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第37話 地球を救え!

 ──地球滅亡まで、あと一日。


 誰もが絶望の淵に立たされる中、長らく部屋にこもっていたセラフィスとギルバートが、ようやくその扉を開いた。


「ついに完成したぞ!」


 セラフィスの声は、太陽のように明るかった。


 アストリア達が振り向くと、二人は不気味な笑みを浮かべている。


「・・・完成って、何がだよ?」


 とアストリアが問いただすと、ギルバートが悠然と答えた。


「催眠魔法だ。これで人を意のままに操ることができるぞ!」


 ──────────────────



 一方その頃、ガルム帝国は異常なまでに発達した科学技術を駆使し、秘密裏にスペースシャトルを製造していた。


 帝国は最終作戦を決行するつもりだった。


 計画はこうだ。


 スペースシャトルに巨大な爆弾を積み、月面に着陸。


 そこで爆弾をセットして遠隔装置で起爆し、月を粉々にする。


 だが、一つ問題があった。


「この作戦には乗組員が3人必要だ。」


 作戦を立案した科学者がそう告げると、アストリアとセラフィスは渋々立候補したが、ギルバートは最後までゴネた。


「俺は絶対嫌だ!!」


 ギルバートが反論する中、たまたま通りかかったローハンに目が留まる。


「よっ皆んなで何やってるん・・・」


「アバダ・ケダブラ!!」


 ギルバートは間髪入れず呪文を唱える。


「よく分かんないけど、俺が3人目になるぜ!」


 ローハンの目は輝いている。


 スペースシャトルの発射台にて、大勢の人々が見守る中、3人が乗り込んだ。


「行ってくるぜ!」


 アストリアが威勢よく叫ぶと、人々の期待を背負い、シャトルは月へと向かった。


 やがて月面に到着し、爆弾を設置。


 全てが順調に進むはずだった・・・その時。


「起爆装置が故障している!」


 セラフィスが険しい表情で叫んだ。


「直す時間はない。このままじゃ作戦は失敗だ!」


 その場に緊張が走る。


 解決策は一つしかなかった。


 誰かがスペースシャトルに残り、自爆スイッチを押さねばならない。


 誰がスペースシャトルに残るかで話し合った。


「俺は嫌だ!」


「俺だって嫌だ!」


 このままでは埒があかない。


 ──その時だった。


 セラフィスがローハンに向けて杖を出し、笑みを浮かべた。


「アバダ・ケダブラ!」


「俺が残るぜ!」


 ローハンの目は輝いている。


 ローハンを残し、アストリアとセラフィスは補助ロケットで脱出した。


 シャトルが遠ざかる中、セラフィスは涙を噛み締めながら呟いた。


「すまない、ローハン…。惜しい奴を失った。」


 そしてその瞬間、ローハンがスイッチを押した。


 凄まじい爆発とともにスペースシャトルが吹き飛び、月は粉々に砕け散った。


 地球の危機は無事に去ったのだ。


 ──────────────────


 帰還したセラフィスは、ローハンのことを聞かれた際、静かに涙を流しながら言った。


「ローハン、彼は勇敢な漢だった。」


「そうだ!彼の勇姿を讃えて石像を立てよう!」


 アストリアの提案は皆に受け入れられ、街の中央に飲み屋のエプロンをつけたローハンの石像が立てられた。


「英雄ローハン」の伝説は人々の間で語り継がれることとなった。


 地球は彼の犠牲の上に再び平和を取り戻したのだった。


めでたし。めでたし。




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