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T078  ハルト(絶望)VSユキ(ニッコリ)

*>>ナユカ視点




「おつかれ〜」


「はぁ…。分かってはいたんだがなぁ〜。いざ対面すると絶望だ…」


 現在時刻は夕方になろうという頃。8回戦目、ここチャンネル1番には、いつもよりさらに大きくなったように感じる闘技場…。これ見た目だけならコンサートホールの方が近いよね…?それよりでかくなってそうだし。

 あまりに観客が多いからか、チャンネル5つで見れるようにしているらしく、ひとつの会場自体が今までで、見たことないくらい観客席が増設されていた。

 これのあと5倍は観客がいるということで…。このゲーム人気あるんだなぁー。(遅い)


 その観客たちの見守る中で今、我らが「白雪姫」ユキと。そしてもう1人、我らがほこる近接、ハルトさんが対峙たいじしていた。



「そんなに嫌がらなくていいじゃん〜。ハルトもよくここまで上がってこれたね〜?快挙じゃない?」


「今、目の前にいる人にその快挙をぶっ潰されそうなんだがな?」



「潰さないよ〜…。凍るだけ♪」


「できるだけ優しくお願いします…」



「大丈夫!大丈夫!痛くないよ〜」


 何やらユキはやる気満々だね?どうしたの?


「氷…。切れるかなー…」


「あ、そうそう〜。前にナユカをやっつけちゃった仕返しをしないとね〜♪」



「あっ…」


 あ、これ私のせいか!?



*>>三人称視点



 この会話中にシールドが展開され、スキルオープンのコールがかかる。


「とりあえず、逃げようかな【気力纏い】」


「さぁ代償だいしょうはあなたの命。【あなたの美しい命を凍らせましょう】?」



《…2…1…スタート!》


「【瞬会】!!」


「うひゃっ!?逃げるんじゃなかった?」


 試合開始直後、即座にユキに肉薄するハルト。だがしかしその手には何も持ってない。持ち前の剣すら持たずに。


「よくよく考えたら持久戦やって勝てる気しねー…」


「なるほどっ!よっ!」


 そのまま殴りかかってくるハルトに、魔弾を放ちパンチをらす。そしてお返しに水弾を飛ばすユキ。


「ちっ!〔装備〕剣鬼「一」」


 拳で受け止めるのはまずいと感じただろうか?ハルトは剣を装備し水弾を切る。すると水弾はその場で消えた。


「魔弾の核を切ってるんだっけ?めんどい!」


「【剣ノ弾幕流儀】っ【追】!」


 ハルトの剣から放たれる追跡する風の斬撃。その攻撃が次々とユキを襲う。


「また、めんどい!凍らないものばっかり撃って!」


「【直】」


 今度はまっすぐユキ目掛けて斬撃を飛ばす。ユキも負けじと弾幕をハルトに向け放つが、剣で切られるか風の斬撃で相殺される。


「フフフッ!【吹雪の中に私は生まれるブリザード ウーマン】」


「な!??」


 そしてそれを耐えかねてか、ユキが技を唱える。その途端、会場は吹雪に包まれた。当然視界も悪くハルトはユキを見失なっている。さらに。


(やばい…。これは凍傷狙いか?奇襲か?)


 その状態にプラスしてハルトの体温はどんどん下がっていく。何をするにしても不利。ユキの攻撃のタチの悪さは郡を抜いている。


「〔装備〕「火焔猫の御守り」」


「へ〜…」


 咄嗟とっさの判断で自作のアクセサリーを装備。ハルトは冷気に強くなった。「火焔かえん猫」とはいつしかのイベントで入手していた素材。それと生産者としての技術の賜物たわものである。今日この時のための装備だ。


(あん時、取っといて良かった…。もしかしたらと思って作ってた俺もナイスだぜ)


 果たしてそれはいつ得たもので、どういった経緯があるか不明だが、今、確かに効力を発揮している。



「【山の中の幻小屋スノーマンティス】」


「ん?」


 しかし、ユキも黙っていない。凍傷が狙えないと踏んだユキは即座に別の攻撃へと切り替える。吹雪の中現れたのは、雪でできたイグルー。瞬く間に作り上げたその雪のドームにユキはこもる。


 当然、観客席からは見えるように補正が入ったのだが、ハルトには未だ吹雪の影響えいきょうで、視界全てがほとんど真っ白なのである。イグルーなんてものが出来たことにさえ未だに気付くことはできない。



 そこへ…


「ある者に小屋の中で約束をした。それは優しくも美しい命。そこにあったものは輝いた。彼の者は山を下り、村につく」


 その途端、会場に流れるはかたり口調のユキの美声。


「詠唱か!!」


 かつて黒龍戦の時にアリアが放った極大魔法と同じように、〔詠唱〕を必要とする高威力な技。それと同等のなにかがくると会場の観客達は息を飲む。


 空へ飛び立ち必死になにかを探すハルト。その視界に映るかすかな発光。


「っ!あった!一気に行くぜ!?【剣ノ名ヲ持チ表ス・剣鬼「一」】切り裂け!!!!」





 ススっ…パァッーーン



 途端に横一文字に割れる世界。それは全てを切り裂き。その先の吹雪の中できらめいていた〔魔法陣〕を綺麗に真っ二つにしたのだ。


 途端に収まる吹雪。魔法陣は吹雪を起こしていたようで、辺り一面が雪原に産まれ変わっているが、降雪は止む。

 開けた視界。その中にひとつポツンとある雪で出来たカマクラをハルトは認識。


「見つけた!」


 ハルトはそこに剣で斬撃を放ち…


「【集】!」


「私はそばからそっと見ていた。彼は村人に「私」を話す。その話は広がっていく」


 その全てがカマクラへ集まるように落ちて行く。


ドコッ!

 崩れるカマクラ。


「今ここに、約束は破られた。ならば、私はあなたを凍らせる。私を知る全てのモノごと吹雪に見舞われればいいのだ。ここは山中…」


「【瞬会】!」


「【既に私の吹雪の中なのだからスプリング レス】」


 ユキに剣を振るハルトは、途端に足元が崩れるような感覚にとらわれる。


 いや、実際に崩れるように地形ごと変化していた。








 そこは、雪の振る山の中。



 上に行くほど吹雪が強まっている。死のエリア。



 全てを飲み込む雪に、何もかもが凍り、そこを飛び出し遭難そうなんしたものに救いはなく。



 自らの孤独と、寒さに震え、いつか凍え死ぬ。



 むやみに歩き回ることなかれ、そこには1人吹雪の夜に消えた「雪女」があなたを凍らせるためにさまよっているのだから。




 会場は、まるで蜂の巣をつついたかのように荒れていた。いま先程全てを凍らせた本人が、今度は会場内に雪山のような光景を生み出しているのだ。


「いやー、ユキやりすぎだねー!」


「全くですわ…」


「また後で取材生放送ですかね?」


「なあ、あれチート疑われても仕方ないぞ?」


 観戦室のメンバーも、知らないユキの技にあきれるばかりだ。


(おいおいおいおい!!?ユキさん!?こんなの聞いてませんよ!!?)


 低空飛行で、できるだけ木々に身を隠しながら移動しているハルトは心の中で1人ごちる。ユキの作り上げた雪山には様々なオブジェクトが成り立ち。そこには木々や肌黒い岩肌が覗く。天然の雪山が形成されていた。


「〔装備〕黒龍「れん」」


 そうして、ハルトは黒い剣を取り出しながら笑う。


「よし、もう1ラウンド始めようか!?」


 こうして双方奥の手として隠してきたものを解放する。約1名はやけくそとも言うが…。まだまだ戦いは続くのだ。




ユキ


HP

├────────────╂┤

MP

├────╂────────┤

WP

├──────╂──────┤457%




ハルト


HP

├───────────╂─┤

MP

├─────────╂───┤

SP

├───────╂─────┤

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