一発で仕留めきれなかった巨人から手痛い反撃を食らうハメになった。
もし数秒気づくのが遅れていたら、僕は投擲された車に押し潰されていたことだろう。
辛うじて命拾いしたわけだが、僕は今再び自らの命を危険に晒していた。
大の字に体を伸ばし、全身に吹き抜ける突風と浮遊感。
そして見る見る内に接近してくる地上の光景に、僕は目を見開く。
「ぐっ、ぅうう、そろそろか……!」
『ひゃぁああああああああああ!! こ、これ、これっ、飛んでるじゃぁあああああん!!?』
ビュォオオオオオオオオオ!! と、凄まじい風の音が鼓膜を通過していき、制服がバタバタと激しく風に揺られる。
まさか街中でスカイダイビングに挑戦することになるとは思っていなかったが、このような事態になってしまったのだから仕方がない。
無機物の塊であるため人間のような器官は有していないものの、人の形をしていたらさぞ大粒の涙を流していそうな相棒の銃に発破をかける。
「おいっ! キミが頼りなんだ、気をしっかり保っててくれよ! 今から、魔弾を発動する!」
『ま、魔弾ですって!?』
悲痛な叫びをあげる銃を無視し、僕は魔力を練り上げる。
「『
僕に与えられた固有能力、『
その能力の一端である銃の構造変形。
小さなハンドガンから対物ライフルのような大型の銃火器まで、僕がイメージできるあらゆる銃に変形が可能。
だけど、この能力の真価はこれだけじゃない。
《新世界》という特異環境。
この世界だからこそ存在する魔力というエネルギー、そしてそこから生み出される『魔法』という別ベクトルの特殊能力が設定されているからこそ行使可能な、魔法特化型の銃のモデルだ。
『ああぁぁ~~、もうっ! これでいいのね!? 環の考えてることは何となく分かったけど、このまま落ちたらウチたち死んじゃうんだから、絶対失敗しないでよ!!?』
ガチャガチャと銃のデザインが変形する。
が、今回はそこまで大きく様変わりするわけではなかった。
先ほどまで構えていたスナイパーライフルと同じような形、大きさではあるものの、幾何学的な魔法陣が銃身に浮かび上がる。
「ははは、善処するよ。せいぜい、無事に生き延びられるよう祈っておいてくれ」
僕はガチャリ! と、銃口を直下に向ける。
目算で地上まで三十メートルを切った。
アスファルトの駐輪場が眼前に迫り来る。
「タイミングを見極めて……ここだ!」
チュイン! と鋭い銃撃。
僕の魔力を込めて生成した特殊な弾丸、『魔弾』が一瞬で地面に突き刺さる。
直後、真下からブオッ! と巻き上がるような突風が吹き上げた。
まるで空気の膜にダイブしたように、僕の体は少しずつ減速していき、やがて着地。
ドゴォォオオン!! という振動に全身を震わせながらも、何とか両足でアスファルトを踏みしめることに成功した。
「ぐっ、ふぅぅぅ~……!! よ、よし。何とか、上手くいったぞ……ッ!!」
完全に威力を殺し切れはしなかったけど、僕の身体強化のスキルでカバーできる範囲までダメージを削ぎ落とすことはできた。
手にしていた銃が、張りつめていた緊張を解くように息を吐いた。
『は、はぁ、はぁ。た、助かったの、ね……?』
「何とかね。だけど、まだ終わりじゃないよ。悪の親玉は依然として街で暴れまわってるんだから」
ゴキ、ゴキっと体を回す。
軽く全身を動かして特に問題がないことを確認すると、僕は銃を携えて走り出した。
「行こう。このエリアボスは、僕が終わらせてやる」