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T068  暇で始まる生配信実況は速攻で終わった



 他のプレイヤーとタイミングをずらして、予選をどんどんこなしていくユキとハルトさん。2人は17:00の時点で、ハルトさんが153位。ユキが64位となっていた。ここからは本選出場狙いのプレイヤーが上位を狙ってくるためプレイヤーの人数がとてつもなく増えてくるらしい。


 特に1 000位に届くか届かないか、という人達は必死だ。少しピリピリしている。



 逆にユキとハルトさんは順位に余裕があるため、そこまで焦らずに試合をこなしてきていた。後半になり、ハルトさんがちょっと疲れが見える。ユキは変わらない。たぶん化け物なだけだと思う。




 この結果に1番驚いていたのはハルトさんだった。いままで、ここまで上位にくい込んだことは無かったらしい。本人いわく、メンタルの持ち方と装備の質が格段に上がったことがこの結果につながっていると自己分析していた。


 しかし、やはりこの時間はプレイヤーが多く。100位前後は猛者もさばかりなのか、2人とも瞬殺はできにくくなっているように見える。ユキはそれでも速攻試合が終わっているけど…。ハルトさんは、もうなりふりかまわず全力だ。それでもたまに敗北している。いやー、ハルトさんより上がゴロゴロいるのは普通に怖い。


 …ユキ?全戦全勝ですけど?


 さっきなんてユキ(9位)対18位が予選でぶつかったってさわぎになってたけど、余裕とまではいかなくともドンパチやって勝ってたよ。



*



 さらに3時間くらい、このまま2人とも戦い続けている。


 さすがにハルトさんはバテバテで、一旦休憩に帰ってきていた。ユキですか?未だにニッコニッコしながらバトってますよ?ハルトさんとアリアさんが隣で、「あの人怖い」とか言ってたので気にしたら負けです。



 現在ランキングはこちら!


ユキ 15位


ハルト 143位


 もう別にそんなに心配してない。ユキはたぶんあれだ、バトルジャンキーだ。



 ちなみにこの予選期間中、私とビュアさんアリアさんはそれぞれやりたいことをしていた。私は他のプレイヤーの人がどんな技を使っているのかを観察してみたり、ビュアさんは選手に会いに行ったりしてインタビューしてきたらしい。アリアさんはハルトさんの試合にケチつけたりして充実した観戦ライフを過ごしたようだ。


 ミカちゃんは暇すぎてログアウト中だ。



「ナユカさん、アリアさん。これから生配信しますけどいいですか?」


 しばらくして、またハルトさんが試合に行くとビュアさんがそんな提案をしてきた。聞けば他のプレイヤーをインタビューしていると、関係ないプレイヤーに私たちのことをよく聞かれるみたい。


「いいよ!」


「私も構わないわよ?でも何するんですの?」


 そろそろきてきていたので2人とも賛成。だって暇なんだもん。むしろ今までよく丸一日も試合観戦してたなと思うね。


「そうですね。ユキさんの実況とかしてみます?」


「いいわよ。実況はビュアさん。解説私。ナユカさんは…、感想?」


 感想って何言えばいいの?



 ユキは可愛い!以上!



「それでいいかと、あとコメント返しでもいいですね」


 なるほど。



「それでは、配信開始しますよ!」




*





 ビュアさんはさっそくとばかりに生配信を開始。唐突に始めたのにも関わらず、しばらくしてどんどん視聴者が増えていく。ひとまず何もせず、ある程度人が集まってくるのを待っている。


「そろそろいいですかね?それじゃいきなりですがここにいるメンバーでユキさんの試合を実況していこうと思います!」


「よろしく!」


「よろしくですわ」



『お!何するのかと思えば』

『予選は実況いないからな〜』

『って個室じゃん!!?』



 うんうん。最近この感じにも慣れてきたね。



「あ、ユキさん出てきましたね」


「相手は知らない人ですわ」


「頑張れ〜!」



 そしてユキは始まりの合図を待つ。両方そろってバリアが貼られた。

 始まるカウントダウンにユキは棒立ち、相手は身構える。


『また瞬殺?』

『次の相手はどんな処刑方法だろうな?』

『始まるぞ』



 3…2…1…スタート!


 始まりと同時に上昇しながら氷弾を放つユキ。相手はそのままユキ目掛けて〔加速〕と〔切り込み〕を使って急接近する。



「ユキさんはやはり上昇して上をとるつもりですかね?」


「ですわね。でないと後々、お得意の凍傷を引き起こせないですもの」


「でもユキって、氷以外も使えるんだけどね」




 相手が突っ込んできたのを見て、それを弾幕で近づけさせないように打ち込んでいくユキ。それでも相手は止まらず、ダメージ覚悟の捨て身の攻撃を仕掛けていた。


「相手はダメージなんてそっちのけで突っ込んで来ましたよ?」


「相手がユキさんだから、それを覚悟で短期決戦狙いで行く気ですわ」


「あらら、でもそれすると…」



「はい、ユキさんはさらに有利ですね」



 そのまま突っ込んで来るのを見て、今度は相手の方に氷弾、水弾、風弾をどんどんぶつけていく。水弾、風弾は〔冷却〕済みで。


「ほら、たどり着く前にあっという間に凍傷になりましたよ」


「いつも通りだわ」


「みんな同じだね」


「わかってても選択肢がそれしか無いプレイヤーが多いのですよ。相性の問題もありますが」



 そして動きが悪くなった敵に、さらに弾幕をぶち当てていくユキ。あっという間に相手のHPを削りきったのだった。


「実況しようと言っといてなんですが、する暇もないですね…」


「なにか別のことする?」


「何するんですの?」




『お祭り散策は?』

『おい‪w。ハルト忘れてるぞ』

『そういえば、景品豪華な遊べるブースとかもあったぞー』


「何それ楽しそう」


「あぁ、あのかなり難しいと言われてたやつですね」



「ビュアさんなにか知ってるの?」


「他のプレイヤーをインタビューしてる時に噂してましたよ。1番いいのはオーブが貰えるとか。しかも黒の」


「黒ですわ!?」



「それ生配信したら?」


「暇ですし、そうしましょうか?」


『お!いいね』

『速報:ドッチのブース集合』



 こうして私たちは、一旦闘技場から出ていくのであった。

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