目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

文化祭

第43話

「先生は高校時代に戻ってもう一度やってみたいことがある」


朝のHRで担任の教師が急に話し出した

クラスの生徒は「また始まった」と思いながら聞いているのだろう

この先生の印象が「適当」があっているだろう。

授業はちゃんとしているけど、基本的にはゆるい感じの先生だ

それがいいという生徒もいればモチベーションが高い生徒からしたら「もっとちゃんとしてほしい」という声もあるかもしれない。

俺個人の意見としてはお堅い先生よりもうちの担任みたいなゆるさのほうがいいから問題はない


「先生その話って最後まできいたほうがいいの」


一人の男子生徒が先生に質問する


「当たり前だ。担任の話は最後まで聞け。これ小学生の時に習ったことな」


「それは必要な話の時に限りじゃね」


「これは必要な話なんだ」


クラスに笑いが起きる

俺たちのクラスはだいたいこんな感じの雰囲気でHRを過ごしている

他のクラスの生徒たちからしたら羨ましいと思う人もいるかもしれない


「どこまで話したっけ?」


「高校時代に戻ってやりたいことがあるってところまで」


「そうだった。俺が高校時代に戻ってやってみたいことは「文化祭」だ」


答えが思ったよりも普通過ぎてクラスは静まり返った


「まぁ最後まで聞け。俺の通っていた高校は昔ながらの公立高校で体育祭こそ普通にあったが、文化祭は出店や出し物はほとんどない学習発表会みたいなものだった。それに比べてこの学校はどうだ。出店も出し物も生徒会の許可が下りればやっていい。他校の生徒が来るのもいい。まさに学校の名前に負けない青春の大イベントではないか。お前たちはもっとこの文化祭に向けてモチベーションを高めていいんだ」


いつもはゆるい担任がちょっと熱く語りだしたことでクラスの雰囲気は笑っていいのか真面目に聞いた方がいいのか戸惑っている印象だった。


「それで、結局何がいいたいんですか」


先ほどの男子生徒が先生に突っ込む


「今日から文化祭の準備を始めます。実行委員を決めます」


「最後だけめちゃくちゃシンプルだな」


またクラスに笑いが起こる


「文化祭か」


「瑞樹は去年なにしたの?」


「う~ん。なんか展示みたいなの手伝ったかな」


「適当だな」


「文化祭の日も人気のいないところでマンガ読んでいたしな」


「典型的な陰キャがここにいます」


「そうゆう敬都はどうだったんだ」


「特にやることもなかったのでお家に帰ってゲームしていました」


「俺よりもひどいじゃないか」


「あんな陽キャイベントに当てられたら砂になってしまう」


「吸血鬼にとっての太陽か」


「それで。今年はどうする?」


「そうだな。。。。。今年は二人でばっくれてゲームするのはどうだ?」


「悪くない提案だ」


「決まりだな」


「愛ちゃん、オタクたちがまた悪だくみしようとしているよ」


「悪だくみしているみっちゃんも可愛い」


「はぁ...」


俺たちが馬鹿話していると、また先生が話し出す


「さっきもいったけど、この学校の文化祭は自由度が高くて楽しもうと思えば、どれだけでも楽しめる行事だ。この行事を心から楽しんで盛り上げたいと思って実行委員をやりたいと思っているやつはいるか?」


こうゆう時は誰も挙手をしないのが定番である。

そしてここから「お前やれよ」みたいな空気ができて最後には「お前でよくね」みたいな感じで陰キャに回ってくるというのがお決まりだ。

とにかくそこは回避しないとと思っていると


「はい」


聞き覚えるの声が綺麗に挙手をした


「春乃やってくれるのか」


「はい。私がやります」


やはりさくらさんだった

そして男子の方も


「はい」


さくらさんに続いて挙手をしたのは球技大会で同じチームだった森田だった。


「森田もやってくれるのか」


「やらせてください」


「それじゃ、春乃と森田に今年の文化祭の実行委員を任せるけど異論があるやつはいないか。ないなら拍手」


クラスで大きな拍手が起こる


「へへ。実行委員になっちゃった」


「さくらが自主的になるの珍しいね」


「そうだね。私も少しは変わってみようかなと思って」


この前の持久走の後からさくらさんの表情はいつも明るい。

自分で変わろうと努力しているのだろう


「それに」


「それに?」


「私が実行委員になったらからには、そこのオタク×2にサボらせるみたいなことは許さずに済むしね」


「瑞樹、さくらさんの表情はいつも通りなのに語尾が怖い」


「ブラザー。あれはサボったらどんな罰をされるのかわからないぜ」


「さくらさんの罰ならいいかもしれないけど」


「それもそうかもな」


「そこの二人サボったら大変な事になるから気を付けてね」


あれ、さくさんの目が目が怖い

目の中に「死」って文字が見えるような気がする


「「はい」」


「みっちゃんみっちゃん」


「どうした?」


「せっかくだから文化祭一緒に回ろうよ」


「もちろん。俺は敬都と違ってサボる気なんてないから」


「こいつ彼女の誘いで普通に友達を切り捨てたぞ」


「敬都と愛だったら愛を選ぶのは至極当然だな」


「中村どんまい」


「そんな...」


愛と顔を合わせて笑った

実はこの空気感が好きだから今年の文化祭は出てみたいという気持ちは本当だった

昨年までは基本的に一人で過ごしていたけど、今年は違う。

愛も敬都もさくらさんもいる。



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?