「ようこそ集ってくださいました、
召喚者の方々」
「……では、そちらからの要請―――
各国の情報についてですが……」
アスタイル王国・王城で、恐らくは
最高意思決定機関の部屋であろう豪華な
一室に、俺たちはいた。
召喚者代表として、俺、武田さん、
そして王国からは、アンク王女様と
グリーク宰相―――
他、重鎮らしき者が数名。
しかし……
「王様は、この場にはいらっしゃらないの
でしょうか?」
俺の隣りで武田さんが当然の疑問を
口にする。
「陛下は政務で多忙を極めておりますので」
「こちらで処理出来る事ならば、お手を
同席していた、大臣クラスらしき年配の
人たちの説明に、俺は一瞬むっとした
表情を作るが、
白波瀬さんが首を左右に軽く振って、
その行為をたしなめてきたので、すぐに
真顔に戻る。
周囲のを見ると、仕方が無い、これが
現状だと伝わって来て……
つまり―――
恐らくはアンク王女様とグリーク宰相が、
この国の実権を握っている……
事実上の2トップという事か。
もしくは今回の責任を取らされての
担当、という事かも知れないが。
だがそれなら話は早い。
代表同士で話し合った方が一番
手っ取り早いからな。
「わかりました。
それでは、各国の情報をお願いします」
熊谷さんが会議の進行を促す。
「ええと、各国とは言いましても、
現状、アスタイル王国に地理的に
最も近い、シーライド王国の事
くらいしかわかりません。
なので、この一ヶ国に絞っての
情報となります」
「……我が国と同様、王政を敷いている
国でございます……
文化、風習もさほど変わりは無いかと。
つまり……」
非戦闘系スキルの者に対する差別意識は
同じ―――というところか。
「では、アスタイル王国として……
シーライド王国に一通、手紙を送って
頂けませんかね?」
俺の言葉に、王女様と宰相は顔を見合わせ、
「手紙、と言いますと?」
アンク王女様は目をぱちくりとさせて
聞き返す。
「和解条件に入っていましたよね?
内外に、僕や武田さんといった―――
非戦闘系スキルの召喚者への虐待や
殺害をした事を謝罪、公表すると。
それに加えて、そちらでも差別意識の
改善、そして召喚者への虐待等が
ありましたら、止めて欲しいと要請して
頂きたいのです」
俺の提案に、重役・幹部クラスであろう
連中は一気にざわめくが、
「……な、内政干渉にあたるかと……
我が国に、シーライド王国にどうこう
せよと、強制出来る権限はございません。
……どうかご再考を……」
グリーク宰相の絞り出すような声に、
確かに、と俺の隣りの武田さんと
熊谷さんもうなずくが、
「別に、強制しろなんて言ってないわ。
『この国でこういう事が起きた』
『召喚者たちに謝罪した』
『今はこういうふうに改善を行っている』
ただそれだけを伝えてもらえばいいの」
白波瀬さんの言葉に俺は片手を挙げて、
「しかしそれは―――」
「
そもそもシーライド王国が召喚者を虐待
していると、確定したわけではないわ。
もしかしたら、共存もしくはそれなりの
待遇をしているかも知れない。
何もこちらから下手につついて、
反感を買う事も無いわよ」
続けての彼女の言葉に俺は詰まり……
同意せざるを得ない、という事でうなずく。
そのやり取りに、周囲はホッと
胸をなでおろすが、
「ではそうなると、シーライド王国に
使者を送らなければならない、
という事になりますが。
誰が向かいますか?」
「人選は少し時間がかかるかと―――
何せ、一番近いと言っても他国。
それに二国間の空白地帯は、魔物や
盗賊の危険もありますので」
「……軍を向かわせる事が出来ればいいの
ですが……
それだと軍事行動として、余計に刺激して
しまうかと……」
王女様と宰相が眉間にシワを寄せる。
「では、召喚者の中から選んでも
いいでしょうか?
そもそもこちらからの提案でも
ありますし―――
王国からは、道案内出来る人さえ選出して
頂ければ」
そう俺が案を出すと、周囲もそれに同意し、
後に使節団が組まれる事となった。