「付き添いがくるなんて聞いていない」
真夏の太陽の下で、リカの目から氷山の光反射にも似たような凛冽な光が発された。
イズルを始め、見つめられた軌跡、奇愛とほかの三人の若者は思わずホットココアを買いたくなった。
リカはイズルに伝えた場所は高霊山。
イズル一家の運命を変えたところだ。
「えっと、付き添いはダメ……と言ってないでしょ?ほら、お祭りってみんなで楽しむものじゃないですか?」
イズルは窮屈そうに笑いながら、自分の後ろに隠れた五人の仲間に振り向いた。
今日の
さすがお祭りで危険なことはしないだろうと考えて、仲間を多く連れてきた。
「誰がお祭りのためにと言った?」
「……」
イズルはちょこちょこと近寄って、リカに耳打ちをして、わざとらしい口調で弁解する。
「実は、斜楼の夜から、しつこく問い詰められたのです。悪い奴に狙わているとしか説明できないから、彼たちは納得できませんでした。あなたも見たでしょ?彼たちは誘拐も平気にできるいかれた性格のやつらです。お誘いの電話がちょうど聞かれたので、『どうしても付いて行く』としつこく頼まれて、断れませんでした……」
リカの目線が確かに怖い。でも、よく考えてみれば、今まで辛口コメントと減点以外の「悪いこと」をしなったのも事実。
厳しい視線に慣れたイズルはいつの間にか緊張感を解かして、生真面目なリカにいたずらでもしようと思った。
「こういうやつらの対応に苦手ですから、代わりに説明してくれますか?リカ先生」
「……説得力のある嘘も付けないの……」
リカはため息をしながら、手慣れた動きでスマホで減点した。
「誠実は加点ポイントでしょ?」
「状況によれば加点することもあるけど、今の状況で嘘をうまくつけないのは判断力の低下と知力不足の証」
「……勝手に証明すればいい」
無駄なあがきを諦めて、イズルは本題に戻った。
「でももうここまで付いて来たし、しばらく同行させましょう。後でチャンスをみて二人で逃げればいい」
リカは奇愛たちを覗いた。
趙氏財団は間違いなく、万代家や新世界と同じ、裏社会の一員なのに、奇愛は何も知らないようだ。両親は彼女のために何も教えていないだろう。
イズルを拉致した青年たちも裏社会と関係のない普通の人。すでに筋肉ウルフと一戦を交えた。これ以上巻き込まれたら危険になる。
今日の「やること」は絶対彼たちに見られてはいけない。
イズルの嘘が下手だけど、リカの嘘をつく能力はイズル以下。
やはり人払いのことイズルに戻した。
「十五分以内に彼たちに納得させる嘘を考えて。青野翼に頼んでもいい。彼ならどんな恥知らずの嘘も作れるはず」
「……」
イズルはリカの鋭い目線から軽蔑を感じた。
(やはりそうだったのか。)
落ちこぼれCEOの嘘は、リカは最初から信じなかった。
彼とリカは、お互いの嘘を知っていても、嘘で作られた奇妙な関係に足を踏み入れた。お互いの目的のために……
でも、その笑い話のような偽物の関係は崩れる時が来た。
「お姉ちゃん!」
イズルは何かを言おうとしたら、いきなり横から甘い呼び声がした。
振り向くと、ヒスイ色浴衣の女の子がいた。
年齢は約十一、十二くらい。
頭の両側にツインテールにラベンダー色のリボンが着けている。
透き通る白い肌に、キラキラ光っている大きな目、天使のような笑顔でリカを見っている。
(この子、まさか……)
イズルは女の子の身分に気付いたら、女の子はリカに飛び込んだ。
「お姉ちゃん、会いたかった!」
「私も。元気にしている?」
リカは女の子を抱きしめて、小さな頭を優しく撫でる。
「ええ、元気だよ!お姉ちゃんから誘いがなかったら、会いに行くと思ったの!」
「来ちゃっだめだよ。今住んでいるところの雰囲気はよくないの。ロクでもないやつばかりで、あなたの成長に悪い影響があるわ」
美しい姉妹の再会にほんの少しだけ感動を覚えたイズルだけど、リカの言葉を聞いたら、舞い上がった気持ちはドン底に落ちた。
それでもできるだけ自然な笑顔を作った。
「こちらのお嬢ちゃんは?」
「妹のあかり」
「早く言ってくれればよかったのに。かわいい妹さんにお土産を用意しますよ」
「結構です。彼女からつねに三メートル以上の距離を離れてくれれば、ありがたいと思う」
(オレはウィルスよりも毒ってことか……)
イズルの眉がぴくっと動いた。
「……あの、さっきから、初対面の子供にわたしの悪口を吹き込んでいるように見えるけど?」
リカは厳しい目線でイズルとその仲間たちを見まわした。
「二代目ドラ息子、勉強も仕事もしない遊び脳、武器販売屋さん、誘拐をする連中。子供へのいい影響は一つでもあるの?」
「……」
イズルは返す言葉もない。
でもしょうがないか。リカの頭の中で、自分の評価はマイナス数十万点だ。
こんなやばい奴をかわいい妹に紹介するわけがない。
ところが、このあかりという女の子、顔から雰囲気までリカと全然似ていない。
特に表情が違いすぎ、まるで天使とサタンの差だ。
イズルはこっそりあかりを観察したら、あかりは嬉しそうに笑った。
「お兄ちゃんはお姉ちゃんと仲がいいですね。安心しました」
「……」
(いいえ、本当の姉妹だろう)
その話を聞いて、イズルは前言を撤回した。
(思考回路のおかしさが似ている)
リカはあかりを紹介する間に、イズルの仲間たちがリカについてぼそぼそ議論している。
それに気づいたあかりは小さい声でリカに聞く。
「あの人たちは誰?お姉ちゃんの知り合い?」
「迷惑な付き添いだ。後で払うから、気にしないで」
「じゃ、あたしがやる!お掃除は得意だよ!」
困りそうなリカのを見たら、あかりは自ら手を上げた。
あかりは背負っているカバンから紙の書類袋を出して、リカに渡した。それから笑顔で軌跡と奇愛たちの前に行った。
「初めまして、お姉ちゃん、お兄ちゃんたち!あたしあかりっていいます。リカお姉ちゃんとイズルお兄ちゃんを祭りに誘ったはあたしです」
あかりの甘い声と笑顔は、見事にイズルの仲間たちの注意力を引いた。
「あたしの先生はこのお祭りの実行委員です。前売り券を何枚もくれたから、お姉ちゃんたちと一緒に遊びたいと思ったの。ごめんね、皆が来ると知ったら、皆の分ももらったのに……」
あかりは文鳥形のポーチから、紙切れをたくさん出しながら、申し訳なさそうに笑顔を収めた。
「い、いいえ!俺たちは勝手について来たので、気にしなくていいですよ!」
ある二次元アイドルの帽子を被ってい青年は、早速あかりを慰めた。
「でも、一人一枚二枚くらいなら足りますよ。よかったら、どうぞ~」
そう言いながら、あかりは腹の太っている
「おお、ありがとう……!」
ローストチキンと焼き牛タンの前売り券だと気付いたら、健は更にニコニコした。
次に、あかりはまた二枚を選んで、筋肉パンパンの
「!」
手にしたのは腕相撲の挑戦チケットとスポーツシューズの割引券だと見たら、守は感謝しながらノリノリと腕を鳴らした。
先ほどあかりを慰めた青年に、あかりはチケット一枚とチラシ一枚を渡した。
「これは……!」
チラシはお祭りのステージのプログラム。
その中に、そこそこ人気な二次元女性アイドルグループが入っている。
チケットはそのステージの前列席の予約券。
このおっちゃんと呼ばれている青年は二次元アイドルものが大好きで、今被っている帽子もグッズだ。
「見れないと思いましたよ!あかりちゃん、あなたは天使ですね!」
「お前、隊長のために来たんじゃなかった?」
嬉しくて泣きそうなおっちゃんに、健はツッコミした。
「た、隊長のためでもある!」
残っているのは軌跡とさりげなく彼と腕を組んでいる奇愛だ。
あかりは残った何枚のチケットからお化け屋敷の前売り券と射的ゲームの前売り券を選んで、奇愛と軌跡に渡した。
奇愛は秒であかりの意図が分かって、早速あかりに自分の名刺を渡した。
「……」
あかりの一連の操作を目にしたイズルは呆れた。
いい大人は子供とお祭りの前売り券で翻弄されたらどうするんだ……
いいえ、違う。これはただの子供じゃない。
天使の外見と小悪魔のような観察力を持っている万代家の子供だ……