目次
ブックマーク
応援する
3
コメント
シェア
通報

第40話・シーライド王国へ


「そろそろかなあ」


「そうですねえ」


馬車に揺られながら、俺たちは

アスタイル王国を離れ―――

現在、シーライド王国へと向かっていた。


アスタイル王国の手紙……


そこで起きた召喚者たちへの虐待、

それに対する謝罪。

そして今は待遇改善を行っている、

という事を伝えるためである。


「しかし、熊谷くまがやさんも白波瀬しらはせさんも

 強かったんですね」


俺がそう言うと馬車の中の2人は、

軽く息を吐いて、


「俺は全武器特化ウェポンマスター

 スキルを授かったからな。

 運が良かったよ」


「あたしは『全天候魔法オール・ウェザー』―――


 竜巻でも雷でも吹雪でも、ってな感じ。

 正直反則とも思ったけどね」


アスタイル王国の召喚者代表ともいえる

2人のスキルは、さすがに抜きんでていた

ようで、


数回、魔物や盗賊にエンカウントした

ものの、結果は自分たちが無傷だという

事実が物語っていた。


「まあでも反則と言うと……

 雨霧あまぎり君ほどでは」


「あー、それはそうね」


そしてなぜか俺に矛先が向かう。


あの後、アスタイル王国から

シーライド王国へと向かう使節団に、

この2人と俺、そして武田さんが

選ばれた。


もっとも、使節団を送る事、

そして俺たちが選ばれる事は予め

決めてあったのだけど。


「でも正直、熊谷さんと白波瀬さんを

 国から出す事を、了承するとは思いも

 しませんでした」


「まあ向こうもこちらに負い目が

 ある身だ。

 認めざるを得なかっただろうな」


俺の言葉にまだ20代そこそこの

青年が答え、


「しかし―――

 雨霧君が過激な意見を出して、

 それを同じ召喚者がたしなめる。


 これも何だか慣れっこになって

 しまいましたわ」


「交渉で済むのなら、それに越した

 事は無いわよ。


 敵じゃ無かった事に何より感謝だわ」


女性陣のやり取りに、俺は思わず

肩をすくめる。

俺、何か悪い事したっけなあ……


そして同性の熊谷さんはそんな俺を見て

苦笑し―――

その時、馬車の御者が、


「召喚者の方々。

 そろそろ見えて来ました。


 あれがシーライド王国の王都です」


と、要塞とも言うべき壁に囲まれた都市を

指差した。




「お前らはここに入っていろ。

 すぐに呼びに来る」


王都に到着し、アスタイル王国からの

手紙を見せ……

城へと案内され、そこまでは一応順調

だったのだが、


俺と武田さんはなぜか他の2人と

引き離され―――

まるで物置小屋のような狭い部屋へと

放り込まれてしまった。


「アタシはアスタイル王国の正式な

 使節団ですよ!?

 こんな扱いをしてもいいと思って

 いるのですか?」


彼女は反発して抗議するが、


「あぁ?

 たかが『浮遊フロート』しかスキルが

 無いヤツだろ?


 そっちのガキにいたっては、

 『無能ノースキル』だと?

 王都から叩きだされないだけでも、

 ありがたいと思いな!!」


そう怒鳴ると、案内して来た兵士はどこかへ

去ってしまった。


「図らずも実体が見えてしまいましたね」


「ここも、アスタイル王国と何ら大差無い、

 という事ですか……」


武田さんは深いため息をつく。


「でも、他の召喚者―――

 熊谷さん、白波瀬さんだって

 いるんですよ?


 彼らが怒ったら、とか考えては

 いないんでしょうか」


「何らかの対応はしていると思いますね。


 ……いや、対応済みだとしたら……

 僕たちの扱い、この程度では済まない

 かも」


その予想を裏付けるかのように、

乱暴に俺たちの扉が開かれ、


「ここかぁ?

 役立たずのスキル持ちがいるって

 ところは」


「『浮遊』に『無能』か。

 どっちがどっちだ?」


「ま、どっちでも関係ねーよ。

 ここじゃ浮かんだところで

 逃げられねーし」


と、いかにもガラの悪そうな兵士たちが

入って来た。


「……何しに来たのですか?」


武田さんが呆れるように彼らに聞くと、


「なぁに、楽しみに来たんだよ」


「恨むなら自分たちのスキルを

 恨むんだな」


「一方はオスガキかー。

 ま、顔立ちは良さそうだし

 イケるんじゃね?」


と、これから行う事を何ら隠そうともせず、


「お姉ちゃん♪」


そこで俺はいかにも子供っぽく

彼女に向かって話しかけ、


「ん? なーに?」


「このお兄ちゃんたちが楽しもうって

 言っているからー、楽しんでもいーい?」


そう首を傾げてニコリと笑うと、


「いいわよー♪

 楽しみましょう♪」


そう武田さんも返して来て、


「お、ノリノリ?」


「こっちもその方が助かるぜぇ」


「抵抗するのもアリっちゃアリだけどよ。

 たまにはこんなのもいいか」


そう彼らは下品は笑いを浮かべると、


「じゃあお兄ちゃんたち、『遊ぼう』♪」


俺の『遊び』に付き合った彼らは、

それから1分もしないうちに―――

遊び疲れたのか全員動かなくなった。





この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?