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第24話~チリの視点、ララと共に~

 母様は言った。


『あなたたちの力が必要な時が必ず来るの』


 母様は言った。


『それまで、この神社を見守る神として鳥居の傍で見守っていてほしい。お願いね』


 母様の言うことは絶対。

 そのためにチリとララは生まれた。いや、作られたという方が正解かもしれないなの。

 チリは「母様のために頑張るなの」と答えた。

 横でララが「なのなの」と頷いていた。


『平等に力を分けてあげられなくてごめんね』


 母様は申し訳なさそうに言うと、チリとララの頭を撫でたなの。

 気にしなくていいなの。

 だって、チリとララは2人だけど、2人で1つ。

 必要だから分けられたのだとチリはわかってるの。


「大丈夫なの。チリは説明役でララが力役なの。チリとララを目覚めさせた巫女を母様と同じくらい強くするためにする役目があるとわかってるなの。2人で1つだからチリとララがずっと一緒に行動しておけば大丈夫なの。もし離れてもテレパシーでお話できるから大丈夫なの」

「なのなの」


 チリが言うと、母様は嬉しそうに笑った。

 母様は綺麗なの。笑った顔はとても優しくて、チリは母様の笑顔が好きなの。


『ふふ、2人ともよくわかっていて偉いわ。後ね、もう1つだけ覚えていてほしいの』


 母様はそう言って上を見た。

 同じ方向を見ると、そこには黒い鳥居があったなの。

 嫌な感じはするけど、それほど嫌でもない感じがするもので、ちょっとむずむずしたのは内緒なの。


『ここに、妖怪が封印されているの』

「チリとララと同じなの?」

「なの?」


 ララと一緒に首を傾げていると、母様は『うーん、ちょっと違うわね』と首を横に振ったなの。


『この妖怪は、あなた達を目覚めさせてくれる巫女と結ばれる妖怪だから、一応守る対象なの。でも、不死身の妖怪だから、生きてたら特に気にしなくてもいいわ』

「いじめてもいいの?」

「あそんでもいいの?」


 言葉が違うだけで、ララはチリと同じことを言った。

 遊び道具がいっぱいあるのは嬉しい事なの。

 それは大歓迎なの。


『あなた達を目覚めさせてくれた巫女が悲しまない程度であれば、大丈夫だと思うわ』


 チリとララの言葉は母様には意外だったようなの。でも、楽しそうに笑ったなの。

 チリとララの言っていることが面白かったらしいなの。

 それは嬉しい事なの。

 ララもニコニコしてたなの。

 チリも今、とっても嬉しい気持ちだからきっと同じ顔をしていると思うなの。

 妖怪が出てきたら、絶対にたくさん遊ぶなの。


『それじゃあ、ゆっくり、おやすみなさい』


 母様が言ったなの。

 チリはララと手を繋いで、頷いた。

 2人で一緒に目をつぶって、体がカチコチになるのを待ったなの。


 何度か、チリは目を覚ました。

 その時は、頭の中で、ララに声をかけてみた。


「いっぱい人が見えるなの」

「なのなの」


 チリが目を覚ました時、ララも起きているみたいだった。

 お母様を探してみた時もあったけど、知らない人間ばかりが通っていた。

 小さい手や、大きな手がチリとララを撫でる時もあった。

 みんな、チリとララを神様と言っていた。

 お母様が言っていた通りだ。

 チリとララは、神社の守り神なの。

 黒い鳥居の両端に、狐像となって存在する守り神なの。


 目を覚ました時はいつも力を感じるけど、またすぐ眠くなる。

 だから『今はまだなの』『なのなの』という会話をララとして何度も長い長い眠りを繰り返した。


 でも、今日は違ったなの。


 頭の中で声が聞こえたなの。

 久しぶりのララ以外との会話だったから、上手く言葉が言えなかった。だから、お母様と同じ口調を意識して答えたなの。

 そしたら、嬉しそうな声が聞こえたなの。

 きっとチリとララを目覚めさせてくれる人はこの人だと思ったの。

 だから、「あなたは誰?」て聞かれた時に「すぐにわかる」と答えたなの。


 そしたらなの。


 すぐに目を覚ますことができたなの。

 そしたら、真っ黒な妖怪にやられている狸妖怪がいたなの。

 真っ黒な方はすごく嫌だったけど、狸妖怪の方は嫌な感じはしないけど、むずむずする感じがしたなの。

 だから、お母様が言っていた鳥居に封印されていた妖怪だとわかったなの。

 ララもわかったみたいで「これ、おはようなの?」と聞いてきたなの。

 まだチリもララも狐像だったけど、眠くなかったなの。

 だからチリはわかったなの。だからララに言ったなの。


「おはようなの。目覚める時が来たなの」


 ララにそう言ったら、その通り、とばかりに白い光がいっぱい、ぶわわーって広がって、チリとララを包んだなの。包まれたチリとララは眩しくて目をつぶっていたけど、次に目を開けたらお互い石像じゃない姿になっていたなの。チリは思わず「これを待っていたなの」と喜んじゃったなの。

 でも、ずっと石像だったから体のあちこちがカチカチだったなの。だから、ララと手を繋いでくるくる回ったなの。そしたらすぐほぐれたなの。


「みこ、だれ?」


 ララに言われて、チリは光が発した方向を見たなの。

 そしたら、お母様が来ていた服と同じ服の巫女がいたなの。

 その人からは懐かしい感じがしたなの。

 とっても好きな匂いがしたなの。


「あれが巫女だよ」


 そう言っていると、狸妖怪の方がチリとララを見つけて叫んできた。

 巫女もこちらを見てくれた。

 さぁ、自己紹介なの。


 チリとララは仲良しだから手を離さなかったなの。

 でも背が小さいから、少しでも大きく見えるように目いっぱい両手を上げたなの。

 それで、2人で言ったなの。



「「チリとララなの」」


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