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T070  ワンライフの新記録



 ついに私たちの順番が回ってきていた。順番はアリアさん、ビュアさん、私の順である。


 しかし…



 アリアさんは、始めの1分はかわしたが、2分をすぎて少ししたら、あっけなーく背中側から迫っていた魔弾に当たってゲームオーバーになっていた。


「ぐ…、もごもご…。油断しまもご…。したわ…」


 と、景品のアメ玉を口に含みながら言っていた。意外とそういうお菓子好きなのかな?ちょっと美味しそうだし。



 続いてビュアさんだが、これがとても頑張っていた。なんと1〜2分は余裕。3分を超えていた。


「すごいすごい!」


『いやほんとにすげーわ』

『どこまでいく?』


 あちこちから飛んで来る弾幕が、終始ビュアさんをおそう。そんな嵐の中を必要最低限の動きで躱していく。かっこいい!クールでできる女!みたいな?中身ストーカーだけど!


 タイムはいよいよ3:30を超えた。その瞬間!


「なっ!?」


 今度は魔弾の大きさまでもがバラバラに飛んでくる。大きなものも、逆に小さなものもあるため。大きい魔弾を回避するために大きく避けたり、小さい魔弾が視認しにくくなっていたり。


 対応に追われたビュアさんは、少ししてゲームオーバーになってしまった。


「次は私だね!」


「頑張ってくださいねナユカさん」


『頑張って!!』

『いやー、そこのブースだけすごい人だかりできてるぞ?』



 私たちが生配信をしていることと、なんだ?なんだ?と噂を聞いたプレイヤー達がどんどん集まってきている。


 うん…、あの人だかりは一旦思考の外側に置いておこう。それよりもビュアさんが3:30まで行ってくれたおかげで、そこまでの弾幕のネタが割れたのが良かった。ちょっと本気で挑んでみようと思う。オーブ欲しいし。








 3…2…1…ワンライフスタート!



 うんうん。まずはゆっくり、ちょろちょろな魔弾が飛んでくるね。


 1分が過ぎて、いろんな所から同時に魔弾が飛んでくる。右と前、左と斜め上、これもしっかり見て躱していけばまだ行けるね。しかし、どんどん1回で射出される魔弾が増えていく。


「よっ!はっ!」



『いいぞいいぞ!』

『頑張ってー!』


「ナユカー当たるんじゃないわよー?」


 そしてフィールドは、どんどん弾幕密度をあげてゆく。ここまではなんとかなる。そしてタイムが3分を過ぎた!


 いきなり曲がる魔弾。


「よっ!!」


 これもしっかりかわしていく。


 曲がったり、減速したり、といった不規則な弾幕をさらに避ける。


 3:30を過ぎた。ここから魔弾のサイズが変わる。飛んでくるのは私の身長をえるくらいの魔弾。これを避けるには場所を移動せねばならず、躱す動きに移動するための動きがプラスされる。


 横から来る特大サイズの魔弾を躱すために前に移動する。その進行方向で、ぶつかってしまいそうな魔弾も体の向きを変え、少し頭を下げてやり過ごす。

 即座に次の特大サイズが、今度は2つ並んで後ろからやってくる。右斜め前に移動しながら、足元に曲がりながら飛んで来る魔弾をジャンプして避け、さらに、その先に存在する止まった魔弾と、高速で左から流れてきた小さな魔弾数個を次々に躱していく。

 さらにさらに!左右から列を成して挟むようにやってきた弾幕をしゃがんで避け、そこから後ろに後転して、ボールのようにバウンドしてきた魔弾を回避。


 …ちょっと楽しくなってきたかも。






『あれ?俺は一体何を見てるんだ?』

『すげーわ、移動しながら周りから来る弾幕。全部見て躱してる…』

『ここまで来た人間ってどいつもこいつも普通の回避してないな』

『後ろにでんぐり返ししてるもんな‪w』

『ナユカちゃん楽しそうだし』




 コメントも、集まってきていたギャラリーも、皆それぞれガヤガヤと好き勝手に言っているが私はそれどころじゃない。



 あと、もう少しで4分!!


 フィールド上にある障害物に手を掛け、スピードを落とさずに曲がり、スライディングしながら弾幕を躱し、そんなことしながらチラッっと視界に浮かぶタイムを見る。


 そして4:00。さらなる弾幕の変化に襲われる。


「うわっ!形が変わった!」


 襲ってきたのは、今までのように丸の魔弾ではなく、今度は形さえも変えてしまった歪な弾幕。


 地面スレスレを1本の棒が流れて来たり、弓矢のような弾幕が飛んできたら、地面に刺さってしばらくその場から消えない障害物になったり、普通の魔弾かと思ったら、いきなり10個に分裂ぶんれつしたりと、もうやりたい放題である。


 やばい!やばいっ!集中!!

 今まで以上に周りを観察して、逃げ道を模索する。そうこうしているうちに、何とか4:30に到達する。





『え?新記録行く!?』

『一回目で!!?』

『いやほんとにすげーわ!』


「ナユカさんは、避けることに関して言えば、ユキさんよりも上手いのではないですか?」


「確かにそうかもですわ…」




 次に目の当たりにするのは…



「「属性弾!!?」」



 それは、燃えながら近づいてくる火弾。


 しまった!?熱ダメージもカウントに入るのか!?


 とっさに大きく避けることで、熱ダメージを何とか回避した…だが、体制が少しくずれている。


「くっ!?」


 そこに襲い来る、不規則な動きの魔弾をそのままコケることで回避、さらに。


「んっ!」


 足で地面をって、コケた体をそのままに90°回転。さらにコロコロ転がり、上から次々に降ってくる弾幕を避ける。その勢いのまま立ち上がり、即座にジャンプ。足下を通っていく水弾。


「はっ!?」


 通り過ぎた水弾が障害物に当たり辺りに飛沫が弾ける!


 一瞬時間が遅くなったような感覚に襲われた。


 ダメっ!!このままだと弾けた水弾に当たる!でもまだ諦めないもんねっ!!もっと周りの動きと水弾の弾けた飛沫ひとつひとつを全て見切ればっ!


 私はさらに集中していく。






ピ!



《干渉を開始します》






「えっ?…あ、しまっ!?」





 一瞬。なにかに気を取られた私は、水弾の飛沫に当たりゲームオーバーになってしまった。



*>>三人称視点





記録4:37.20



 新記録に盛り上がる周りだが、ナユカは1人納得いかないという表情でその場に座り込んでいた。少しくやしそうに涙目になりながら…

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