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第6話・ゴミ捨て場の粗大ゴミ01


バカでかい声と共に店内に入って来たのは、

身長2メートルはありそうな大男。


すると店内にいた召喚者らしき人たちが、

一斉に立ち上がって、


「わ……私のような無能が生きられるのは、

 ボスのおかげです!!」


「ボスのおかげです!!」


恐らく座ったままなのは、元からこの世界にいる

人たちなのだろうが―――

彼らからはそれを見て、同情の視線を向けられて

いるのがわかる。


「あ、アタシのような無能が生きられるのは、

 ボスのおかげです……!」


俺の前に座っていた裕子さんも、いつの間にか

立ち上がり、そう声を上げていた。


「……あぁん、何だそのガキは?」


そいつは俺に目をつけ―――

ギロリとにらみつけてくる。


「こ、この子は今日来たばかりなんです!

 召喚者ですけど、まだ子供で何もわかって

 いなくて」


慌てて彼女が擁護するよう説明するが、


「最近はこんなガキも呼ぶようになったのか。

 世も末だねえ。


 おし、立て。

 ここに来た召喚者は全員、通過儀礼って

 いうモンがあってよ」


「ま、待ってください!!

 いくら何でも、あなたの『怪力パワーストレングス』をこの子に

 するつもりですか!?」


「大丈夫だって。

 手加減はするし、俺も殺すなって言われて

 いるからなあ。


 ま、運が悪けりゃどうしようもねぇけどよ。

 あー、ここに来た時点で運が無ぇかもな!

 ギャハハハハハッ!!」


武田さんの言う事など意に介さず、大男は

下品に笑い出す。


そこで俺は立ち上がり、


「……女性にもそんな事を?」


俺が聞いてきたのが意外だったのか、

スキンヘッドの男は笑うのを止め、


「あぁ?

 いや、このバダール様は女には優しいぜ?


 『可愛がって』やるだけにしておいて

 やるからなあ。

 残念だなあ、お前も女だったらそうして

 やったのに―――」


ふと彼女の方を見ると、暗い表情で目を伏せる。


そこで俺は大げさにため息を吐いてみせ、


「スキルの弱い人たちの中で、自分だけが

 強いスキル持ちだからとお山の大将ですか。


 どれだけ卑怯で汚くて、ずるくて陰湿で

 陰険で……

 みっともなくカッコ悪い精神をしていれば

 そうなるのやら」


そこで店内は、先ほどとは違った雰囲気で

静まり返る。


そこで武田さんは血相を変えて、


雨霧あまぎり君、ここはガマンして!

 この世界はあちらとは違うの!!」


そう言う彼女を、バダールは片手で割って

入るようにどかし、


「いい度胸だな、お前。

 もしかしてそんなに自分のスキルに

 自信があんのかぁ?


 いいか、このゴミ捨て場に連れて来られたって

 事はよぉ、役立たずと判断されたんだ!

 どんなスキルであろうが―――」


「いえ、俺のは『無能ノースキル』って

 言っていましたよ」


それを聞いたバダールは一瞬黙り、


「ギャッハハハハハッ!!

 何だぁ、お前!? 俺を笑い殺す気かぁ!?


 よーしわかったわかった。

 これだけ笑ったのは久しぶりだぜ。

 お礼にそこそこ手加減してやるよ」


彼は大仰おおぎょうに拳をパキポキと鳴らす。


「そうですか。

 じゃあ俺もお礼に、少しは情けをかけて

 あげましょう。


 『やめておきなさい』

 これは忠告です。


 それとあなたには聞きたい事があります」


その答えというように、バダールは俺に

大きく振りかぶって、


「調子こいてんじゃねぇガ……ッ」


その瞬間、ヤツの利き手は曲がってはいけない

角度に曲がり、血飛沫を上げた。



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