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第41話

「今日は夕方予約入っていないから店閉めてラーメン食べに行こう」


「お店閉めていいんですか?」


「いいのいいの。予約制でしているから予約が入っていなくて予定があるときは少し早めにしめるのは結構多いから。それに時間の融通を利かせることができるのは自営業の特権だから」


個人的に自営業の都合はよくわからないが、山田さんがいいというのだからいいんだろう。

確かに予約制じゃないお店の場合いつお客さんがくるかわからないから営業時間まであけておかないと文句を言う人がいるかもしれないが、予約制だったらコントロールはしやすいのだろう。


「それでラーメン食べに行く?」


「「いきます」」


「よかった。最近の若い子ってこうゆう誘い嫌がる子多いらしいから」


それは俺もテレビやSNSで見たことがある。

上司からのご飯の誘いが苦だと感じる人は多いらしい。

でもこんだけよくしてもらっている山田さんの誘いを嫌と思うわけなくて喜んでという気持ちが強かった。

まぁこれが嫌いな上司だったら嫌だと思うのは当然だと思うが。。。

会社の上下関係も大変だな・・・


山田さんが閉店の準備をしている間、俺と敬都も掃除などを手伝った。

夕方5時のタイミングでお店を閉めて、近所のラーメン屋に入った


「好きなの頼んでいいから。今日は俺の奢り」


「いいんですか?」


「当たり前だろ。俺から誘ったうえに高校生に手出しさせるなんて美春に殺される」


なんでだろう。俺たちにお金を出させたことを普通に報告してすごく怒っている美春さんが想像できてしまった。

美春さんごめんなさい


「じゃぁお言葉に甘えて」


「おう」


俺も敬都も定番のラーメン+チャーハンセットを注文した。


「2人はよく飯にいったりするのか?」


「2人ではあまりないかもしれないですね」


思い返してみると敬都と2人のご飯はないかもしれない


「2人はないんですが、よく3人か4人で一緒にいます」


「もしかして今日の2人かな?」


「そうです」


「でも3人ってもしかして瑞樹と嶋野さんと敬都ってこと?」


「そうです」


「敬都お疲れ様」


「はい・・・」


なんで敬都がお疲れ様と言われているのかはわからなかったが

なんとなく俺と愛のことなんだろうは思う



「実際に美容室で働いてみてどうだった?」


「はい。すごくいい経験になりました。俺は髪の毛をセットするのは好きだったけど誰かの髪の毛をという視点はありませんでした。でも今日愛の髪の毛を乾かさせてもらって、愛の喜ぶ顔をみたら美容師っていいなと思ってしまいました。それに山田さんが楽しそうにしている姿も好印象でした」


「僕もいい経験になりました。僕は瑞樹以上にコミュニケーション能力が高くないから不安だったんですが谷口さんや西村さんみたいな普段出会わない人たちと話したりするのは素敵だなと思いました」


「そっか。それならよかった。2人は将来の夢は決まっているのか?」


「俺は具体的にはまだ決まっていないです。でも今回美容師を体験してみて考えていいかなとは思いました」


「僕は美容師にはならないと思いますが、人と接する仕事を探してみようかなと思います」



「今回の体験が二人にとって何かを得られるものだったら俺はそれだけで満足だ。美容師は今の時代あまり勧められない仕事だと思う。なんでかわかるか?」


俺も敬都も首を横に振った


「実際にはどの職業でもいえることだが、美容師は「離職率」が高いといわれているんだ。俺の同期も半分以上今は美容師をしていない。美容師を辞めた後まつ毛エクステやネイルに転職する女の子は多いが男は別の仕事に転職するパターンが多いかもしれないな。だから学校の先生なんかは勧めないという話をよく聞くんだ」


今山田さんが言っていたことはネットで検索した時も出てきた内容だった

山田さんは話を続けた


「でも、2人が感じたように美容師は普段出会うことがない人たちと接する仕事だし、自分の技術次第で喜んでもらえる仕事だと思う。他の仕事よりも大変だしきついこともあるけど達成感は感じれる仕事かなと思う。もう一回言っておくけど大変だしきついけどね。笑」


「将来の夢を考えないといけないっては頭でわかっているんですが実感がわかないのが正直なところですね」


「僕も」


「それはそうだ。今は学生生活を送っている中で将来のことを考えろって言われても実感はわかないさ。それでも決めないといけないのもあるから難しいんだ。嫌だったら転職すればいい話なんだが、美容師みたいな資格を必要とする仕事は専門学校にいくだけでお金のリスクを背負うことになる。せっかく専門学校にまで通ったのにすぐ辞めたら学費がもったいないから」


俺も敬都も山田さんの言葉を真剣に聞いていた


「じゃぁ山田さん目線で俺たちにアドバイスはありますか?」


「アドバイスか。。。さっき考えるのは難しいとはいったけど、みんな考えていないわけじゃないし努力していないわけじゃないと思う。その中でも他の人よりも考えた人や努力した人しか得られないものはあると思う。正解はないけど積み重ねたものはきっと何かになる。何かにならないこともあるけど何かになると思って積み重ねていくことかな。そしたら自分のやりたいことがみえてくればいいなって俺は思う。」


「積み重ね」


「そう。勉強でも運動でも髪の毛のセットでもおしゃれでもなんでもいいんだ。動いていけば気持ちの部分で変わることがあるかもしれないから」


山田さんの言葉は確信をついていると思う。俺も他の人も将来のことに向けて考えていないわけじゃないし、努力していないわけじゃない。でも足りていないのはわかる。すごくモチベーションが高い人なんかは自分よりも考えているし努力しているのがわかる。きっとこの「差」が将来のやりたいことを見つける人と見つけれない人を左右するかもしれない。人生の先輩の話は説得力があるな


「おっちゃんの話はこれぐらいにしよう。瑞樹がもし美容師になるって決めたらまた話そう。敬都はいつでも相談してきていいぞ。恋愛のこととか」


「なんで僕は恋愛なんですか」


「だってお前彼女できなそうだし」


「わからないじゃないですか?」


「わからないさ。だからなんかあったら連絡せろってこと」


「はい」


「瑞樹も連絡せろよ」


「はい」


俺たちは山田さんと連絡先を交換してラーメン屋を後にした。

山田さんは最後まで笑顔で俺たちと接してくれた。

本当に素敵な大人だと思うし、自分が大人になるときはこんな大人になりたいと思った


「山田さん素敵な人だったね」


「俺もあんな大人になりたいな」


「瑞樹はなってそうだけどね」


「いや、俺も陰キャだからな。あんな陽キャみたいな人になれる気がしない」


「それは確かに。。。」


「敬都も恋愛頑張らないとな」


「瑞樹もそれ言うの。なんか恋愛とかよくわからないんだよね」


「わからない」


「うん。だって瑞樹と仲良くなる前まで僕は一人で学校生活を送っていたし、瑞樹と出会うことがなかったら嶋野さんとさくらさんと話すこともなかったと思う。それがこの数か月一気に変わって今の変化だけでも幸せすぎるのに、これ以上のことを考えたら罰が当たりそうだよ」


敬都はこんなことを考えていたんだなと驚いた。

確かに俺も愛とあの日話すまでは基本的に一人で学校生活を送っていたし

数か月前の俺が今の俺をみたら驚きすぎておもしろそうだけど


「それなら俺もそうだよ。愛と付き合って数か月経つけどいまだに外を二人で歩く時の視線は気になるし、愛の私服姿を見た時に「こんなかわいい子の彼氏が俺でいいのかな」って思うし」


「瑞樹もそんなこと考えるんだ」


「俺も陰キャだからな。でも少しづつ今の環境に慣れて、もっと前に進みたくなってくるんだ。進むことによって楽しみが増えたり幸せが二人することもあるのかなって。だから敬都も進みたくなった時に進めばいいんだよ」


「ありがとう」


「それに山田さんが恋愛相談聞いてくれるっていっていたし」


「そうだね。まぁあれは面白い話もってこいとも聞こえたけど」


「ははははは」



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