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T076  ざわめく会場と、それぞれ



バキッ!!!!


 すべてが凍りついたその会場で、まず1番に正気に戻ったのはアキアカネであった。ユキVSセバスという好カード。そんなビックネーム試合だけあって実況解説も、その界隈かいわいで最も有名であるアキアカネとヒカリが担当していたのである。


『な、なんということでしょう!?一体目の前の光景はなんだ!?ついにこのゲームは壊れたのかと、本気でうたがっています!!?』


 それでも気が動転しているアキアカネ。それと、そのアキアカネの声で正気に戻ったヒカリ。


『あれ、が。〔妖力〕?でもこんな…』


 残念まだ正気ではないらしい。



 ザワつく会場。今日、あまりにも大量な情報がこれほどの事態をまねいていた。


「うん。まあ〜。仕方ないよね?元々公開する予定だったし〜?そ、それにちょっとあいつがムカついたから、派手にやってやろうと思っても仕方がないよ〜、うんうん」


 この事態を引き起こした本人でさえ、さすがに、こんな威力になるとは思ってなかったのか。目の前の大きな氷塊ひょうかいに冷や汗が止まらない。


 そのまま逃げるように会場を後にするのであった。






*





「これは…」


「やりすぎですわ…」


「だな…」


「ウンウン。さすがユキだ」


 その頃、観戦室の4人はそんなことをぼやいていた。ちなみに上からビュア、アリア、ミカ、ナユカの順番である。ナユカに至っては達観なのか現実逃避か分からない表情でうなずいていた。



 しかし、そんな闘技場のさわがしい様子を見てビュアがふと気になったのか。ふとコメント広場のコメントを見て盛大に顔を引きらせる。


「皆さん…。今日は外に出ない方がいいかもしれませんよ…」


 全員が振り返り、「?」を浮かべているがそんなこと知らぬとばかりにビュアは言い切る。


「今、ハルトさんとユキさんが公開したことがニュースのようにコメントされ、たくさんの人に広がっています…。同じようにチームを組んだ私達も似たような力があるのではないか。と予測してもう既に私達の捜索隊が組まれようとしていますね…」


「「はー!?」」


「おぉ、人気者だー!」


 驚くミカとアリア、なんかちょっと嬉しそうなナユカと反応は分かれている。ナユカの場合は現実逃避…かもしれない。


「と、とりあえず。今日はここで大人しくしていましょう。その方がいいでしょう」


「ですわね…。変にあとをつけられたりしたら嫌ですわ…」


「美味いと噂のたこ焼きの屋台行きたかったんだぜ…。ちくしょう…」


「んー…」


 さらに追い討ち。


「後、現実の映像中継もすごい荒れてるようですよ…。革命の予兆だとか…。チートだの言われていますね…」


「革命の予兆なのは、間違ってねーんだよな…」


「この中でリアルとアバターがほとんど同じ人っていますの?」


 そのアリアの質問に皆が手をあげる。つまり全員。ゲームと現実の容姿に差異はほとんどないのだ。


「私、そのままだよ」


「え?髪とか目とかもか?」



「うん」


 ナユカの回答に、とりあえず頭を抱えるビュア。


「と、とりあえずナユカさんは今日、絶対外に出ない方がいいですね。出るとしても、少し身を隠した方がいいと思いますよ。もしバレたら大変です…。素顔や住所なんかも誰かが特定してしまう可能性があります」


「それきっと私達もですわよ…。髪や目の色だけならわかる人は分かりますわ…」


「まじか…」


「いや…。たぶん住所とかもバレないと思うけど…、ナビィに対策してもらおう。うん」


 もう既に、このことを外から感知していたナビィが動いていることをナユカは知らない。ナビィは優秀ゆうしゅうなのだ。






*>>三人称視点







「ロールプレイ…か、ちっ。おい!カルマ。こりゃデュオも荒れるぞぉ?」


「そのようだね」


 場所は変わって、ここは一般会場席。ここに現在ランキング5位と14位の人物がユキの試合を見に来ていた。


「これは、お前と組んでも厳しいんじゃねぇか?」


「やってみないと分からないでしょ?特にあのナユカって子は」



「あいつも十分やべぇぞ?ビュアの動画見てこい。回避能力だきゃ…、たぶんお前…負けるぞ?技も1回しか使ってねぇ…」


「しかも公式戦じゃあ1度も使ってないから、どのスキル使ってるのか分からないしね…。普通、あんなに弾幕貼ったらMP切れるけどなぁー?なにかやっぱりあるよね」



「ちっ。だろうなぁ」


「でもいいんじゃない?ランプだって切り札は切ってないんでしょ?むしろ知られてない分有利じゃん」



「あ…?。でも用心はしとけよ?」


 そう言って2人は会場を後にする。2人はざわめく会場の人混みの中に消えていった。






*>>???視点






『せんぱーい?アレ見ましたぁー?』


『見た。てか今、外でもその会場の荒れ具合を生中継してる。なんやこれ?』



『やばないですかー?』


『別に?いいんじゃね?やること変わらんし』



『んんー、まぁー、センパイがいいならいいんすけどねー』


『それよか、シオリ。自分こそ大丈夫か?個人出てたろ?』



『いやー、どいつもこいつも強いったらありゃしませんよー』


『せやからやめとけって言ったのに』



『サーセン。でもまあできるだけ探って来ますよー。白雪姫改め…。雪女?スか?』


『あんま、手の内さらすなよ』



『ウッス』


『センパイもあんまゴロゴロして菓子ばっか食べたらアカンッスよー』



『うっせー』





*>>三人称視点





『わかった…』


『それでヒカリさん。あの強大なユキさんの力はなんなのでしょう?』



 未だに静まらない会場の中。実況の2人は今起きたことの説明を開始する。


『あれ、初めから最後まで〔妖力〕ってスキル。使ってた』


『それはどんなスキルなんですか?聞いたことありませんが…』



『ん。〔妖力〕は。自分が憑依ひょうい。させたものと。周りのイメージ。重なれば。今まで以上の。強力な技になる。WPを消費して属性攻撃力を増幅させる』


『な、なんですか?WP?憑依?』



 ヒカリの解説に混乱した会場。この後、次の試合までヒカリは説明を続けていく。


 その内容は、その解説を聞いていた者の常識を壊して回っていた。

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