「ナユカ〜?セッティング終わった〜?」
あの後、ビルを逃げるように出た私たちは、適当にオーブを探しながら歩いていた。私は〔技名〕セッティングを考えながら、ユキはたまにやって来るプレイヤーを片手間で倒していた。
私?ユキが強すぎて私の出番はないよ!
おかげで私はセッティングに集中できているんだけどね?
「何となくでだけどセッティングできたよ!MPを気にしなければ…」
そう、ひとつセッティングしてみたのだが、どうしてもMP使用量が増えてしまう。という問題が出てくる。できるだけ節約してみたものの、それだと単調な弾幕ができてしまい、わざわざ〔技名〕を使わなくても出せるものになってしまうのだ。難しいね。ユキ言わく、みんな通る道なんだって。
「まあ〜、ゆっくり考えなよ〜。イベントまで、まだ時間は沢山あるからね〜」
と、いうことで甘えている。改善しないとだけど、それはもう少しスキルを集めてからでも悪くないかな。
そうして歩きながらたまに採掘したり、プレイヤーに技を試し打ちしたり。オーブも何個か獲得することができた。〔条件〕〔帰還〕〔舞う〕〔風〕〔短剣術〕〔紫〕〔受け身〕。以上の7つをゲットできた。ユキは全てこれらも
「あれ?」
「どうしたの〜?」
私はおもむろに、今獲得したスキルを確認しようとしてステータスを開いた時だった。
「さっきと表示されてるスキルのカテゴリーが変わってる…」
ビルに入る前、〔表示〕を獲得した時にユキに教えてもらった方法で、ステータスの〔表示〕方法を変え見えやすいようにしてもらったのだが。その表示が少しだけ何もしていないのに変わっていた。
ユキが言うには〔表示〕のスキルは、少し他のスキルと違い。ステータスや、〔地図〕など、普段ゲームで私たちが見てきたシステムの〔表示〕を、自分の好みに変えられる。それを使いステータスの表示方法を、ユキが言うおすすめの形式にしてもらったのだ。
ステータス
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名前 ナユカ
所持金 154800G
HP 0├────────╂──┤
MP 0├───────╂───┤
《スキル》
『パッシブ』
「原型」
魔力
「強化系」
体力強化
『アクティブ』
「属性系」
火 火炎 爆発 光 風
「鑑定系」
植物鑑定
「色彩系」
赤 青 緑 紫
「動作系」
躱す 回す 伸ばす 直角 止める 減速 連動 集合 舞う 帰還 条件
「設置系」
魔法陣
「音響系」
歌唱
「表示系」
地図 表示
「部位系」
足
「命名系」
技名
「剣術系」
短剣術
「造形系」
星
「体術系」
受け身 叩く スーパーアクセル
「飛行系」
ジャンプ
『?』
魅力 鍛治
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が、何が変なのかと言うと、元々のカテゴリーから違うカテゴリーに移動したスキルが存在する。
先程までは「動作系」と表示されていた
〔叩く〕〔スーパーアクセル〕
が新しくできたカテゴリー、「体術系」に分類されていたのである。
「あぁ〜、そのステータスってね〜。実はちょくちょく変化するよ〜」
「はぁ〜?」
おっと!ツイ口調がヤンキーのそれに。失礼。
「スキルって沢山あるでしょ〜?それであまりにも多いから、滅多に使われないスキルなんて物も存在するの〜」
「うん」
「そしてカテゴリ〜って言うのは、プレイヤーに認知されないと表示されないから、ナユカの中で知識がないと本人のイメージしたカテゴリーに分類されて…」
「ん?ちょっとたんま…」
ちょっと待ってねー。今理解しようとしてるから。
「メニュー画面にスキルブックってあるやつ。あれの内容見たことある〜?」
「あ、ないかも」
確かにそんなのあったような気がする。1回も中を見たことはないけれど。
「このスキルブックって言うのは、全プレイヤーが作る図鑑みたいなものなんだ〜」
「全プレイヤー?」
私作ってないよ?知らなかったし。
「そうそう〜、作るって言っても、勝手にゲーム側がプレイヤーのスキルに対するイメージや、データを取って作られてるんだけどね〜。このスキルブックには、要は全プレイヤーのスキルに対してのイメージがそのままカテゴリ〜として分類されるんだよ〜」
え〜と?それって…?
「…つまり?」
「全プレイヤーの間で、そのスキルに対してのイメージが変わると、カテゴリーも勝手に変わるよ〜」
「なるほど…」
そのスキルに対してのイメージ…
「例えばナユカがよく使う〔ジャンプ〕があるでしょ〜?あのスキルはよく「動作系」「体術系」「飛行系」ってあるんだけど〜、その3つのカテゴリーを行ったり来たり変化してるよ〜。あまり使われないスキルって言うのもあるけど、人によってイメージがあやふやだから、〔ジャンプ〕は体術だって言う人もいるし、いやいや〜、魔弾にセットしておけば〔ジャンプ〕する魔弾が作れるから、動作系だって人もいるんだよね〜」
「確かに私も初めは〔ジャンプ〕は飛行系かどうか悩んだもんね!」
というか、窓ガラスぺちゃんこ事件がなかったら気づかなかったと思うし。
「あ、でも昨日ので〔ジャンプ〕は「飛行系」で、もう動かないと思うよ」
「え?なんで?」
「昨日ナユカが〔ジャンプ〕使って空中戦してたじゃない?さっきも言ったけど、〔ジャンプ〕はレア度高いくせに、用途が限られてるってイメージがあったからね〜。まさか2段〔ジャンプ〕できるスキルだってみんな知らなかったんだよ〜」
「そうなの!?」
「あんな使い方したのはナユカが始めてだと思うよ〜。しかも公式PVに使われるんだから、一気に拡散されるしね〜。みんなのイメージが飛行系に固定されると思うからもう変わらないかな〜?」
なるほど、プレイヤー達のイメージを
「あれ?でもそれだと今の今まで〔叩く〕とか〔スーパーアクセル〕は「体術系」だと思われてなかったの?」
「それも違うね〜」
ん?ちょっとこんがらがってきたぞー!
「カテゴリー自体は存在していたけど、ナユカの知識の中でそもそも「体術系」のカテゴリー自体が存在してなかったでしょ〜?さっきまで。でも〔受け身〕を取ってナユカは受け身のイメージをした。カテゴリ〜「動作系」だとは思わなかったでしょ〜?」
た、確かに受け身と聞いてパッと思いつくのは武道とかそんなやつだね。
「ナユカの認識しているカテゴリーの中に新しく「体術系」が産まれたことで、それまで「動作系」に分類されていたスキルが、本来の全体イメージの方に移動した…。修正されたって言うのが正解じゃ〜ないかな〜?スキルブックよりも〔表示〕は本人の思考を優先するからね〜」
「うっ…、なんかややこしくなってきたぞぅ…」
知恵熱出そう?もうわけが分からないよ。
「まあ、いつの間にかステータスの表示が変わってることがあるってことだよ〜」
「りょ、了解した…」
うん。ステータスはときたま変わる!それだけは覚えた!!他は知らん!