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T090  〜リリース〜 4人目の力は今解き放たれる



「やっぱり私。要らなくない?」


 向かってくる敵をバッサバッサ切り伏せるがごとくなぎ倒していく。…実際には氷漬けなので切ってはいないのだが、そんな感じで向かうところ敵無しなユキ。


 しかし!問題が1つ。ユキの援護えんごが不要になったということは、私は自由に相手に攻撃できる時間が増えたということなのだが、そんなことする間もなく相手がやられてしまうのだ!

 ユキが全部終わらせてしまうことが多い。唯一、初めのユキの攻撃を躱せてもその後に、【掘っ建て小屋の中は暖かいか?】という技をユキが発動させる。これを発動された相手は視界を雪で塞がれ、さらに確実に状態異常:凍傷 の付与。さらにさらに、こちらはバッチリ相手の位置が見えている。ついでに寒くない。



 そんな状態で氷弾をユキが打ち込み、訳も分からず凍っていくプレイヤーのなんて多いことか…

 そのおかげで私は何もしていない。そろそろなにかしたいんだけど?ユキさんや?


「ううん〜、そんなことないよ〜。私のモチベーションが上がるからね〜」


「いや、そうじゃなくてバトルらしいバトルしてないなぁって」



「う〜ん。でもそろそろ私たちのこと対策してくる人達と当たると思うよ?まがりなりにもここまで連勝し続けなきゃいけないから、自然と強い人達が残ってくるし〜。休めるうちに休んどかないと〜」


「う〜ん…、確かにそうだけど…。いいのかなぁ。私何もしてないよ?」



「もうすぐ嫌でも、強いやつらとしか当たらなくなるから〜。覚悟しときなよ〜」


 と、言うことらしい。現在時刻は夕方より少し前。確かに、初めに比べれば残り少なくなってきた試合数に、今残っているデュオのチームはここまで勝ち抜いてきた猛者共ということだ。相手のランキングは平均して500位〜2000位くらいの人達が大半を占めていたりする。

 そんな中、未だにランキングにってない私はとっても目立っていた。きっと私を知らないプレイヤー…ですらない外の世界で見てる人達はユキの名前を見て、こいつキャリーでもされているのか!とかそんな悪口を言っているに違いない。





*>>第三者視点




 と、そんなことを考えていたナユカであるが真相は違う。未だに自分がどれだけ今まで目立ってきたか。ユキの隣に立っているということの重大さを理解していない。

 この時、会場中、あるいはこの公式で放送される試合中継を見ていたほとんどの人間が「ナユカ」というこの少女に注目していた。

 つい最近始めたばかりの初心者であり。

 その当日に緊急クエストなんて物に首を突っ込み。

 黒龍の猛攻の中を死なずに突破しクリアした後。

 〔ジャンプ〕の新しい使い方を自ら開拓。

 さらにそれをビュア主催の生配信でハルト相手に大立ち回り。

 ついでに、ユキのパーティーメンバーであり。

 しかも昨日、また変なものワンライフをクリアしてみせ。

 今日こうしてユキの隣に立っているこの子…


「ユキ〔妖力〕」「ハルト〔気力〕」

「アリア〔魔力〕」「ビュア〔?〕」

「ナユカ〔?〕」「ミカ〔?〕」


 と、この6人の中で新要素が出ていないのは後者3人。ビュアは黒龍戦の最後。何かしらのスキルを使ったことは既にバレている。

 では残りの「ナユカ」と「ミカ」にもあるのではないか?と予測が立ってしまっている。

 ナユカにいたっていえば、ハルトとの動画で使った技【煌星流姫「ペンタゴンスター」】が既存のスキルだけでは再現ができても、消費MPがとんでもない事になること以外は判明していない。ミカに至っては「謎」である。


 そんな中、今日はユキとナユカのデュオである。昨日ユキとハルトがその能力をおおやけの元にさらしたことで今日はナユカもその「謎」に満ちた能力を使うのではないかとみんなが期待していた。


 なので、実を言うとこの時…。いや、今日の公式の放送で1番の視聴率を稼いでいるのはずっとユキ&ナユカ戦の放送なのだ。そのことをその夜に知ったユキは次の日、盛大にやらかすのだが…



 そして、ナユカは結局ほとんどの試合でバトルのバの字もしていないまま何と準決勝まで来てしまう。たまにユキの苦手な「火」を多用するプレイヤーをしばいたくらいである。


 しかし、それはここまで。



 この準決勝でユキはナユカに言う。今1番注目の試合でついにこの時がやってきた。



「ナユカ〜、手始めに文字通り全力で挑んでいいよ〜。この試合は私はナユカがどうしてもピンチな状況になったら介入する。それまで1人であの二人を相手にすること。行っといでナユカ〜。あなたのホントのデビュー戦。会場中を混乱のうずに叩き込みなさい!!」


「なんで最後そんな物騒ぶっそうなの!!」



「え〜、だって本当に混乱の渦になるよ?」


「もうちょっとこう…。びっくり!とか、歓声に包こめー…。とかあるじゃん!」


 ちなみに言うがここは舞台の上、つまりこの会話。観客に筒抜けだったりする。


「なぁ?シズク…。うちらは舐められてんかな?」


「ありゃ〜、どうなんすかねー?でもあの感じだと次はあの子がきますよ」



「きぃーひきしめていきやー?」


「うっす!」


 今ここに始まるのはもうひとつの力。四つ目の力。

ユキの予想通り会場は混乱の渦に飲まれることとなる。

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