ。でもHPが持たない。残り3割切りましたわね…。やばいですわ…。あと、もう少しで完成しますのに！！

「ビュアさん！！アリアの周りの火を消してくれ。その間2人で持ちこたえる！！」

「了解です！」

　ふん。ハルトの癖くせに結構周りの状況見てるじゃない…。いいわ。今回ばかしは認めようじゃない！

*＞＞三人称視点

　ビュアが急いで黒龍を離れ、アリアの方へ…

「っ！ビュアさん危ない！！！」

　その時またもや黒龍はブレスの構かまえをとる。その進路をビュア…。そしてアリアのいる直線へ。

「なっ！！クソっ！」

　ハルトは位置取り的に黒龍のブレスの進路と逆サイドにいたため間に合わない。今、次の瞬間放たれたブレスとビュア。

　その間に割って入ったのはなんとナユカだった。

ステータス

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名前　ナユカ

所持金　1000G

HP 0├──────╂────┤

MP 0├─────╂─────┤

スキル

パッシブ

魅力　魔力　体力強化

アクティブ

火　回す　植物鑑定　躱す　火炎　叩く　ジャンプ　赤　魔法陣　足　光　地図　伸ばす　直角　緑　止める　連動　青　爆発　集合　歌唱　鍛治　減速　星

状態

飛行速度上昇

攻撃力上昇

防御力上昇

クリティカルダメージ上昇

水中移動速度上昇

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